ウェイバック 脱出6500kmのレビュー・感想・評価
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信じられない
食料も水も寝床も無く、更に極寒の山から灼熱の砂漠まで地球の地獄の寄せ集めみたいな旅。更に驚くべきはヤヌシュ以外はモチベーションを維持するような明確な目的が無いように見受けられること。ですがイリーナが自分の本名を言いながら命尽きたことから、具体的に何したいではなく、ただ自由に生きたいという最も根源的な欲望が原動力になっているんですね。
自分の日常生活でも納得できなかったり理不尽だなって感じることはありますが、この作品を観た後では自分の器の小ささに、、、です。恐れ入りました。
あと旅を人生と捉えるならイリーナの存在ってとってもいいですね。日常生活って波乱万丈っていうわけじゃなく平穏っていうか淡々としてて、それが自由で幸せなことなんですけど、一人で歩くとなると何ていうか長いですよね。
ファンタジーな逃走劇。
モンゴルに入って門の梁にスターリンとホルローギーン・チョイバルサンの絵が書かれている。
多分、モンゴルと言えば、この人だから出てくると思ったら、いきなりで驚いた。
さて、モンゴルを越境して中国へ入る事を万里の長城で表している。がしかし、登場する長城は北京付近の万里の長城と思われる。また、事実だから仕方ないが越境した後、なぜアッサムやビルマへ向かわなかったかが疑問だ。ラサへ行き、そこから世界で3番目に高いカンチェンジュンガの東を通って、インドのダージリンに抜けたのだろうが、ピンポイントとしか言いようがない。しかも、険しい。
この逃走劇は事実なのだろうが、別に援助する者がいたと推測する。そうでなければ、極寒のシベリアからバイカル湖へ出る事すら出来ないし、いくつもある乾燥地帯を抜けて、ほぼ世界一高い峠を超えて、ブータン、シッキムをさけて、ピンポイントでインドに入る事は不可能だと思う。
一体、何日かかったのだろうか?
1日に20km歩けたとしても、一年はかかる。途中ロシアを越境する時に汽車が登場するが、なぜ使わなかったのかやはり、疑問に感じる。
さて、実は三年前の正月にウランバートルからウラン・ウデ、イルクーツクを経由して、バイカル湖へ行った事があるが、−30℃の極寒の地。住んでいる人もギリヤーク族でロシア人(白人)はイルクーツクだけだった。多分バイカル湖の東側を通ったと考えられるが、西側だとイルクーツクを必ず通らねばならないが、モンゴルへ抜けるなら、そちらの方が容易である。
従って、援助する者がいなければ、この冒険の様な旅は終われない。また、途中の苦労話は全部フィクションでなければならない。
しかし、それを差し引いても偉大なる逃走劇だとは思うが、ポーランドの社会主義者からの脱却へ話を発展させるべきではなかったと感じる。イデオロギーを語るべきではない。冒険活劇でなければならない。
また、バイカル湖とは言って無いが、バイカル湖に限った事では無いが、その辺にあるダム止めの貯水池まるだしだった。リアリティに欠ける。極寒の地がいきなり夏になっているし。カッコウは5月に鳴き出すので、時間経過が出鱈目。
過酷な旅の恐怖
ジムスタージェス扮するヤヌシュビスチェックは、共産党を批判しスパイだと妻から証言されシベリアの収容所に入れられた。ヤヌシュは脱走について強い意志を示していた。気がふれそうな重労働を強いられチャンスを狙い仲間とともに吹雪の中脱走した。体力だけが勝負のひたすら続く過酷な旅の恐怖。いつかきっと祖国へ帰る日を夢見て。
ただ歩くだけなのに・・・
シベリアの強制収容所に収監された主人公達が、脱走してインドを目指す物語。
エド・ハリス、コリン・ファレルが脇を固める作品ですね。実話をベースにしたお話ですが、その「実話」に疑義もがあるようなのが残念なところ。それでも映画の完成度は高かったと思います。
暴力と圧政の収容所、極寒のシベリア、楽しく希望に満ちたバイカル湖、失望のモンゴル、酷暑のゴビ砂漠、チベット・・・そして・・・。
寒さ、暑さ、飢え、渇き・・・喜び、絶望。多くの試練があり、その過酷さが画面上からもダイレクトに伝わってきます。また、上手にメリハリを付けられていて2時間14分の長時間を長く感じることはありませんでした。
異端のヴォルカとイリーナが入り、チーム内のトラブル等も要所にインサート出来たかことも、アクセントとして良かったと思います。
主人公のモチベーションの源を素敵ですね。拷問で自分を裏切った妻。自分を責めているであろう妻に「許している」と伝えたい。こんな素敵な動機がありますか?
