「子どもに見せる映画じゃないね」コクリコ坂から こばこぶせんさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもに見せる映画じゃないね
子どもに見せる映画じゃありません。
大人は、少し考えながら見ることが出来ますので、それなりに楽しみました。宮崎吾朗作品だからといって、否定する気もありません。
予定調和的すぎる感じがあり、可はなく、不可があるといった程度です。
詳しくは、以下に書きます。
子どもに見せる映画じゃありません。
何人もの人が指摘していますが、大人がいろいろ考える映画であり、
子どもにとっては、何が何だか分からない映画。
映画を見終わって「おもしろかったね」という子どもがいたら、
それは内容にまったく興味を持っていないか、親に対する気遣いが出来るかどちらかでしょう。
大人だって、少なくとも50代以上の人じゃないと、すっと感情移入できないのではないでしょうか。いかにもノスタルジックな、あざとすぎるとも言える1960年代演出満載ですし。
子どもが見る映画でないのなら、他の人も指摘していましたが、もう少し時間を長く使った方が良かったのではないでしょうか。
作品の中で説明しすぎるのも野暮ですが、登場人物のキャラクターも背景もまったく分からないし、カルチェラタンもあの学校のステイタスも分かりません。何のために出てきたのか分からない登場人物も、話を都合よく転がす一点のための、取って付けたような登場人物が多かったように思います。
「行間を読め」と言われても、無理です。伏線になるような描き込みはなかったように思います。
話の中心となるところ…主人公2人が、なぜお互いに恋心を持ったの?
恋の始まりは、それは些細なことです。女主人公の心境はまだ分かるような気もする(映像としては、旗を揚げるときに重なる、少年の飛び込み姿)けど、男主人公の気持ちは分かりません。旗を上げているだけで好きになれるのかしら(旗を揚げているのが彼女だと言うことを知っていたのかも分からん)?
あらためて、子どもに見せる映画じゃありません。
主人公2人の恋愛が、自分達が実は「兄妹」って頓挫しかけて、
それでも「好きだ」などと告白しあったりして…。
あわや近親相愛ではないでしょうか(近親相姦でないにしても)。
それを肯定してしまう話の流れには、少し抵抗があります。
でも実は、戸籍上「兄妹」なだけで、血は繋がっていないんだ、よかった!
…なんて、作品中の男主人公の言葉を借りれば、やはり安っぽい「メロドラマ」。
三度、子どもに見せる映画じゃありません。
ジブリ作品には、いつも反権力的な匂い、「運動」的な匂いがする。
権力に盲従しなさいとは言いませんが、反権力的なことがどれも素敵だなどとは思いません。
(カルチェラタンの取り壊しの反対運動にしても、学生は学校という権力に反抗するものの、押し切られて、強権的に取り壊しが決定する。でもその決定を覆らせるのに、最後に頼るのは学校側から見た権力である理事長だったりするのは、少し可笑しかったが)
ジブリ作品は子ども向けから、大人向けになったということでしょう。