「着地点は非常に買う」ダークナイト ライジング しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
着地点は非常に買う
念のため、「ビギンズ」と「ダ-クナイト」を観なおした。
誰もあんまり言わないけど、「ビギンズ」はヒーロー誕生秘話としては、かなりつまらない部類に入る。他のどのヒーローものよりもはるかにコスプレしてヒーローとなり、町を救う動機が弱いのだ。
そしてもっと誰も言わないのが、「ダークナイト」が傑作と言っている人のその理由。
「ダークナイト」は「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」のように、主人公が打ちのめされ、退いていくところで終わる。こういうの、好きな人多いよな。
正直、傑作扱いはそれだけ、のような気もするが。
「ダークナイト」の敵ジョーカーは存在はカオスそのものだが、ずいぶん用意周到なカオスで、そのため脚本はカオスしまくりでびっくり。
なぜかみんなそこに目をつぶりたがる。
ノーランの雰囲気がみんな大好きなんだねええ。
それはおいといて、ジョーカーはバットマンがいて、初めて自分が完成する、といったが、それはどんなに信念をもっても対峙すればするほど、混沌がそれを飲み込む、ということだ。信念あるものと信念なき悪とは勝負にならず、バットマンは退くしかないのだ。
しかしこのときのバットマンにそこまでの街を救う信念があったかどうかは、やはりはっきりしない。このへんは「ビギンズ」の責は大きい。そして本作にそのテーマを持ってくるのだから、さらに残念な思いがした。
とにかく「ダークナイト」はバットマンに退いてもらうための映画。
今回の「ライジング」は邦題、原題ともかく「退いた」から「前に出てもらう」話だ。もっというとてめえのケツはてめえでふけ、という話でもある。
あのときは信念は全て敵の手のひらで踊らされただけかもしれない。しかし、それでも「信念を持って、自分でケリをつけろ」という話なのだ。
だからこそ、本作の敵はオチも含め、まさに「信念ある敵」である。
バットマンは立ち上がらなくてはならないのだから、信念をもつ敵でないといけないのだ。
今回その信念を取り戻す。バットマン、ゴードン、そして市民、警察隊。
例え「穴」という笑ける展開があっても、それはそれでよし。ラストの自己犠牲っぽいのとかも、まあよいよい。
作り手はアメリカの向かう姿を一つの思いとして、本作のバットマンに投影したのかもしれないね。
オレはそうした本作自体のブレない着地点については、大いに共感を憶える。むしろカオスを描きたいがために、その有り得ない展開を無理やり詰め込んだ「ダークナイト」よりかはまっすぐな本作のほうがオレは好意的にみる。
ほかその1
とはいっても相変わらず、長い上映時間にうざい演出とうざいジマーの低重音。
ほかその2
キャットウーマンはバットポッドを乗り回したり、バットマンを騙したり、峰不二子ぽくてかっこいい。でもどうせなら、目を見せる扮装のほうがいいなあ。
ほか3
ファンじゃないんで、ラストは特に感動しない。
しかし遺志(意思)を継ぐもの、信念を受け継ぐもの、としてあの演出はやはりグッとくるねえ。