正直5を付けても良い、と思った作品でしたが、唯一の弱点は2回観る映画ではないかな・・・というところ。私的評価は4.5にしました。
たんたんと話が進む
ストーリーとしては単調で、起伏に欠ける展開だ。 映像の重厚さは、掛け値なし。素晴らしい出来栄え。 登場人物も、上手に描き分けてある。 特に、途中で合流する少女が、映画にいいアクセントを添えている。 無味乾燥な、徒歩の行程に明るい花が咲いたような印象。 好奇心旺盛な少女は、全員のプロフィールを詳しく詮索して、それぞれに披露してまわる。 まさに、女性の備えた本能。 物語は、これと言った山場もなく、静かに閉じていく。 2013.12.6
彼等が追い求めたもの
個人評価:3.7 脱出冒険記は入り込めるし、応援したくなる。エド・ハリスの演技が、この壮絶なサバイバル活劇をリアルな質感に仕上げている。またスペシャルにキュートなシアーシャ・ローナンは、少々このサバイバルなチームには不似合いだったが、最後の命が尽きる瞬間は、表情も過酷な旅に染まり素晴らしかった。 彼等の求めるものは自由なのか、それとも帰るべきホームなのか。命をなげうってまで追い求めたものは。最後に回収はしてくれるが、劇中に掘り下げが薄く、命を賭ける原動力を感じにくかった。
シベリアのグラグ
1939年のポーランドは西からナチス、東からソ連に占領されていた。この映画はあるポーランド人、スラヴオミール ラヴィッツの回顧録『The Long Walk 』という本の映画化。戦争犯罪者としてロシアに捕らえられてシベリアに送られた(1940年)ポーランド人、ヤニュシュ(Jim Sturgess )がソ連のシベリアのグラグ(Gulag )という強制労働収容所(スターリンの時、最盛期で50以上収容所があったらしい)の一つから逃亡する。このグループは共産党から逃れ(一人をのぞいて)、自由を求めて6400Kmも歩いてインドのシッキムSIKKIM (前はネパール:ダージリンの近く)まで歩いて行く話。 当時は第2時世界大戦だったので、中国は日本に占領されていて、毛沢東、スターリンの世界で、連合国(インドはイギリス領)に逃れるしか方法がなかったのではないか。(米国人スミス(Ed Harris)はチベットの僧の援助で米国にむかえるらしいが。)他の人は米国人ではないから米国には行きたくなかったから、イギリスに援助を求めたのかもしれない。 収容所から自然の脅威に挑戦するかのように、ソ連のバイカル湖まで抜けて、モンゴルに入ってホルローギーン・チョイバルサンの肖像を見て(khorloogiin choibalsan と red star)中国、チベット(ラサ)まで行くが、全ての国が共産圏で英国インドまで行けば、政治難民として、自由になれると思い、シッキムSikkim ダージリンまで歩く。そこで、パスポートやビザなしで入国できる。 灼熱のゴビ砂漠、猛吹雪、ヒマラヤなどで、自然は過酷であるが、仲間との絆、助け合い、それに、モンゴル、ダージリンなどの人々の暖かさが、過酷な道中に希望を与えた。ソ連に占領されたポーランドでは戦争犯罪人であっても、山を越え谷を越えたインドでは戦犯ではないし、過酷な旅先でも戦犯でなく、水先案内人で、旅を成し遂げ自由を獲得したリーダーだ。それに、ロシア人犯罪者でスターリンを啓蒙しているヴァルカ(Colin Frawell) ですら、少しすつ人になって変わっていく(人間の心を持っていく)のがみられる。彼だけが、ソ連の国境線でそのごのウランバートルulan bator へ向かう旅に参加しなかった。それはスターリン崇拝者だから。 それぞれの国の芸術家、エンジニア、宣教師、など(ルーマニア、ロシア、ラトビア、ポーランド、アメリカなど)の戦争犯罪者や囚人が国境を超えて助け合いながら人として結びついていくシーンもいい。それに、ヤニュシュはスミスに『Kindness, That can kill you here.』と収容所でいわれても、砂漠でもスミスに対して哀れみを見せた。優しい人はどこでも、どんな時でも人に優しくできる。それをこの映画で感じた。 この映画でソ連の収容所の共通言語として英語が使われている。果たしてそうだったのだろうか。アメリカ人のスミス(エンジニア)以外、芸術方面に長けている人たちだし、フランス語??ロシアに密接につながっている国々が多いから?ロシア語?? 1929年の大恐慌の時、米国人はロシアのシベリアに出稼ぎにいったとは知らなかった。
We walk. 過酷!
