東京家族のレビュー・感想・評価
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自分は好きだけど、ちょっと時代遅れのストーリー
2回目の鑑賞
(1953年の東京物語は見ていません)
老夫婦が東京に住む3人の子供たちに会いに上京するという物語
3人の子供たちは上京した両親に、何かしてあげようとするのだが
急用ができたりなかなかうまくいかない
両親も子供たちとコミュニケーションが取れず手持無沙汰
でも出来の悪い子と思っていた次男(末っ子)には
しっかりした彼女がいて、紹介された母親は
「これからも上手くやっていってくれそう」と一安心
「東京来て良かった」と夫に話す母だが突然倒れてしまう
自分はこういうストーリーは好きだ
子供たちも何とかもてなそうとしてるし
長男も父親を自分で引き取ろうとしたり
古き良き昭和時代の物語で
ちょっと時代が合わないかな~
というのが正直な感想
形見の時計
子供たちの住む東京へ。子供たち孫たちに会える。とっても楽しみ出てきたんだろうなぁ~
それなのに親の気持ちにとは違うおもてなし
高いホテルに泊まって二人だけの時間を過ごす
何のために東京に来たのか寂しさが……
ダメな子と思っていた末っ子の彼女の優しさに息子の良いところが見えてきた。母親の優しいところが似ていると思い重ねる。
年を重ねると橋爪と吉行の親の思いが凄く胸に
響いてくる
遠くの親戚より近くの他人 正しくその通りですね
日本の失われつつある優しさに溢れた作品
慎ましく真面目一徹に生きる父を演じた橋爪功さん、慈愛に満ちた母を演じた吉行和子さんの味わいのある演技が秀逸。
夜眠る前、恋人との馴れ初めやプロポーズした時の話を母親に語る、次男晶次を演じた妻夫木聡さんの柔らかな表情とナチュラルな演技に魅了されました。
長女役の中嶋朋子さんを始め、キャストの皆さんの個性溢れる演技もいい。
病院の屋上でのシーンに涙が溢れました。
山田洋次監督の新作「キネマの神様」の上映が待たれます。
-何をしてるって、うな重がくるのを待ってるんだって
-空でも眺めとるほかなかろうが
NHK-BSを録画にて鑑賞
じんときました。
松竹。まさにタイトルどおりの内容。小津安二郎の東京物語をオマージュした作風。
シュージ。わたしには彼のキャラクターがすごくわかる。この作品のなかでは、少し浮いた存在のシュージではあるが、平成版の寅さんのような感じもしなくはない。
西村雅彦が長男で、東京郊外に開業した町医者。奥さんが夏川結衣で、この夫婦が悪くない。子どもが男の子が二人いる。中嶋朋子が町の美容室を経営する奥さん。林家正蔵が旦那で、この夫婦もいい。末っ子が舞台美術(大道具)をやっているフリーターのようなシュージ。妻夫木聡。中盤にきて蒼井優が登場するのだが、彼女がでてきてからが物語的にはぐっとよくなる。
老夫婦は、橋爪功と吉行和子。二人は離島から出てきた。息子や娘たちも離島の出身者たちだ。
全体的にコメディ要素の多い作劇ではあるが、後半では泣かせる。
名作の証明…「東京物語」へ愛をこめて
山田洋次監督生活50周年記念作品。
レンタルDVDで2回目の鑑賞。
小津安二郎監督の言わずと知れた名作、「東京物語」へのオマージュに溢れた作品。初鑑賞時は「東京物語」が未見だったのでなんとも思いませんでしたが、鑑賞後に改めて観た今回、カメラワークやセット、セリフのひとつひとつに至るまで忠実に再現されていたことを知って、度肝を抜かれました。
しかし、ただのリメイクやオマージュに留まらない魅力がたくさんあるように感じました。松竹大船調の伝統を受け継ぐ山田監督が、名画への並々ならぬ敬意を払いながらも、現代社会に抱く想いをぎっしり詰め込んだのだろうな、と…
根底に流れるテーマは「東京物語」と共通していました。
ストーリーがほぼ同じなのでそうなるのは必然ですが、やはり心に響いて来る。家族の繋がりや他者との関わりが急激に変容していく現代社会で、それと比例するかのように希薄になっていると言われる事柄に対し、監督は非常に危機感を抱いているのかもしれないな、と…。製作段階で発生した東日本大震災を経たことで、より一層他者との繋がりと云う部分に重きを置いて問題定義をしようとしたのかなと思いました。
