今となっては演技派女優としての地位を不動のものにしている前田敦子だが、山下敦弘やら黒沢清やらに発見される以前はこういう映画ばかり出ていたことを思い出した。
半世紀以上前の経営学の名著『マネジメント』に触発された女子高生が弱小野球部を甲子園に導くという筋立てはそれなりに面白い。しかし『マネジメント』から引き出される格言やら概念やらがことごとく凡庸で必然性がない。
緻密なデータ分析を練習に反映させるセイバーメトリクスのような科学性もなく、耳触りのいい言葉によって選手を鼓舞するばかり。いや、それって普通のチームと同じですよね。
しかもマネージャーの前田敦子よりも監督の大泉洋のほうがよっぽど精神的成長を遂げてしまっており、「利発な女子マネージャーが球児を甲子園へ導く」という本作のメインテーマがブレている。
決勝前に前田が部員たちの前でキレ散らかしてその場を去るシーンなどは印象最悪だ。その後、転倒して気絶している最中に幻視したドラッカーとのやり取りを経て球場への帰投を決意するくだりも意味不明だし。前田の存在と程久保高校野球部の進退がいまいち噛み合っていない。
ただ、実際の試合シーンをきちんと描いたことは評価に値する。テレビ中継と異なり簡易スコアを画面上に表示できないという制約の中、巧みなカット割りによって試合の趨勢がスムーズに描き出されていた。
守備中だというのにどデカい声で投手を応援する非常識なスタンドや、9回ウラ二死一塁の状況から四番打者を敬遠策で進塁させるという意味不明な相手校など、ツッコミどころは多いものの、試合シーンの出来栄えには概ね満足できた。演者の運動神経云々については言及するだけ気の毒というものだろう。
それにしたって弱小校が1年足らずの練習で甲子園出場とは恐れ入る。4回戦ののちに準々決勝という新聞記事の描写があったので、彼らの所属する県の規模としては長野や茨城に匹敵する。すげーなドラッカー。