「暴力と暴力が織り成す破壊のシンフォニー」ダークナイト ライジング 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
暴力と暴力が織り成す破壊のシンフォニー
前作でヒース・レジャー演ずるジョーカーと繰り広げた壮絶なる死闘を、どう引き継ぎ、どう超えて、完結させるかに注目して劇場に馳せ参じたが、フィナーレに相応しい地獄の大河ドラマに仕上がっている。
前作で街の平和のために、敢えて悪の汚名を被り、バットマンを封印したにも関わらず、彼を再びリングの上に引きずり出した最後の敵は、悪魔の申し子・ベイン
グロテスクな容姿とは裏腹に、株式市場に乱入して企業を破産させたり、地下のハイテク兵器はおろか核までゴッソリかっぱらう姑息で用意周到な兵糧責めは、現在世界をはびこるテロ組織の頂点を想わせ、闇の深さを突きつけるに充分な存在感を放つ。
敵が握る核爆弾なぞ元々は、ブルース・ウェイン財団所有やったし、ゴッサム・シティの悪党を取り締まっていた新法も嘘塗れの背景をごまかし成立させたモノだ。
戦争を終結させるは、多くの人命が犠牲になると覚悟せねばならない。
暴力は暴力を以て征するしか根本的に不可能なのだ。
正義と悪とは明確に二分化なぞ絶対に不可能であり、常に表裏一体の世界で絡み合っていく複雑な縮図であると、両者の背負いが明らかになり、死闘が熱を帯びるに連れて痛感させる。
全ての流通を遮断され、政府に見離されたゴッサムシティの凄惨なる無法地帯は、これまで軍事介入し、殺戮を繰り返してきたアメリカそのものに対するツケが凝縮されていると、私なりに受け止めた。
核まで引っ張り出す展開は、今の日本にはかなりヘビーな味付けだが、これほどまで濃密に練り固めなければ、私のような鈍感な日本人は平和について見つめ直そうとはしないだろう。
束の間の平和は、多大なる犠牲から成り立つ悲劇の1コマに過ぎない。
そんな壮大な血生臭さに染まる絵巻の完結に立ち会えた瞬間こそ、私にとって束の間の平和なのである。
まあ、キャットウーマン演ずるアン・ハサウェイの妖艶なる色気を堪能できれば、私は充分平和なんやけどね。
結論:地球を救うのは愛よりも先ずは、エロである
あと、やっぱり長いね
相変わらずワケのわからない結論でサゲたところで、
最後に短歌を一首
『傷を剥ぎ 仮面の目覚め 影と舞う 平和売り買う 奈落の街へ』
by全竜