「奥が浅い」アジャストメント マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
奥が浅い
短編ものとしてなら面白い素材かもしれないが、長編でやるにはもう少し奥の深い話にしてほしかった。
人の運命、世界の政情をコントロールする話であれば、原作は後発になるが松岡圭祐の「千里眼」シリーズに登場する組織“メフィスト・コンサルティング”の方が複雑で面白い。メフィストの幹部ダビデというキャラも人間味があって楽しい。
世界情勢を操る組織でありながら、所詮と言っては失礼だが、デヴィッドとエリースの出会いに執着するだけで、この作品にマット・デイモンが出演するだけの価値があったのか、出来上がった作品からはまるで必要性を感じない。ましてやテレンス・スタンプに至っては宝の持ち腐れである。
エミリー・ブラントもいい女優さんではあるが、この人はヒロイン(主役)をやるよりも準主役の方が適した役者だと思う。「ウルフマン」も「ガリバー旅行記」もぱっとしなかった。それに引き換え、力のある女優をアシストする側に回った「プラダを着た悪魔」や「サンシャイン・クリーニング」は表情といい演技といいイキイキとして見える。
唯一ハマっていたのは、運命を操ることに悩める局員ハリーを演じたアンソニー・マッキーぐらいだ。
どんなに名の通った役者を配備したところで、“どこでもドア”みたいなものをドタバタと駆使されるだけでは、SFとしても恋愛ドラマとしてもどうにも中途半端で、「アメージング・ストーリー」みたいなオムニバスもののなかの一編あたりが見合った土俵であろう。
締めも、100分も観たあとのラストにしてはあまりにも安易すぎる解決法で肩透かし。だったら、初めからそうしてやれよと思ってしまう。
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