ラブ・アゲイン : 映画評論・批評
2011年11月15日更新
2011年11月19日よりシネマート新宿ほかにてロードショー
ロマンティック・コメディの基本を押さえたところが嬉しい
妻が浮気して離婚を要求――。シリアスな女性ドラマになりそうな発端だが、ダメ宣告された夫の自分取り戻し作戦にポイントを絞ったことで、スティーブ・カレルのキャラが生きた楽しいコメデイになった。
離婚話よりも、浮気=男性能力の否定と思い込み、その衝撃でヨレヨレになるのがまず笑える。その後はイケてる男修行にまっしぐら。ファッション&会話のセンスを磨き、女の口説き方も身につける。真面目でサエない男のセクシー・レッスンで笑わせるという趣向だが、ここまで男の感情に奉仕している映画も最近では珍しい。製作兼務だからカレルの見せ場オンパレードなのは当然としても、息子役のジョナ・ボボから友人のジョン・キャロル・リンチまで、男はみんないいとこ取り。妻(ジュリアン・ムーア)や娘など女性キャラの描写はほんの挨拶程度だ。それでも、苛つくことなく楽しめるのは、人の不幸を願うようなイヤな人間が1人も出てこないから。騒動の原因になるようなキャラにも愛すべき点がある。設定に新味はないけれど、こんなロマンティック・コメディの基本を押さえたところが嬉しい。
そして、カレルもかすむほどの好印象を残すのが、彼に色男指南をするプレイボーイのライアン・ゴズリング。いつものラブ・テクニックが通じない女の子をお持ち帰り。身の上話をするハメになって気が緩み、何もしないで眠ってしまうシーンの可愛さに参った。危ないキャラ専科だと思っていたのに、こんなにラブリーな役もいけるとは。新しい二枚目スターの誕生にウキウキしてしまった。
(森山京子)