イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ : 映画評論・批評
2011年7月5日更新
2011年7月16日よりシネマライズほかにてロードショー
何が「アート」なのかを問いかけるバンクシーの初監督作
路上や壁に描かれたグラフィティ・アートについてのドキュメンタリー。そのアーティストとしていま、世界で最も注目されているバンクシー(Banksy)が監督した。
グラフィティ・アートは1970年代にニューヨークで壁や電車などに落書きをする行為から始まり、キース・ヘリングやジャン=ミシェル・バスキアなどが脚光を浴びた。そして、グラフィティは「アート」なのか「落書き」なのか、描く彼らのうち誰が「アーティスト」なのかと世間は議論することになる。
覆面アーティスト、バンクシーが各地の路上や壁面、世界の紛争地に残した作品は、技術の確かさと風刺の鮮やかさで知られ、美術館に彼が「勝手に」展示した作品が高値で買い取られたりしている。
このドキュメンタリーは、バンクシーに取材を試みたロサンゼルスの映像作家ティエリー・グエッタがこれまでに撮った膨大なテープが元になっている。グエッタはこれまで路上のアーティストたちの作品行為を撮り続けてきたが、映像作家としての才能はなかった。
バンクシーは自分が取材を受ける条件として、ティエリーをグラフィティ・アーティストに仕立て上げるプランを提案。その結果、アメリカの様々なグラフィティ・アーティストの活動やバンクシー自身の手法、言葉、路上での行為の素早さなどが映し出されるだけでなく、何が「アート」なのかを問う小気味良い作品が仕上がることになったのだ。
(大久保賢一)