イリュージョニストのレビュー・感想・評価
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【”魔法使いはいない”時代遅れの老手品師と一人の少女の交流を優しく、言葉少なに描いた温かくも切ないアニメーション。】
■1950年、巴里。
昔ながらのマジックを披露する老手品師・タチシェフは、スコットランドの離島を訪れ、村人を相手に芸を披露する。
そんな中、貧しい少女・アリスは彼を「魔法使い」と信じ、タチシェフを追いかけるようになり、都会迄ついて来てしまう。
◆感想
・サイレントかと思う程セリフが少ないが、この作品の中には、老手品師・タチシェフの善性が溢れている。
・彼の時代遅れの手品に魅入られた少女アリスが付いて来ても、彼は追い返そうとはしない。只管にアリスの為に働き、小さなアパートメントでも彼女にベッドを譲り、自分はソファで眠る。
・そして、老手品師は美しく成長するアリスの為に、服を買い、靴を買う。そして彼女に恋人が出来た頃、彼は一人娘あてに”魔法使いはいない”と言うメモを残し、何処かへ去るのである。
<今作は、時代遅れの老手品師が自分を”魔法使い”と思い、慕う一人の少女を想いやる人間の善性溢れる気品溢れるアニメーション映画なのである。>
絵とストーリーが素晴らしい
絵が素晴らしい作品で、会話がとても少ないです。
朝になり夜が来て、また朝になる、という日常を淡々と描いているのですが、日々少しずつ変化していくストーリーも素敵です。
次観るときは大画面で観たいです。
手品師
ガラスの向こうの見せ物の世界は、人を成長させるし、社会的には成功なのだろう。
しかし、人間の本質的に生きていくためには、その世界は生きづらく、愛や友情が飢えていく。
主人公は、人間的なのに職業が見せ物というところで、このテーマが深くなる。さらに手品師であって魔法使いでは無いというのも、見せ物の裏表が最初から分かってる感じで素晴らしい。
作品の雰囲気も落ち着いていて気軽に見れる感じでこのテーマの複雑さはすごい。
本当に切ない一本
どんなに愛しい子供でも、いつかは(自分で自分の家庭を築いて)親の下から巣立って行きます。
むしろ、これから自分の将来を切り開いていく我が子に対して、壮年を経れば、親の我が身は老年に至って衰えて行くばかりなので、かえって親から巣立って行ってもらわなければならない…。
そうなった親から見れば、あとはもう、子供を見守ることしかできないという、その寂しさ。
アリスと別れたタチシェフの心境は、それ以外にはなかったと思います。
最後の最後に、タチシェフとしてなすべきこと(アリスのために当座の…残せるだけのお金を残すこと)も、半端仕事や、慣れない自動車整備工場でのアルバイトで、何とかすることができた訳ですから。
本当の親子ではなかったにしても、タチシェフの心情はそこ以外にはなかったろうと思うと、観終わって、本当に切ない一本になりました。評論子には。
田山花袋「蒲団」との類似性が気になります。
アニメーションのアート面。特に3DCGとカリカチュアライズされた演出は良かったと思います。ただ、話の構造というかプロットが田山花袋の「蒲団」にしか見えませんでした。
あまり類似性の指摘はないみたいですけど、私はまた欧米の日本作品のパクリ?と思ってしまいました。
アートに感心したので点数いれますが、内容は日本の私小説のほうがよほどどろどろした内面を描けていますので、ストーリーには点はいれらくないですね。2点と言いたいところですが、うさぎに免じて2.5にしておきます。
ジャック・タチ!
ぼくの伯父さんですね。
原作がジャック・タチなのだから当たり前か。
日本のあの50作も続いた喜劇映画は、ジャック・タチに対するリスペクトもあるのかもしれない。なんとなく似ていると思った。まぁ、日本の方はたんかを威勢良く切るけど。
腹を抱えて笑えるシーンはなかったけど、普通に時間が流れて、ほのぼのとする。なんとなく、可笑しい。つまり、シャレている。
ジャック・タチの芸風は、スピードが付けば、バスター・キートンが元祖になるかなぁ。チャップリンでは無い。
すみません。
ぼくの伯父さんのレビューでは無かったね。
このアニメは巧妙に計算されたCGアニメだと思う。背景とかキャラクターの一部は手書きかもしれないが、列車や動く背景はCGを使っている。しかし、CG嫌いの僕でも認める事の出来る手書きとCGの融合した素晴らしい作品だと思う。
フィシュアンドチップスを出してきたのは、さすがフランス人と思った。ちなみに、ジャック・タチはフランス人では無い。
手書きアニメーションの素晴らしさ!
