アンダルシア 女神の報復 : インタビュー
アクションやカーチェイス、銃撃戦といったエンタテインメントのだいご味も大幅にスケールアップ。特にタクシーに乗っていた3人が巻き込まれる銃撃戦は、織田も安全性を考慮したうえで積極的に意見を出し、日本映画ではなかなかお目にかかれないほどの迫力に満ちたシーンに仕上がった。
「派手にやりましたけれど、やっちゃえやっちゃえと現場で言っていたのは僕なので。こんなチャンスはめったにないぞって。監督もリアリティを求めていたし、(銃撃戦で自動車に仕込んだ)弾着の火薬の量が必要以上に多かったから、待っている間にこの車、爆発するんじゃないかと思ったくらい(笑)。スペインのスタッフもビックリしていましたよ。日本のスタッフはここまでやるのかって」
結果、連続ドラマと映画を通して撮影は半年近くに及び、移動距離も米・サンフランシスコ、東京、欧州と相当なものだ。肉体的にも精神的にもタフさが要求されるだけに、やはりクランクイン前は不安もあったと述懐する。
「ドラマと映画ではスタッフ、キャストも変わるので、普通なら終わりということろを続けなければいけない。本当にやってみるまでは自信はなかったですね。もう1回やれと言われても自信はないけれど、スペインにはユニオン(労働組合)があるので1日12時間と決まっているから、睡眠が取れるという安心感はありました。ドラマでは、スタッフの方にすごく気を使ってもらった。そういう人たちのおかげで、何とかできたというのが正直なところです」
それでも、「アマルフィ」から始まりdocomo動画で配信された「アマルフィ ビギンズ」(09)、連続ドラマ、そして「アンダルシア」と幾多の難局を乗り越え成長を続けてきたことによって、黒田は織田にとってかけがえのない存在となった。
「もう、可能性の塊なんです。この男が、次にどうなるか想像がつかないんですよ。どんな脚本になるか、どんなキャストが組まれるか毎回違う。黒田は一緒だけれど、メディアが変わるとスタッフも変わる。そうかと思えば、『アマルフィ』のチームとは2年ぶりで、福山くんや安達香苗(戸田恵梨香)に会うとホッとする。シリーズものをやっている感じはなくて、毎回が勝負だし、すごく新鮮な気持ちで臨めています」
ところで、黒田は世界各国を行き来し、これまでに英語、イタリア語、中国語、フランス語、スペイン語に堪能なことが判明している。織田自身は、海外の映画などへの出演に興味はないのだろうか?
「ベースは日本ですけれど、経験として機会があればいろいろなところでやってみたいというのはあります。でも、日本映画はよくよく考えれば米国のハリウッドに次いで、世界で2番の収益を上げている。そういう意味では日本映画がもっと引っ張っていかなければいけないと思う。お客さんに人気のある人だけ集めましたみたいな作品は、出来が悪いと1観客としてがっかりしちゃう。無名の人だけが出ていても、素晴らしい映画は素晴らしい。だから、大きい予算のどこの国の映画だとか、小さいバジェットだとかはあまり考えず、素晴らしいと言われる映画を作りたい。今回はエンタテインメントなので、その№1を目指したいし、ホッとするような小さな話でも、ワールドワイドなものでもいい。映画作りに情熱を持っている人とやりたいし、僕もそういう1人でありたい」
すべての質問に対し、言葉を選びながら丁寧に語る真しな姿に、日本映画に対する熱い思いが感じ取れた。今の日本映画界において、トップランナーの1人であることは間違いない。青島に加え、黒田という心強い“分身”を得たことで、その走るスピードはさらに加速していきそうだ。