そんな状況だからこそ、普遍的なメッセージがこめられている「東京物語」をブラッシュアップし、再び世に問う必要性を感じたのかもしれません。それは同時に同作が紛れも無い名画であることの証明でもあり、後世に伝え残していかなければならない作品であることを改めて痛感しました。
※修正(2022/05/16)
リアルな家族模様
東京で暮らす子供達3人の元に突然田舎から両親が訪ねてくるというよくある話であるが…本音と建て前がとてもうまく絡み合い心の中を覗かれているようだ。
長男は開業医、次男は舞台美術などの不安定な仕事。
長女は美容室を営み夫は俗に言う「髪結いの亭主」である。
年老いた両親を東京見物にでも連れて行きたいと思う子供達だが、それぞれに忙しく案内出来ない。苦肉の策で高級ホテルに宿をとりゆっくりしてもらうつもりが…柔らか過ぎるベットに慣れず落ち着かない両親。
予定を早く切り上げて帰ろうかと思った矢先に、お婆ちゃんが倒れ…亡くなった。
葬儀に参列するため兄弟は実家に集まる。
無事に式を終えると子供達はいそいそと帰り支度。
長男は父に、東京へ来ないかと話すが、断られた。
子供達には子供達の生活があり、爺さんには爺さんの暮らしが…
遠い親戚より近くの他人とはよく言ったものだ。
長女の性格…嫌いだな。
75点
映画評価:75点
感動しました。
妻夫木さん演じるショージが凄くリアルで、この作品に深みが出たんだと思います
今まで子ども達と父親のカスガイとなっていた母親の死。
その母親の代わりとしてカスガイとなっていくのは、家族から落ちこぼれと蔑まれてきたショージとそのフィアンセだろう
誰にでも評価される立派な仕事をしている訳でもないし、親孝行が出来る器量もない、それでも他の兄姉より思いやりがあるくせに口下手の引っ込み思案
自分の周りにもそんな人がいるから、とてもリアルだし凄く身近な家族に感じる
要らない子どもなんていない、必ず家族の何かを担っている
そう教えられました
日本らしさを残した良い作品でした
【2016.3.21鑑賞】
リアルな家族模様
東京で暮らす子供達3人の元に突然田舎から両親が訪ねてくるというよくある話であるが…本音と建前がとてもうまく絡み合い心の中を覗かれているようだ。長男は開業医で、急患の往診により両親の東京見物予定をドタキャン。長女は美容室を経営していて忙しい日々。次男は仕事も不安定で両親の悩みの種。今回の上京の目的は亡くなった同僚のお悔みと子供達の暮らしぶりを確認する事らしいが、滞在期間も未定な為子供達は困惑する。忙しなく暮らす都会の子供達と、のんびりとマイペースな田舎の両親が対照的である。子供達から高級ホテル宿泊をプレゼントされ泊まったものの慣れない食事やベットで疲れてしまう所やホテルの清掃員が年配者が泊まった後はとても綺麗だと話している所など頷ける点が多く自分の親と重なります。母親が突然亡くなり堅物の父親が1人島に残ると言う。そんな頑固で近づき難い父親だが実はとても優しい父であり島の人たちから愛されて暮らしているのだ。美しい島の景色と人情を感じジィーんときました。
滋子と紀子が好きじゃない
「シコふんじゃった。」から日本アカデミー賞受賞作品の流れで鑑賞。
・・・超ちんちくりんだった( °д°)
長女の滋子さん、ああいうタイプって超苦手。そればっかり考えてしまった。仕切りたがりで、話が長くて、口うるさくて、常に自分が正しいと信じて疑わなさそうで。あなたの価値観=世の中の価値観、じゃないですよ!って言ってやりたくなる。言っても響かなさそうけど。
一番のもやもやエピソードがこれ。
田舎からわざわざ出てきた年老いた両親は、長男の幸一と滋子が手配した高級ホテルに二泊するはずが、雰囲気と合わず一泊で帰ってきてしまった。その二人に対して、滋子は「今夜はうちにいられたら困る」なんて言い放つわけ。商店街の飲み会がどうとかご飯作ってあげられないとか。さすがに言わないでしょ。近所付き合いにどんだけいっぱいいっぱいなのでしょう。夜中までうるさくてごめんって言って、とりあえず出前でも取ってあげればいいじゃん。
