「もっと違った切り口の“はやぶさ”を期待したのだが・・・」はやぶさ 遥かなる帰還 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと違った切り口の“はやぶさ”を期待したのだが・・・
念入りな取材に基づき書かれた原作を丁寧に映画化したという印象を受ける作品。
渡辺謙演じるプロジェクトマネージャーを中心に、多くの人が、それぞれの持ち場で存分に力を発揮したからこそ“はやぶさ”は還ってきた。単純に技術的に高度というだけでなく、難題に対して想像力と知恵を働かせた結果であり、人間と遠く離れた“はやぶさ”の間に太い絆を感じる。
疲弊してなお人の期待に応えようとする“はやぶさ”がいじらしい。迷子の犬が一生懸命に飼い主を探しているようで、もはや金属の塊というよりは生命体に見えてくる。
その点では、一大プロジェクトの成り行きをよくまとめた作品だと思う。
だが、エンターテインメント作品としてどうかというと、実際にあったことを時系列に辿っていく大筋は先に公開された「はやぶさ HAYABUSA」と変わりはない。プロジェクトの誰を主人公に持ってくるかの違いだけだ。
ニュースとか新聞などから得ることのできなかった裏話はないのだろうか?
やっと還ってきた地球、“はやぶさ”が最後に観た地球、その写真データを送り終え、大気圏で燃え尽きる“はやぶさ”の姿には泣ける。
それでも残る競作「おかえり、はやぶさ」も観てみたいという気力は、残念ながら失った。それは、これまでの2本が主人公を変え、役者も違い見た目の色合いは異なってはいても、その切り口に変わりがないからだ。
むしろ、“はやぶさ”の発案から打ち上げまでのプロセスをじっくり見てみたい。そうすることによって、“はやぶさ”の帰還は奇跡だったのか、それとも人間の勝利、また日本の技術力の勝利だったのかが鮮明になってくるのではないだろうか。
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