一人で勝手に「シアーシャ・ローナン強力月間」、第七回は「ウェイ・バック」です。うーん、シアーシャは印象的でしたが、途中出場の途中退場でしたね。残念!
しかし、6500kmを歩くって半端ないですね。ちょっと検索してみたのですが、東京から6500km歩くとインドに到達できるようです。歩いてインドかぁ。遠すぎて想像も付かん!
エド・ハリスも渋くて良かったのですが、何よりコリン・ファレルがチンピラ役を好演しています。コリン・ファレルってチンピラ似合うよなぁ。
第二次世界大戦があったからとはいえ、シベリアからインドまで歩いたって物凄い事だと思います。過酷な事でも強い意志でやり遂げたヤヌシュ。やっぱり強い意志って大事ですね!
さて、1ヶ月で7作品シアーシャ・ローナンの出演作を観てきた訳ですが、最後に観たのが本作ってのも微妙な結果でした。でも、シアーシャ・ローナンが出演選ぶ映画ってちょっと暗めな作品が多いですね。まだまだこれからなんでいつか笑顔に溢れたシアーシャを観れる事を期待しています。
エドハリスかっこいいよー!
お国からの脱出劇をリアルに描いた作品。
どんどん仲間が衰弱して死んでいく度に涙してしまいます。
どの地についてもとりあえず水の調達方法に苦しむのを見るのは、映画だとわかっていても一緒に苦しくなります。
楽しみかたが違うんでしょうが、色々な国に行ったような気分になれるかも?
とりあえず一番じじいのエドハリスが生き残ったのには衝撃でした。(笑)
生と自由へのサバイバル
第二次大戦下、シベリアの収容所を脱出し、歩いてインドへ逃れた男たちの実話。 彼らの歩いた距離は6500キロ。 日本列島往復に相当する。 寛平ちゃんは地球一周だぞ!…と思うなかれ。 彼らの旅路は何の準備も無く始まった生と自由へのサバイバル。 危機また危機を乗り越えるスリリングなアドベンチャーなどではない。 道のりは苦難。極限状態の人間ドラマ。 森を抜け川を渡り、雪山では寒さが襲い、砂漠では熱さに肌が焼ける。 体は汚れ、髭はボーボー。 虫やトカゲやヘビすら口にする。 それでも事足りず、特に強烈な喉の乾きに倒れそうになる。 体はボロボロ、満身創痍、体力の限界…。 遥か遠くにある自由を求めて…。 壮大なスケールの中にも緻密な人間ドラマを描く。ピーター・ウィアーの手腕が冴える。 ジム・スタージェス、エド・ハリス、コリン・ファレル…名匠の下に集った実力派たちが熱演を見せる。 男たちの中で、途中から同行したシアーシャ・ローナンが、花の如く一時の美しさと癒やしの存在。 自由を得る事は容易くない。 自由への道は、苦難への道。 それでも人は自由を目指す。
当時の人間の執念って凄いって思う映画。
色んな脱走映画を観て来たがこの映画は色んな事を考えさせられる映画でした。今の人間ではあそこまで生きる執念と人間力は無いんだろうなとあの戦火の中で生きたこそ成し遂げれるんだろうなと思った。基本脱走映画は仲間内の喧嘩や裏切りは後定番だがこの映画はにいかに人間は生きる信念と理性やらを本質に置いてる気がする。だからコテコテのドンバチやサバイバル好きな人はつまらないと思う。正直6500キロなんて人間技とは思えない事をこの映画ではかなり分かりやすく忠実に作ってると思う。名優揃いな所も見所です。
まずまずの力作
実話に基づいた話。 ソ連からインドまで6500キロ歩いたという男たち。 長い道のりを歩くわりに、意外と色んな事は起きない。 序盤は雪の極寒、中盤以降は猛暑枯渇。あとはイノシシ見つけて焼いて食うくらいで、サバイバルの興味深い描写はあまりない。 途中、なぜか若い女性が加入。そこから映画は俄然面白くなってくるが、まぁ特に驚くような展開にはならなかったなぁ。 終盤は感動的な音楽が流れ仰々しい涙を誘う構成。ハマれば泣けるかも。俺は泣けなかったけどw
