英国王のスピーチのレビュー・感想・評価
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映画としての面白さが・・・
コリン・ファースの熱演は分かるが、映画自体としては面白みに欠ける。家族愛も描きたかったのだろうが、ヘレナ・ボナム=カーターにあまり感じなかった。アカデミー作品賞と主演男優賞は決まりだろう(実話が強いので)。主演女優賞はナタリー・ポートマンに獲って欲しい。
指揮者とたった一人の楽団員
私は吃音にこそ悩まされたことはありませんが、過去に弁論大会で失敗した事があり、それ以来人前でしゃべるのはるのは苦手になりました。本編に登場するライオネルのような存在がいればと思うと・・・。何だか悲しい気持ちになってきます。
1925年から1939年に掛けてこの物語はロンドンで繰り広げられるのですが、初めは王子だった主人公のジョージは吃音に悩まされているせいで大勢の前で恥をかいてしまいます。その後妻エリザベスがこの手の手の専門家でスピーチセラピストのライオネルに助けを求めます。初めはライオネルから心を閉ざしていたジョージでしたが、次第に彼の教えに従うようになり、彼は自身の病気を治そうと奮闘します。
注目はなんと言ってもコリン ファースとジェフリー ラッシュの演技合戦。特にファースは完全にジョージというキャラクターを自分のものにしていて完璧な演技を魅せています。一方のライオネルを演じるジェフリー ラッシュも負けてはいません。繊細で優しいおじさんと言った印象を持たせる演技でこちらは完璧すぎる演技を発揮していると思います。そして、何と言ってもクライマックスのスピーチが見所です。ここで二人の繊細な演技がぶつかり合いまるで指揮者とたった一人の楽団員のような関係へと発展。見ごたえ十分です。それから夫を献身的に支えるヘレナ ボトム カーターも良い味を出していると思います。
この物語に大きな弱点というか欠点はないのですが、もう少しライオネル側の苦悩をもっと観たかったというのがあります。たとえて言うなら「プラダを着た悪魔」のメリル ストリープのような一見完璧に観えて実は・・・みたいなそんなものがほしかった気がします。
しかし、これはなかなかの傑作です。二人の演技が見事なハーモニーを奏でる素晴らしい一本だと私は思います。
主人公の背負ってきた心の傷に迫っていく、滋味深い深い大人の映画といった趣。音楽が素晴らしい。
アカデミー作品賞筆頭候補に相応しい作品でした。派手なアクションとか対人関係の葛藤がないけれど、静かに滋味深く、主人公の背負ってきた心の傷に迫っていく、大人の映画といった趣でしょうか。
だからといって、重く退屈なところはなく、イギリス映画だけに随所にウィットを効かした洒脱なシーンが散りばめられました。試写会でも、ごく普通の「おばちゃん」がゲラゲラと笑っているレベル(^_^;)なんです。
可笑しさの源泉は、まるで『釣りバカ日記』を地で行く、王様と平民のスピーチ矯正の専門家とが対等に渡り合う滑稽さなんですね。これを日本でやったら不敬罪ですよ。天皇陛下を○○ちゃんと呼び合い、吃音指導では平気で叱り飛ばすのですから。こうした作品が成立するのも、イギリス人のシャレっけを理解する粋な心意気だからでしょうか。
さて、冒頭からピアノのメインテーマがとても心地良く奏でます。それはまるで、傷心の主人公を優しく包み込むような音色なんですね。
すると1925年の大英帝国博覧会の閉会式で、スピーチを控えて不安げなジョージが登場します。案の定スピーチは、吃音によりほとんど語れなく失敗に終わります。
けれども父王は、ジョージの吃音を認めず、様々な式典のスピーチを容赦なく命じるのです。妻のエリザベスは、見かねて片っ端から言語聴覚士をジョージに引き合わせるものの、かえってそれが逆効果に。だって、口の中にラムネ玉を入れるだけ押し込んで、普通にしゃべれなんて指導は、通常の人だって無理ですよ。ジョージが怒るのも無理はないのです。
そこでスピーチ矯正の専門家・ライオネルの登場となるのです。ライオネルが自国の皇太子にため口を浴びせるように、地位の上下をなくして、一介の友人として接したのは、決して不遜な気持ちではありませんでした。ジョージをごく普通の悩める人間として、その悩みに触れるために、身分という殻をまず脱ぎさせようしたのですね。
その真意には、生まれつきの欠点など無い、あるとしたら心が傷ついて、病んでいるだけだという同悲同苦の優しい気持ちと、必ず直るという圧倒的な善念が込められていました。
けれども、ジョージは初めての指導で激怒して帰ってしまいます。だって、出来ないと分かっているのに、いきなりシェークスピアの『ハムレット』の台詞を朗読を強要されて、おまけに聞きたくもないその声をレコードにまで録られてしまっては、赤っ恥もいいところです。ジョージは、自分の酷い声を録音されてしまったと思い込み、治療の効果がないことに腹を立てて帰ってしまったのです。しかし、帰宅後に録音されたそのレコードを聴いてみると、ちゃんと朗読できているではありませんか。ライオネルは見抜いていたのでした。外部の視線や自身のコンプレックスや恐怖心をシャットアウトする環境さえ作れば、ジョージは普通にしゃべることができると。驚いたジョージは、一端は指導を断ったライオネルの元に、「無言」で押しかけるのでした。
