劇場公開日 2011年7月16日

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大鹿村騒動記 : 映画評論・批評

2011年7月12日更新

2011年7月16日より丸の内TOEI2ほかにてロードショー

一種の役者論としても見ることができる芸達者な役者たちによる群像喜劇

舞台は長野県の山麓地帯にある大鹿村。300年の伝統を誇る村歌舞伎で知られ、毎年、その舞台に立つのを生き甲斐にしている風祭善(原田芳雄)は稽古に余念がないが、そこへ18年前に駆け落ちして村を出奔した妻の貴子(大楠道代)と幼馴染の治(岸部一徳)が戻ってくる。貴子は認知症を患い、治は善に貴子を返すと申し出、村にはさまざまな小波乱が巻き起こる。

劇中で、さりげなく「最初は悲劇、二度目は喜劇」というマルクスの箴言(しんげん)が呟かれるが、すでに渋い老境に入っていいはずの3人が、童心むき出しで、掛け合い漫才のようなドタバタを嬉々として演じているのが可笑しい。一方で、シベリア抑留の傷痕の記憶を背負う三國連太郎の淡々とした語りも強く印象に残る。

この映画の魅力は、大鹿歌舞伎の舞台というハレの場をクライマックスに置きながら、ドラマ部分では、それぞれの役者たちの虚実皮膜の間をぬうような存在の仕方をドキュメンタリーのようにとらえた、一種の役者論としても見られるところにある。

なかでも、平家の落武者・景清を演じる善に対して、源氏に嫁いだ道柴として舞台に立った貴子が、舞台の袖で「許してもらわなくてもいいから」と呟く瞬間、原田芳雄が浮かべる名状しがたいクロースアップの表情がなんとも鮮烈だ。

原田芳雄の永年の肝煎りで実現した企画だが、阪本順治監督も芸達者な役者たちのアンサンブルを生かし、微苦笑させる群像劇という新境地の演出を見せている。

高崎俊夫

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