そもそもホテルに泊まらせたのだって、いつまでも田舎に帰る日を言わない両親の相手が少し面倒くさくなってきたとかそういう理由っぽいし。まぁわかるけどさ、彼らにも彼らの生活があるから。とはいえ東京のこと右も左も分からない人たちに対して冷酷すぎて引く。
観光に連れて行こうともしてたけど、両親が何したいかとか、どこ行きたいかとか、一回でいいから本人たちに聞きましたか?って感じ。意見を聞いてから持て成せよ。もやもや。
ラストでも、病院では誰より激しく泣いてたし、「お父さんどうするの?」ってしきりに聞きはするけど、具体的にどうしようとか、嘘でも「うちに来たら?」とかは一切言わないし。結局さ、他人の心配しているふりして結局自分のことしか考えてない人。
あー、滋子が嫌い。どこまでも。笑
あと蒼井優が義両親(まだ結婚してないけど)にちょいちょいタメ語なのも超違和感だった。そもそも義両親じゃなくたって、初対面でめっちゃ年上の人に「大丈夫よ」とか言わないと思う。蒼井優は好きだけど、今回の役は全然魅力的じゃなかったから残念。
こういう古き良き日本の家族、って感じの映画、好きだったはずなんだけどなぁ。
ついこないだ観た「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズは全部大感動だったから、時代云々じゃないんだろうな。この家族はなんとなく苦手だった。
こうして空でも眺めてるしかなかろうが・・
映画「東京家族」(山田洋次監督)から。
親はいくつになっても親だから、子どものことが気になる。
だから、3人の子どもに会おうと夫婦で上京したにも関わらず、
子どもたちは自分の生活で精一杯、久しぶりに会った両親を、
素直にいたわれない現実が、待っていた。
みんな一所懸命生きている、それは親に伝わるが、
やはり夫婦の感じた淋しさは、隠し切れなかった。
親子の絆って、人間関係の一番基本的なところにあるのに、
なかなかうまくコミュニケーションがとれないもどかしさがある。
どこにでもいる家族、どこにでもある日常生活、
そして突然の母の死という出来事をを通して、
その理想と現実とのギャツプが、映し出されていた。
楽しみにしていた子どもたちとの再会と、のんびりした時間は、
影も形もなく、東京の空の下、老夫婦だけとなりふたりは戸惑う。
妻が「どないする?」と問いかければ、
夫が「こうして空でも眺めてるしかなかろうが・・」と答える。
「ええ天気じゃねぇ」と言いながら、なぜか淋しさが込み上げる。
私が一番、印象に残ったシーンである。
横浜の高級ホテルに泊まれることで喜ぶと勘違いしている子ども、
それを口に出さず、黙って受け入れる親。
忙しいのはわかっている、でも、もう少しゆっくり話したい、
それが3人の子どもを育て上げた親の気持ちだろう。
家族愛、親子愛、夫婦愛・・
山田監督は、どれを一番伝えたかったのだろうか。
家族愛の幸福度の基準を客に問い、戸惑わせるのが今作の価値やと思う
モチーフは云わずもがな小津安二郎がこしらえた古典派邦画の頂点『東京物語』
家族愛の微笑ましさと残酷さを入り交えた哀愁を踏襲しつつ、山田洋次が生涯掲げ続けてきた現代の家族の在り方を問うカラーが浸透しており、2時間越えでも最後まで感情移入してしまった。
お互いが想っているのに、どうしても遠慮し合い擦れ違うぎこちなさが、クラシックに展開する人情噺の味わいを引き締めていく。
立川談志のDNAを純粋に継承する一方で、独自の世界を確立する立川志らくの落語に通ずる。
生の独演会で効いた『らくだ』の雨宿りの件を思い出した。
解らん輩には、ダシと酢の効いたシメサバを嗜むような満足感に近いと申しておく。
両親が最も心配していた末っ子の妻夫木聡のだらしなさと愛嬌を兼備したキャラクターは、『男はつらいよ』の満男(吉岡秀隆)を彷彿とさせていて、山田洋次ファンの性分をくすぐらせる点もニクい。
ただ、舞台美術のスタッフってどれぐらいの収入・環境なのかピンと来ないので、苦悩を共感しにくかった。
れっきとした職人なんやから、心配し過ぎやろと両親に対し、ついつい思ってしまうのは、私も負けず劣らずだらしない息子やからだろう。