かなりオススメ
男たちが極寒の収容所から脱走しひたすらながーーい距離を旅します 飛べフェニックスや生きてこそなどの映画が好きな方には超オススメです。 長い距離を歩くだけでなくその中で困難な水や食料の確保、精神的においこ、まれた時の人間同士の争いなんかもリアルに表現されてます。
6500キロを歩いて帰った 勇気ある男達
ナショナル ジェオグラフィックの 実話をもとにして作られたイギリス映画。原作は 1956年に発表された サルボミール ラビチェスの自伝的小説「THE WAY BACK」。
1940年 シベリア グラグ流刑地。
ポーランド軍士官、ヤヌスはロシア軍に捕らえられ 拷問を受ける。スターリン独裁政権下、ドイツ侵略によって分断されたポ-ランド人、政治犯、ロシア国内の極悪犯罪者、ユダヤ人などが、次々とシベリアに送り込まれた。ヤヌスは コミュニストのスパイをしていた嫌疑で逮捕されたが、証言台に引き出された妻の証言によって、シベリアに送られた。シベリアで流刑者たちは 森の木々を伐採し、鉱山で石炭を掘る強制労働を強いられた。宿舎の劣悪な環境と、過酷な自然環境の中で、流刑人の死は日常のことだった。
ヤヌスは シベリアに着いた その日から脱走する計画をたて、信頼できる仲間を探し始めた。収容者たちは 食料を隠し持ち、タバコを密輸し、博打もする。収容者の中でも 極悪犯罪者のギャングの力が大きく支配していた。
強制労働に就いて ある日、森の木の伐採に出かける途中 激しいブリザードに遭い、行進させられていた流刑人たちが、次々と低体温で道端に倒れて死んでいく。このままでは 全員が凍死するしかない という生死の際で、 アメリカ人の流刑人スミスが 警備陣が止めるのを聞かず 隊列から出て、森の中に避難する。残りのヤヌスや警備員達も スミスに従って森の木々をかき集め ブリザードをやり過ごして延命することが出来た。これを機会に スミスとヤヌスを中心に 信頼できる仲間が結束する。
収容所の電気を供給するジェネレーターは いったん止まると 回復するまでに10分かかる。この10分間は収容所を囲む外柵の電流も止まる。電灯も止まるから 監視は収容者の姿を監視することができない。この10分に 柵を越えて どこまで逃げられるかに、脱走が成功するか、失敗して銃殺されるかの 生死がかかっている。激しいブリザードの夜、ジェネレーターが止まり7人の男たちが脱走した。
アメリカ人で技師のスミス(エド ハリス)、ポーランド軍士官だったヤヌス(ジム ストラジェス)、ロシア人極悪犯罪者バルカ(コリン フェレル)、コサック兵だったヴォス(グスタフ スカースガード)、ちょっと頭の弱いカバロ(マーク ストロング)、料理人で絵がうまいゾーラン(ドラゴス ブカー)、最後のひとり ポーランド人は逃亡に成功したものの凍死する。ヤヌスは その墓に立ち、収容所で死ぬのではなく自由になって死んだ青年に 祝福の言葉を捧げて 皆は逃亡の旅を急ぐ。一行の食料は少ない。バイカル湖に向かって、先を急がなければならない。
湖まで数百キロ。飢えと寒さを乗り越えて 湖に着く。そこで一行は一人の少女が 後をつけてきていることに気がつく。飢えて彷徨っていた少女の名はエレーヌ(サイオアス ロナン)、彼女はポーランド人で コミュニストだった両親を殺され、孤児院に入れられ そこで性的に虐待を繰り返されるのに耐えかねて逃亡してきたのだった。エレーナが加われば 彼女に乏しい食料を分けなければならない。それは、6人の男たちの生死に関わることだった。しかしエレーナを振り切って男たちは 立ち去ることができない。幼い少女がたどってきた過酷な境遇を知ったからだ。しかしエレーナの軽い足取りや、小鳥のように男たちの間を飛びまわって語りかける姿は 男たちの心に、忘れていた安らぎをもたらせてくれた。