近年アニメもCG全盛だが、
やはり手書きアニメーションの素晴らしさ!
を再認識させられた作品。
鉛筆で書いたような味のあるテイスト!
日本のようなリミテッド・アニメーションとは違い
滑らかな動き!(とはいえフル・アニメーションではないが)
ほぼ台詞なしで動きだけで表現。
そしてノスタルジックで切ないストーリー。
最後はしんみりとジーンときました。
ジブリのような万人受けするアニメではないが、
好きな人にはたまらない作品。
イリュージョニストは魔法使いじゃない
1950年代のパリが舞台。
すっかり人気を失った老手品師、タチシェフは劇場を追い出され、スコットランドの離島に流れ着く。
そこで出会った少女、アリスはタチシェフを魔法使いと信じて慕い、エジンバラへ。
彼と行動を共にすることになる。
また、傑作アニメーションを見つけてしまいました。
鉛筆画のようなシャープだけど柔らかい絵のタッチ。
そして、ほぼセリフがないのがかなり印象的な本作。
さらに、タチシェフとアリスは言葉が通じない。
セリフが少ないからこそ、耳が自然や街の環境音に集中したり、細かい絵に目がいく。
煙草の煙や水飛沫、綿毛などなどアニメーションとは思えない、命のあるような動き。
《FREE SCOTLAND》の文字に、この頃からスコットランドの独立問題があったのかとか、アリスだからあの服なのかとか。
静けさのおかげで膨らんでいく想像、考察。
多少分からなかったところもありましたが、あらすじを調べて解決しました。
多くは語らないからこそ、伝わってくるものがあります。
知らない、伝わらないことによる行き違い、悲しみ。
老人期の孤独、哀愁。
時代の移り変わりによる流行り廃り。
(ストーリー的には違いますが、)2人の関係は友情や絆というより、どちらかというと恋愛のようでした。
ラストは失恋映画のような喪失感。
異民族が混在し、常に多様な文化が生まれる、ヨーロッパらしいアニメーションでした。
第83回アカデミー賞(R)長編アニメーション部門ノミネート作品
スコットランド離島のバー、時代遅れの手品師と生き別れた娘の面影を残す貧しい少女アリスとの出会い。
第83回アカデミー賞(R)長編アニメーション部門ノミネート作品
実写をアニメーションに落とし込む技法を好んだ米フライシャー風味の絵面、
極力台詞を排し動作画とBGMにて表現、
渇いた気怠るさがやるせない切なさをも明るい感動に導く、
素晴らしいアニメーション作品です。
アニメーションの教科書
レベルの映画でしたね
正直、多くのクリエイターが教科書にしていいレベルに感じました。
一方で見た目百割、表現、演出が100割で、正直ストーリーは退屈に感じました。
しかしながら、雰囲気、アニメーション、キャラクターなど表現力はとても魅力的で
ショートアニメーション向きのように感じました。
見たい映画というより、ほしい映画
そのように感じました。
初老と少女。
台詞がほとんど無く音楽と手振り身振りで表現された作品。(パントマイムみたいなアニメ)
常に音楽が流れているのでおしゃれな感じを受けた。(シャンソンなど)イギリスの街並も。素敵。
初老(タチシェフ)言葉が少ないが少女(アリス)に注ぐ愛情も心音も優しさに溢れている。
別れる時に゛魔法使いはいない〝が心に沁みる。傘にトレンチコートが印象的。雨もおしゃれに映る。
初老と少女の関係が足ながおじさんみたいだった。
ジャック・タチの娘へ
カードマジック、花を出したりウサギを出したりといったシンプルで古臭い手品師タチシェフ。見た感じは老紳士なのだが、いつでも引退OKといった雰囲気で町から町へと公演の旅を続けていた。パリからロンドン、そしてスコットランドへ。そこの宿でメイドをしていた少女アリスが亡き娘のようにも思えたのだが、去り際に赤い靴を魔法のように差し出したことで、本物の魔法使いだと信じ込み彼についてくる。
大都会では全くウケないのに田舎町では手品も受ける。時代の流れには逆らえない。ビートルズ誕生のちょっと前だから、バンドブームが押し寄せている雰囲気もする。腹話術師や体操3人組なども頑張って生きているのだ。