不器用ながらも最後に親孝行できた妻夫木が素直に羨ましい。
母親が妻夫木の彼女・蒼井優を紹介された際、初対面にもかかわらず、
「感じの良い人ね」とアッサリ肯定し過ぎる場面に当初、違和感を覚えた。
しかし、「良い人ね」ではなく
「感じの良い人ね」って声掛けするニュアンスが、今作のミソなのではなかろうか
我が家に着いてから、ふと想う春の入り口である。
では最後に短歌を一首
『旅の果て 居場所尋ねし 老いた雲 一対の輪の中 ぎこちない空』
by全竜
東京砂漠。
山田洋次が、名匠・小津安二郎の「東京物語」をモチーフに、
現代の東京に生きるある家族の姿を描いた感動ドラマ…という
ふれ込みなのだが、モチーフ・オマージュというより、もう
ほとんどが東京物語を踏襲リメイクしているかのような作品。
舞台設定や背景は現代としても、その台詞回しも行間もカメラ
の配置までも揃えているのは凄いと思った。が、逆にそれが
おかしな平成を見せているような感覚にも繋がり、今時こんな
喋り方をする家族はいないぞ(爆)という、小津映画を念頭に
置かないと、かなり時代錯誤的な感覚に陥ってしまう気がする。
それだけ山田監督は「東京物語」を大切に思っているのだろう。
ただ絶対的に、小津映画と山田映画は違う。
その違いを楽しめるか、残念に思うかで、評価の変わる作品。
若い映画ファンにも(人気がある)小津作品は知られているので
原版と比べるとその類似性がハッキリと分かると思う。
ただ、当時の戦後間もない日本と、大震災後間もない日本との
対比は本作では分かり辛い^^;
設定を変え、戦死した次男をフリーター(って訳じゃないけど)
として登場させ、その恋人を未亡人の原節子に見立てた。
言いたいところは、遠くの親戚より近くの他人。じゃないけど、
せっかく逢いにきた子供達は皆それぞれの生活で多忙な現代、
両親の面倒もぞんざいな中、唯一親切にしてくれたのが他人
(っていういい方もおかしいけど)の嫁や恋人だった。という、
当時では画期的な(核家族の)描かれ方だったんだろうと思う。
心の拠り所。とはどこを指すのか。
両親に親切にしてくれた未亡人である嫁が、再婚を勧められる
中で、やっと本音を吐露する後半シーンが秀逸な「東京物語」。
今作では、まさかと思う息子の恋人の出現に戸惑いながらも、
大喜びして亡くなっていく母と、最後にやっと受け容れる父親。
子供達の成長と躍進は嬉しいものの、年老いて侘しさがつのる
老親世代にとって、相も変わらぬ人情というか、ささやかな一時が、
どれだけ冥土の土産(まだ早いですか)になるものかを示している。
自分が原版(もちろんビデオで)を観た頃はまだ若くて、
どうしてこの子供達は両親に冷たいんだろうと不思議に思った。
熱海(今回は横浜)の海辺で
「お父さん、帰りましょうか」という母親の一言がずっと忘れられず、
何か哀れで堪らなかったのを覚えている(その後のあの扱いもねぇ)
だけど、自分がこの長男やら長女やらの歳になってみると、
中年世代の悩みや気苦労など大変さが段々身に沁みてくるもの。
家族それぞれが、それぞれの悩みを抱えている。
年代によってそれが多岐にわたることが、物語からもよく分かる。
でもやはり。
行き着くところが家族の愛情であるのは、決して疎かにはできない。
やがて自分が親の立場になった時、その頃の双方の気持ちがグッと
迫ってくるんだろうな、と思う。
いつか息子の嫁(くるのか?)に、いろいろ言われたりする近未来を
想像しただけで、すでに背筋が凍りつきそうだが。。。
ともあれ、独りになるのは寂しいものだろうけど(仕方ない)、
自分の子供達が無事に成長し元気でいてくれるだけでも幸せだと、
戦争や震災で家族を失った方々には申し訳ないくらいだと思う。
山田映画の温かさはラストの光景に感じられる。
あのお父さんは、決して不幸ではないぞ。むしろ幸せな老後である。
(頑固で扱い辛い父親^^;私的に通じるこのテーマには考えさせられる)
山田洋次監督からの復興と再生への祈りの作品だ
小津安二郎監督へのオマージュ作品として制作されずに、この作品を単独作品として観るなら普通にハートウォーミングな日本の家族映画として良作だと思うのだ。