一行7人は バイカル湖を後に ロシアとモンゴルの国境をめざして歩く。モンゴルに入れば自由になれるはずであった。
しかしスターリニズムはモンゴルにまで波及していた。中国共産党勢力は モンゴルにまで及んでいたのだった。国境で、ロシア人バルカ(コリン フェレル)は ひとりロシアに残ると主張して 皆と別れる。重罪犯とは言え、ロシアへの愛国心を捨てることができなかったのだ。
6人は モンゴルから万里の長城を越えて、タクラマカン砂漠を横断して、チベットを経てインドまで逃れる。これがヤヌスの道程だ。あわせて6500キロメートル。これを徒歩で行かなければならない。
タクマカラン砂漠で エレーナが倒れる。飢えと乾きの果てに、エレーナは男たちに見守られながら死んでいく。料理屋で絵のうまかったゾーランも死んでいく。残った4人の男たちは 何度も死線を彷徨いながら 砂漠を徒歩で越え、チベットに至る。
ここで チベットから中国に入りアメリカ軍に合流するというスミスを置いて、残りの3人は ヒマラヤを越えてインドに入り 占領国のイギリス政府によって、保護される。1年かけて、男たちは自由を求めて、徒歩で6500キロメートルを走破したのだった。
というお話。
監督:ピーター ウィアー
キャスト
ヤヌス:ジム ストラジェス
スミス:エド ハリス
バルカ:コリン ファレル
カバロフ:マーク ストロング
ゾラン:ドラゴス ブカール
ヴォス:グスタフ スカルスガード
エレーナ:サオイアス ロナン
自然の映像が素晴らしい。ナショナル ジェオグラフィック協賛だけのことはある。黒々として深いシベリアの森、ブリザード、そしてバイカル湖の大きさ。360度黄土の広がるタクラマカン砂漠、チベットから見るヒマラヤの山稜の輝き。
ヒマラヤが雄大に空に聳える その岩山を 粗末な衣類を身にまとい、履き古した軍靴で足を踏みしめていく。自然の大きさのなかで豆粒のような大きさに見える男たちが 一歩一歩 助けあって進んでいく姿が感動的だ。カメラワークが素晴らしい。
「ラブリーボーン」で、変態男に殺されてしまう小さな少女を演じたサオイアス ロナンが 暗い男ばかりの映画で 花をそえている。可憐で 涼しげで可愛らしい。この一輪の花のために 飢えて生き延びることしか頭になかった男たちのなかに、急に人間らしい感情が流れ出す。無口で 自分のことを決して語らなかったアメリカ人、おそらくスパイだったと思われるスミスの冷たい目が、少女に出現で目に優しさがもどってくる。そういった男たちの心の変化が画面で 巧みに表現されている。さすが、ピーター ウィラーは うまい。
ヤヌスはどんなことがあっても 妻の待つ家に 帰らなければならない。自分は拷問を受けても罪を認めなかったが 妻の証言によって 政治犯としてシベリアに送られた。妻は一生 夫を権力に売り渡したことで 自分を責めるだろう。恐らく妻も拷問されて 夫を裏切らずにいられなかった。だから、自分が妻のところに戻って 自分が受けた罰など 何とも無い、妻は許されている、私たち夫婦は何ひとつ壊されてはいないのだ ということを 伝えてやらなければならない。そう信じて帰ろうとする 信念の強さに感動する。
この映画は、6500キロを歩いて強制収容所から自由を求めて脱出した勇敢な男たちの物語。観終わった後に 過酷な戦争への怒りにふるえ、それを乗り越えようとする人間の力強さに、心打たれる。
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