劇場公開日 2013年1月19日

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「山田洋次が現代に家族を問う」東京家族 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0山田洋次が現代に家族を問う

2013年1月17日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

幸せ

瀬戸内海の小島に住む周吉ととみこは、東京で暮らす子供たちを訪ねる。だが、多忙な子供たちと擦れ違うばかり。そんな時、とみこが倒れ…。

小津安二郎監督の世界的名作「東京物語」へオマージュを捧げた山田洋次監督最新作。
僕は元々山田洋次監督の作品が好きなので、今回も満足。良かった。
そう、“良かった”のだが…
時代劇3部作を終えて戦争への静かな怒りを込めた「母べえ」の後、「おとうと」や本作など往年の作品へのオマージュが続く。いずれも過去を振り返って現代へ問いかけ、別に悪いという訳ではないが、ずっと過去へ目を向けている気がしてならない。せっかく現代劇を描いているんだから、もっとまっさらな発想で現代もしくは未来へ目を向けた作品を作って欲しかった、というのが第一の印象。

勿論、内容は悪くない。
人と人の繋がりが希薄になった今、家族の関係も例外ではない。一緒に住んでいても会話が無い、一緒に住んでいるからこそ煩わしい…誰にだって思い当たる事があるハズ。ましてや本作の場合、久し振りに会ったというのに満足に接する事も出来ない。子供たちはそれが悪いと思いつつも仕事や都合のせいにし、親も寂しさを覚えつつも妥協するしかない。どんどんすれ違っていく家族…。そんな時だからこそ、今一度、家族の絆や尊さを問う。鬱陶しく感じたり衝突する時も当然ある。家族だから。でも、いつどんな時でも、あなたを支え迎え入れてくれるのは家族。あの時、もっとああしてやれば良かった…と後悔の無いように。山田洋次監督による現代の家族へのメッセージが、時にシビアに時に温かく胸に染み入る。
非の打ち所が無い山田洋次作品だが、小津安二郎の「東京物語」に思い入れがあるとどうしても同作品がチラつくのもまた事実。「東京物語」は淡々とした中に人生の悲哀を感じさせたのが見事だったのに対し、本作は喜怒哀楽の感情がぴったりと寄り添う。それはそれで心地良いが。

さっきから自分の中でも賛否葛藤しているが、改めて言うが、見て損するような映画ではない。イイ映画である。
漫画やTVドラマの映画化相次ぐ昨今の日本映画界で、こういう映画が作られて、バランスが保たれている。日本人の心に触れる良作。
是非ともご家族で見て、親交を深めて欲しい。

近大