或る日、年老いた両親が田舎から、都会に移り住んだ子供達の様子を見に訪ねて来ると言うストーリー展開だけをオリジナル作品である小津作品と同様にし、その他の部分は全く別の作品として創られていた方がきっとしっくりと腑に落ちる良い作品として記憶に残す事が出来ただろう。
例えばファーストシーンの幸一の長男と母文子のセリフや、滋子と文子の会話等は同じ様なセリフ廻しをあえてする必要は無かったように思えた。「東京物語」と否が応でも比較してしまうと言うより、似通ったセリフが出て来ると、自然とあの名作が頭の中で蘇ってしまい、気付くと無意識の内に比較対象をしながら本作を観ているのだ。そうなると邦画の神様である小津監督が制作したオリジナル作品を越える作品を制作する事は、巨匠山田監督でも、誠に残念ではあるが不可能である為に、返って違和感を覚えずにはいられなかった点が有り、とても残念でならない。
ところで、2012年にも10年に一度選出される、英国映画協会の監督が選出する世界のベスト映画ランキングでも小津安二郎監督の「東京物語」は堂々ベスト1に輝いたと言う事だ。
何時の時代も、親が子供を無償の愛で思う程には、子供はそんな親の気持ちが理解出来ないと言うジレンマは世界共通の人間のマインドなのだろうか?
自分も子供の親となり、子供を育てる過程に於いて親の気持ちは理解し、親の有り難味が身に沁みて解り感謝の気持ちは持てるのだが、しかし同時に幾つになっても、実の親に対しては、何処かに甘えが生じてしまう。そんな甘えの一例に、親の死はズーッと先の事と勝手に思い込み、家族に対しては、一期一会と言う気持ちで日々暮せないのも、これも人間の甘えの一部分でもあり、哀しき習性なのかも知れない。
山田監督作品、しかも「東京物語」へのオマージュ作品と言う事で、俳優さん達は皆さんとても素晴らしい芝居を繰り広げて下さり、観ている私は、とても得した気持になれて、感謝しています。かなり泣きました。
平山周吉と沼田の飲み屋のシーンなどは、山田監督からみて、今の日本の有り様が、何処かでボタンの掛け違いをしてしまっている様に感じられて、未来を担う日本の人達への監督の心の叫びの代弁の様にも思えた。
小津作品は、日常の家庭の平凡な日々の生活の中にこそ、人間の普遍的な生きる真価と幸せを見出して表現した訳だが、それと同時に敗戦後の日本の未来を担う人々へのエールでもあった様に思うのだ。
そして本作は、311後の我が国の復興への祈りが込められた山田作品である事は言うまでもないが、この作品を観て改めて、被災された方々の日々の生活が少しでも回復へと向かう事が出来る様にお祈りさせて頂きます。日本人の忘れていた心をありがとうございました。
素敵な時間
セリフ回しも小津節になってましたので、もうまさしく平成版「東京物語」でしたね。あのどこか感情をおさえた演出には、どこかしか違和感を
おぼえた人もいたかもしれません。
山田監督は「息子」もありますし、家族をテーマとしている点で、小津
監督とはなにかと通じるものがあります。
この作品には、誰ひとりとして悪い人はでてきません。ただこの厳しい日常を生きている人たちの姿を描きます。だから、いつしか自分もその中にはいっていって自分と家族のありかたも考えてみています。
どうして、周吉ととみこの東京旅行は、つまらなかったのでしょう。
自分の子供たちが元気に生きている、それだけでもいいはずなのに。
欲をいえば、親であることから引退を告げられたような対応だったのかも
しれませんね。一番、ダメ息子だったハズの末っ子とのふれあいが、この
旅を素敵なものにしたのも、彼がふたりをふつうにおやじとおふくろとし
て対応したからではないでしょうか。蒼井優をひとめみて、息子の生き方
間違いはないんだと知る母の姿がすばらしい。そして、その幸せそうな妻
の姿を見て、心配する息子の嫁がいい娘なんだと感じる。
言葉にはない素敵な時間がそうさせるのだと思います。
だから作品を見ている自分も同じ時間を共有できて幸せなのです。
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