「伝説の終わりに立ち会えたことに感謝!」ダークナイト ライジング bananaさんの映画レビュー(感想・評価)
伝説の終わりに立ち会えたことに感謝!
素晴らしいの一言に尽きます。
まさに三部作のラストを飾るにふさわしい最終章だったと思います。
すでに劇場で7回見てきました。笑
1回目はラストで号泣し、エンドロール中放心。笑 2回目以降から、ようやく落ち着いて見られて、何度か見ているうちに自分なりの解釈がまとまってきました。
とにかく前二作を見てからの観賞をお奨めします。
特にビギンズは今作のストーリーに大いに絡んでくるので、是非。
伏線が回収されていく心地良さと、シリーズで見ている人にはわかる小ネタがたくさんあるので、是非そこを楽しんでもらいたいです。
Beginsで長い夜が始まり、デントが「夜明け前が最も暗い」と言っていたように前作が夜明け前であるならば、今作はまさに原題の通り、“Rises”でした。
前作と何かと比較されがちですが、ここで強調しておきたいのは、あくまでバットマン=ブルース・ウェインのストーリーなのだということ。
前作では、ゴッサムの正義の象徴であったハービー・デントがダークサイドに堕ちたことで、誰の心にも悪が潜んでいるのだということが証明された一方、バットマンがデントの罪を被ることで表面的にはジョーカーに勝ったのだという所で終わりました。
でもそれはあくまで勝ったかのように見せかけているだけであって、本質的には負けている。つまり、ジョーカーの一人勝ちであった訳ですよね。
今回はその“嘘”によって作られた勝利の下で、街は平和を取り戻したかのように見える、という所から始まります。
ジョーカーとの戦いの末、心身共に傷ついたブルースが、8年間の引きこもり生活を経て、再びバットマンとして立ち上がる…というのが今回のメインストーリーです。
悪役に関して言うならば、ジョーカーとベインってそもそも立ち位置が全然違うと思うんです。
ジョーカーはアナーキストで、ベインはテロリストなんですよね。
前者が純粋悪だとしたら、後者はベイン自身が言っているように必要悪な訳で。
ラグビーの試合会場が爆撃されて、ベイン率いるテロ組織に街が占拠されるシーンなんかは、実社会の武装勢力をそのまま描き出したようで、ジョーカーとは違った恐怖を感じました。
ベインはゴッサムの平和が嘘によって作られたものだということを明かし、街を権力者ではなく、民衆の手に取り戻そうと喚起する訳ですが、あながちベインの言っていることって間違っていないよなーとも思ってしまいました。
日頃、私たちの多くは社会に対して傍観者であると思うんです。街が無政府状態になった時に初めて、私たち自身も社会の構成員の一人であり、当事者であるのだと気付かされる。ベインの存在はそんな私たちへの警鐘であるかのようにも感じました。
そして、ベインにはブルースとある共通点があります。殺しや暴力はそれ自体は悪だけれども、ベインはある信念に基づいて行動しているんですよね。
そもそも正義とは、悪とは何か。バットマン自身もまた警察に追われる無法者であり、彼の行動や倫理観が100%正義であるとは言い切れないけれど、己の信念に従って行動している。目的や方向性は異なるけれど、二人の戦いは、いわば信念対信念の戦いなのだと思いました。だから今回、ベインとの直接対決でハイテク武器を一切使わず、殴り合いの肉弾戦なのも個人的には納得です。
バットマン復活に関しては、まずブルース登場のシーンから杖はついているし、引きこもりだから髭も伸び放題で、だいぶくたびれたなという印象から始まります。全身傷だらけで痛々しいし、肉体的な限界を感じさせます。
でも忍び寄る悪の気配に、立ち上がらずにはいられなかった。
