キラー・インサイド・ミー : 映画評論・批評
2011年3月29日更新
2011年4月16日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにてロードショー
サディスティックなC・アフレックとJ・アルバの裸体に注目
「ジェシー・ジェームズの暗殺」の暗殺者ロバート・フォードをじくじくとした苛立たせる繊細な卑劣で演じきったケイシー・アフレックが、その美しい表情とくぐもった台詞回しはそのままに、殺人プレイを繰り広げていくのが「キラー・インサイド・ミー」である。今回の役名ルー・フォードというのもなにやら因縁めく。
原作は「ゲッタウェイ」や「グリフスターズ」といったヒット作の原作者ジム・トンプソンの「おれの中の殺し屋」(扶桑社ミステリー文庫)だ。忠実すぎるぐらい忠実な映画化。男どもへの殺人はロジカルといっていい復讐だが、女性への殺意にサディスティックな狂気がヌルッとへばりついている。
原作を読み捨てペーパーバックのクズ小説群から救い出したスタンリー・キューブリックは「現金に体を張れ」の脚本家としてトンプスンを招いた。トンプソンの評価確定にキューブリックが果たした役割は大きいが、「ルナティック・アット・ラージ」の原稿紛失という失態も演じた(最近、発見され映画化企画情報も流れたが、現在は立ち消え、これは観たい)。
トンプソン・ルートでこの作品にたどり着く観客もいれば、もちろんアフレック流れもいるだろうし、ジェシカ・アルバ愛から期待する向きもあるだろう。ケイト・ハドソン……最近はいないか。アルバの裸体に関して言えば、冷静な英国人マイケル・ウィンターボトムもさすがに心が動いたようで、ピンナップ・スチールすれすれのナイーブなショットを映像の流れの中にしっかりと組み込んでいる。
(滝本誠)