「8台の3Dを使ったアトラクションムービーとしては、最高。でも、ストーリー展開に少々難アリです。」三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
8台の3Dを使ったアトラクションムービーとしては、最高。でも、ストーリー展開に少々難アリです。
老若男女が楽しめる時代を超えて愛され、これまで何度となく映像化されているアレクサンドル・デュマの冒険小説の傑作「三銃士」が21世紀にグレードアップして映画化されました。
手掛けたのは「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督。野心的なアンダーソン監督が撮る以上、古典を忠実になぞるだけで終わるはずはありません。監督のミューズであるミラ・ジョヴォヴィッチを投入して、バイオハザードテイストに仕上げるかと思いきや、なんと雰囲気はサントラ含めて『パイレーツ・オブ・カリビアン』に似せていました。
というのも、本作にはこれまでの『三銃士』にはない大飛行船による空中バトルがあるからです。船同士が大砲で撃ち合うところや、双方の乗組員がアクロバティックにバトルしあうところいところに加えて、時折笑わせるアンドリュー・ディヴィスによるユーモアが加わった脚本に『パイレーツ』を彷彿します。少し違うところといえば、空中戦なので、上下に激しく揺れるスリリングさが『パイレーツ』よりも強く感じました。
とにかくレオナルド・ダ・ヴィンチが実際に残していた設計図をもとに完成させたという設定で登場する飛行船による空中バトルは、思わず口があんぐと開いてしまうほどのド迫力。最新3D映像とあいまってクライマックスを大いに盛り上げてくれました。
アンダーソン監督は、「アバター」の公開前から最新の3D撮影技術に興味を示し、「バイオハザード」でも取り入れましたが、これはやや消化不足でした。
そこで前作のノウハウをさらに発展させ、驚異的な映像を生み出したのです。その原動力は、8台もの3Dカメラによる撮影。考えられる限りのアングルで捉えた立体映像は、剣劇の臨場感のすごさはもちろん、空中や高所でのバトルでは、常に高度を意識させ、ヒヤッとするスリルを感じさせてくれました。
また世界遺産でロケ撮影された宮殿などでのシーンも3Dで観ると圧巻で、そのゴージャスさに思わずため息が出てしまうことでしょう。
物語は、17世紀のヨーロッパを舞台に、血気盛んな青年ダルタ二アンがフランス最強の三銃士と友情を結び、王妃を窮地に陥れる陰謀に立ち向かというオリジナルのストーリーを基本的には踏襲しています。
けれども、王妃の首飾りの紛失がなぜフランスと英国の戦争になりかねない事態になるのか、説明が弱いと感じました。原作のルイ13世は、嫉妬深く王妃の浮気を疑っているとされています。しかし本作では王妃にラブラブなんですね。
たとえダイヤの首飾りがイギリス宰相バッキンガム公のところから見つかったとしても、それで王妃とバッキンガム公の関係を疑ったりするような感じがしないのです。
それと、豪華キャストを並べた結果、主人公であるべきダルタニャンが時々霞んでしまいます。そりゃあ、愛するミューズを口説き落として出演してもらったからには、何とかアンダーソン監督は、ジョヴォヴィッチの出番を確保したいでしょう。その結果、宣伝を含めて、ダルタニャンの剣士としての成長の物語なんか、悪女ミレディーが暗躍する話なのか、加えてミレディーに裏切られた三銃士のリーダー・アトスの愛憎の話なのか、よく分からなくなってしまったのです。
口火は、アトスがミレディーに裏切られるところよりも、ダルタニャンの旅立ちから始めるべきでしょう。
それでも、ダルタニャンの活躍は目を見張るものがありました。リシュリュー枢機卿の腹心ロシュフォールとの最終対決では、宮殿の高い屋根上での決闘シーンが凄いのです。3Dで鑑賞していると、その高さが余計にスリル感を高めてくれます。10分以上に及ぶ息つく暇もないくらいの激しい応酬は、3Dの醍醐味を味わいさせてくれる名場面だと思います。素晴らしい殺陣を見せてくれた当たりの俳優にも拍手!特にダルタニアを演じた「パーシー・ジャクソンとオリンボスの神々」の注目株、ローガン・ラーマンの無鉄砲な魅力が全編を包んでいます。とても18歳とは思えない自信に漲った演技でした。
オーランド・フルームによる悪役の不敵さもなかなかのもの。エンドロール中のラストでは、バッキンガム公がリベンジのためフランスに戦争を仕掛けるシーンで終わるため、続編では、もっと出番が出てくるでしょう。
バラエティ豊かな超絶アクションをてんこ盛りにすることで、あくまでも剣戦アクションがメインだったこれまでの「三統士」とはひと味もふた味も違う仕上がりになった本作。アトラクションムービーとしては、最高峰に位置づけられることでしょう。ぜひ公開を楽しみにされてください。
それにしても、悪女とは悪運が強くて、しぶといものだとラストのワンシーンでつくづく思いました。案外、監督は恐妻家なのかもしれませんね(^^ゞ