今作では、もう一つの“嘘”、アルフレッドがレイチェルの手紙をブルースに渡さず燃やしていたということが明るみになります。バットマンとしてではなく、ブルース・ウェインとして生き、幸せを見つけてほしいと願うアルフレッドの願いもむなしく、ブルースはもう一度バットマンとして生きることを選んでしまう。二人の信頼関係は絶対に壊れないと思っていたのに、結果的にケンカ別れになってしまったのがすごく悲しかったです。正確には、自分がブルースの元を離れることで、気付いてほしかったというアルフレッドの愛情だったと思うんですけどね。大切な人を守るための嘘、というのもぐっと来ました。
キャットウーマンも劇中で言っていましたが、なぜバットマンとしてそこまでゴッサムのために戦う必要があるのかと疑問を持つ人もいると思うんですけど、レイチェルが言うように、きっと彼はもうバットマンこそが本当の顔になってしまったんだと思うんですよね。悲しい過去のトラウマから生涯逃げることはできず、どうしても悪を許せないと気付いた時から、ブルースはバットマンとして死ぬことを覚悟していたんじゃないかと。
それをベインも分かっていたから、ブルースを“奈落”に突き落とし、何もできないままゴッサムが破壊されていくのを眺めろという仕打ちを与えるのは本当に酷だなと思いました。
そこからブルースが這い上がり、ゴッサムへ戻るという展開はベタだけど、やっぱり感動。“人はなぜ落ちるのか?―這い上がるためだ”このフレーズが、結局このシリーズに一貫した根本的なテーマなんですよね。幼少期に穴に落ちたトラウマ、そこでコウモリに襲われた恐怖、両親の死への罪悪感、恐怖の克服と悪に対する憎悪。そこから全てが始まり、再び這い上がる、まさしく“Rises”なのだと思うと感動もひとしお。
バットマンが街に戻り、バットマークが浮かび上がるシーンは本当に感動して、鳥肌立ちまくりでした。
ラストの展開は、やはりノーラン監督らしく一筋縄で終わらない所が素敵。…なんですが、いくつか腑に落ちない点も。。黒幕に関しては、展開は良いんだけど動機がちょっと弱いかな?と思ってしまったので、もう少し強い理由付けや説明が欲しかったかなー、というのが正直な所。ベインも散々引っ張ってきたのに、あっさりキャットウーマンに倒されちゃうし!せめてバットマンに倒してもらいたかったなー…。あと核爆弾っていう設定も日本人的には配慮が欲しかったかな、と思ってしまいました。
とはいえ、今回から新たに登場した人物だけでも4人いて、これだけのストーリーを完結させるのに、説明不足になってしまうのは仕方ないかなとも思いました。ただでさえ160分超とかなり長い上映時間だし、全てを語り切るのは無理でしょう。
ということで、きっと私たちが見ていない所で、一悶着あったんだなと勝手に都合良く解釈することにしました。笑
だって、本当に大好きなシリーズだから、本当はなるべく作品の粗とか言いたくないんですよ!笑
でも前2作に劣らず大好きなシーンが今作にはたくさんありました。
印象に残ったのは、ラストの方でミランダが言った「この街に罪のない人なんている?」という台詞。
善と悪について、このシリーズでは散々問題提起されてきたけど、ジョーカーではないけど、結局の所、善と悪は不可分で誰もが両者を持ちあわせているんじゃないかと思うんですよね。
警察本部長として犯罪を取り締まるゴードン。彼自身も部下にヒーローだ、なんて言われるけど、市民に嘘を付いてデントをヒーローに仕立て上げてきた訳ですよね。その嘘が明るみに出て、ゴードンも責められるけど、彼のやってきたことが正しいと言えるのかどうかはわからない。でも、彼は自分のやるべきことを見据えていて、占拠されたゴッサムでテロリストに怯まず、爆弾の解除に奔走する。ゴードン、ベインに撃たれて入院していたのに、本当に頑張っていました。爆発が近いのに、家にこもる副本部長に職務を全うしろと喝を入れに行くシーンで、ゴードンの警察官としての信念が垣間見えて良かったです。
その副本部長もまた、ビルに浮かび上がるバットマークに希望を見出し、警察服に身を包んで警官の陣頭指揮を取って戦い、最後には殉死してしまう所なんかもすごく好きです。
