ロシアン・ルーレット(2010) : 映画評論・批評
2011年6月7日更新
2011年6月18日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
最貧民はどこの国にも存在し、狂気も遍在する
グルジア出身の監督ゲラ・バブルアニがモノクロ映像のなかに描き出した「13 ザメッティ」(07)のハリウッドリメイク。ハリウッドでの他国作品のリメイクなど珍しくもないが、「ロシアン・ルーレット」は、オリジナルの監督を招いての文字通りのリメイクという点で異例である。台詞も少しいじられているがストーリーラインは原則同じ。芝居でいう、キャストを変更しての大舞台での<再演>なのだ。
ジェイソン・ステイサム、ミッキー・ロークの出演は「おい、グルジアの若造、心配するな、おれたちが不安を取り除いてやるぜ」という義侠だろうし、ヒップホッパー、カーティス・“50セント”・ジャクソンの出演は、彼の主演作「ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン」のタイトルこそがロシアン・ルーレット・スピリットに繋がると踏んでの依頼か。そして、ベン・ギャザラが渋い。
寒々しい風景の中に展開して、確かにこのような狂気の賭けゲームは存在しているかも、と思わせた東欧的オリジナルがアメリカに移植しうるか?という心配は杞憂であった。というか最貧民はどこの国にも存在し、狂気も遍在する。アメリカはその点で常にトップクラスだった。アメリカ映画におけるロシアン・ルーレット・シーンの傑出はやはり「ディア・ハンター」のクリストファー・ウォーケンだろうが、あれは個人技。「ロシアン・ルーレット」は、オリジナルより4人プレイヤーが増えている。<13>という数字はどこへ? それがささやかな<キモ>だ。
(滝本誠)