フランスのコメディアンであるジャック・タチのオリジナル脚本を見事にアニメ化した作品でもあり、劇場に入るとタチの代表作『ぼくの伯父さん』(1958)が上映されていたりする。老人と少女の関係でいえばチャップリンの『ライムライト』(1952)も思い出されますが、引退間近、死期間近である男にとっては過去の恋人なり、娘なりと思いを馳せるものだろう。ラストの汽車の中でのシーンや飼いウサギを野に放つシーンは哀愁たっぷりだ。
同監督の『ベルヴィル・ランデブー』でもタチ風の部分があったし、極端なデフォルメの人たち、トリプレットという三つ子老婆が登場したりと、何かと共通点が多い。小作品ながら何度でも見たくなるアニメでした。
魔法使いはいない…
とても余韻を残す作品。
安野光雅氏の『旅の絵本』の中で展開されるような、味わい深い物語。
老手品師と、押しかけ女房ならぬ押しかけ娘(アリス)の物語。
喜劇役者&監督タチ氏が娘にあてた脚本をアニメ化したもの。
一説によると、ブレイクする前に産まれた、一緒に暮らせなかった娘をイメージしたとも。
そういう意味では、老手品師も娘にイリュージョン(父娘ごっこ)を見せてもらった。
でも、奇跡は起きない。極めて現実…。
愛があふれればあふれるほど、切ない。
この二人の関係を描きながら、
背景として、機械化とマスメディアの波が押し寄せて、その波にのまれてしまった人々の姿も描く。
一つの仕事をプライドを持って続けるにしても、需要と供給の波は容赦なく、人に変革を迫る。
セリフもほとんどなく、けばけばしい音楽もほとんどなく、しっとりとした味わい深い作品。
でも反面、自分の万能感の果てのような場面も見せられて、心がイタイ。
いつか来る引き際、幕引き、そして次の人生。私はどのように迎えて、どのように旅立つのだろう。
老手品師のように、与えた喜び・豊かさを胸に旅立てるのだろうか?
絵がいい
台詞は少ない。しかしアニメならではの表情と動きで、キャラクターの感情が伝わってくる。音楽もノスタルジックな作調とマッチしてとてもいい。どんどん消費され、中2的なろう系や異世界召喚ものに偏向している多くの日本のアニメが幼稚に見える。
ただ、ラストはどうだろう。勝手についてきたとはいえ、自分が知らぬところでデートしてというだけで、女の子をひとり見知らぬ街に置いてけぼりにするのは。お金を置いていくのは自己保全、魔法使いはいないって書き置きも独り善がりでしかないだろう。
台詞が無い(少ない)から良い
フランス制作のアニメーションですが、台詞はほぼ無い。
だから映像だけで感じる作品。その映像が秀逸。
エジンバラの風景が1950年代当時のそのまま(知らねえけど)描かれていて、
街並み、バスや車、汽車とかの繊細な絵はまるで実写。
PIXARとはまた異質の洗練さを感じる。
当時のエンタメ界では、手品というのは時代遅れで、
同じように舞台に上がっていた腹話術師も同様。
上の階の住人は首をくくろうとしていた。
せっかく舞台に出てもピンハネされて、
挙げ句バイト先でお金を無くす、とにかく切ない。
しかし最後の仕事を自分から辞めると言ったのは、
タチシェフのプライドか、手品師の気概か。
このままアリスとは別れるわけだが、
双方にはある意味ハッピーでは無かったか、解釈の問題か。
ただやっぱり映像がね、切ないの一言。
エジンバラの街の明かりが徐々に消えていく様。
途中、腹話術の人形とか、アリスがおねだりした靴屋とか、
最後舞台小屋の明かりも消えていって、という場面は、
「5億点」出てますね。ホント切ない。
今まで触れたことのない異質な映像なのは確かだが、
何かすごいモノを観てしまった気がする。
アメリカ映画界は常にフランスコンプレックスがあると、
町山智浩さんが言ってたが、
アニメでもこれは感じてるだろうなと思った。
前作とは違う叙情的な作品
『ベルヴィル・ランデブー』のシルヴァン・ショメが、フランスの喜劇王ジャック・タチの残した脚本をアニメ化した劇映画。
「ベルヴィル~」とは真逆の、ゆったりとしたテンポで老手品師と少女の姿が叙情的に描いた、切なくも美しい作品。
(日本や米国の)「アニメは苦手」という人に観て欲しい作品。
全32件中、1~20件目を表示