そしてキャットウーマンも、女怪盗で過去に散々罪を犯してきて、「一度悪に染まったら抜け出せないの」なんて言っているけど、本当は過去の自分から抜け出したくて、犯罪歴を消すソフトを手に入れるのに必死になっていたりする。心根は悪くなくて、バットマンに協力を求められても、「終わったら逃げるわよ」とか言っておきながら、戻ってきちゃうんですよね。
ゴッサム市民も、今までデント殺しだとか言ってバットマンを責めてきたのに、いざ街がピンチの時にバットマンが戻ってきたらいきなり歓迎ムードになっていて、どんだけ身勝手やねん、とか思ってしまったり。笑
そんな風に、誰もが大なり小なり罪を犯しているけれど、信念に従って生きるべきだというのがこの作品のメッセージなのかなと思いました。
ラスト、バットマンの自己犠牲は、己の信念に従って生きた一人の人間の姿として、ただただ素直に格好良かったです。
でもブルース・ウェインとしての人生を思うと悲しくもなり、涙しました。
ゴードンに「ヒーローはどこにでもいる。少年の肩にコートをかけ、世界の終わりじゃないと慰めるような男だ」と言って、「…ブルース・ウェイン?」とゴードンが正体に気付くシーン、大好きです。ブルースにとっては、ゴードンがヒーローだったんだなーとか、二人の関係性がすごく好きで、最後の最後に正体がわかって、少し報われた気がしました。
だってその後にブレイクが「街を救ったヒーローの名前を誰も知らないなんて理不尽すぎる」なんて言っていたけど、まさにその通りだよー!と思って。笑でも信頼していた人だけにでも正体がわかって良かった、なんて思って泣きました。
それから、ブルースのお葬式の参列者が4人しかいなかったのと、(あれだけの大富豪で有名人だったのに)墓石が3つ並んでいて、アルフレッドが「お守りできず申し訳ありません」と言って泣くシーン、号泣です。マイケル・ケインの演技の素晴らしさ!涙を誘います…。
最後、ジョセフ・ゴードン・レヴィット演じるブレイク刑事の本名が実は「ロビン」で、後を継ぐという演出がニクイですね!ブルースと同じく孤児だという点も、共通点があり良いです。そして最後の最後に、ブルースは生きていた!?と希望がある形で終わるのも良かった。この結末は監督からファンへのプレゼントだと思っています。
総じて言うと、“ブルース・ウェインの物語”として、非常に納得行く内容で、このシリーズの大ファンとしてもたいへん満足でした。
大好きなクリスチャン・ベールやゲイリー・オールドマンはさることながら、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンら大御所の演技も相変わらず素晴らしいし、ベイン役のトム・ハーディも体作りが凄まじく、インセプションとは全く違う印象で驚きました。ベインの喋り方、なんか好きです。笑
アン・ハサウェイ演じるキャットウーマンは、不二子ちゃん的なポジションで、セクシーでかわいくてとっても素敵でした。バットマンと並んだ時の画や、二人のツンデレな関係性も好きです。笑
ジョセフ・ゴードン・レヴィットのブレイク刑事も若くて正義感が強くて、がんばれー!と応援したくなる役どころでしたね。良い役もらえたね!と言いたくなった^^
マリオン・コティヤールは死に方下手すぎませんか…?笑 でもあの美貌はさすが!ブルースも騙されちゃいますよね。笑
更にはCGを極力使わないアクションシーンの迫力や映像美に、ハンス・ジマーの音楽が更にムードを高めていて、それだけでも劇場まで足を運ぶ価値があると思います。あの非常事態感(笑)もワクワクするし!
好きな所を挙げ出したらキリがないけど、何よりも一流のキャスト、スタッフが集結して、妥協せずに本気の作品を作ろうとしているのが、画面から感じ取れるから、大好きなんです。上映終了後に、客席から拍手が起こったのも感動的でした。
賛否両論あるけれど、私はこの時代に生まれて、こんなに大好きな作品に出会えたことにとにかく感謝です。このシリーズに携わった全ての方に拍手。たくさんの興奮と感動をありがとう!!これからもずっとずっと大好きです。