しかし、父王が死去し、兄エドワードが王位を継承したものの、「発展家」の兄は、ショージの忠告も聞かず離婚歴のあるウォリスとの恋を選び王位を去ってしまいます。国王は新教の教主を兼ねるため、離婚歴のある女性との結婚はタブーだったのです。
国王への即位をためらうジョージに、ライオネルは即位の決断を迫ります。いくら対等の約束をした仲でも、ライオネルの立場をわきまえない発言に、ジョージは怒ります。
但しその怒りは理性で抑えられて、ただもう来ないでくれと、静かにライオネルに告げるだけでした。
ふたりが別れるシーンは、とても映画的な印象に残るものでした。寄り添って歩いていたはずのふたりなのに、突如ライオネルは歩みを止めて、その距離が次第に開いていくのです。その場で立ち止まってしまったライオネルの後悔の想いが滲み出てくるかのようなシーンでした。
王位継承評議会のスピーチで大失敗したジョージは、恥も外聞もなくライオネルの元に訪ね指導を請います。ここでのやりとりで、初めてお互いの過去が語られます。
ジョージはライオネルが予想したとおり、年少期から父王のしつけが厳しく、すっかり萎縮してしまっていたのでした。ライオネルが語るには、左利きを無理矢理に矯正された子供は、吃音になりやすいのだそうです。
逆にジョージが、なぜ医者でもないのにまねごとをしているのかと、ライオネルの過去を聞き出そうとします。けれどもライオネルは一度も治療するという意識は持ったことがなかったのでした。戦争から戻ってきた友人が戦争神経症になり、言語障害に陥ってしまったのを、ライオネルは役者としての経験を活かして、発声指導を手伝っただけだったのです。でも、その中でライオネルは見つけるのです。どんな神経症の重症者でも、心の傷に耳を傾け、語らせてあげれば回復していくことを。そんな経験から、ライオネルはジョージが自らの心の痛みを語り出すのをじっと待ち続けていたのですね。なんて深い優しさなんだろうと思いました。だから医師の資格を持つ多くの言語聴覚士が尽くジョージの治療に失敗するなかで、唯一ライオネルの指導だけが有効だったのです。
二人の絆が深まる感動的なシーンでした。
ジョージが王位に就いたころ、ナチスと友好路線だったボールドウィン内閣に代わり主戦派のチャーチルが首相に就任。いよいよナチス・ドイツへ戦線布告します。そして、国民へ団結呼びかけるため、全軍の長たるジョージは、ラジオを通じて戦いの正義を呼びかけることになったのです。
この本作最大のハイライトは、ベートーベンの交響曲7番第2楽章が用いられ、ジョージの緊張と決意を暗示するかのように、荘厳でドラマチックに描かれていきます。
そしてジョージのそばに寄りそう、ライオネルの指導ぶりが実に分かりやすくて、言葉に詰まりそうになるジョージを的確に支えていたのです。
ジョージ役のコリン・ファースは、吃音の発声をパーフェクトに演じるばかりか、彼が背負い続けてきた幼年期の心のトラウマまで、見事に表現しています。これはもうアカデミー賞主演男優賞ものの演技でしょう。
またライオネルを演じたジェフリー・ラッシュの、表面では突き放しつつも、全てを飲み込んでいるかのような包容力を見せる、奥の深い演技を見せてくれました。
全編を通じて、本作から伝わってくるメッセージとして、まず、自分だけに思えてしまう欠点やコンプレックスは、自分ばかりではないこと。みんな同じに悩んでいるのだということです。国王陛下ですら、人並みのことで悩んでいたのですから。そして、その欠点は、自らを愛することができて自信がつけば克服出来るのだということです。けれども、度重なる失敗の蓄積の結果、自己否定の思いに打ち負かされている人も少なくないでしょう。
そんな時は、ライオネルのような人生を心から語り合える「法友」を持つことでしょう。単なる友人ではダメです。自分が生きてきた軌跡を打ち明け、これからの道のりを相談し合えるような関係の人と出会えれば、何とか打開する展望が見えてくるのではないでしょうか。そういうかけがえのない関係の友を得ることが、いかに素晴らしいことか、示唆に富む作品でした。
☆アカデミー賞に確定だと思います☆
試写会でみました。
前評判通りの、本年度最高傑作になると思います。
英国王室を舞台にしているので、
難しいストーリーかと思いきや、
笑いありのエンタテイメントにしあがっています。
メインの俳優3人の演技、英国の景色・映像、笑い、家族愛、、、
どの観点からも素晴らしかったです。
ラストのスピーチは圧巻です。
もう一度、何度も観たい作品に出合いました。
コリンファース アカデミー主演男優賞か
現在 イギリスとオーストラリアの国家元首である、エリザベス女王の父親にあたるジョージ6世のお話だ。
この映画、ゴールデングローブ賞で、アルバート ジョージ6世を演じたコリン ファースが 主演男優賞を獲得した。アカデミー賞では 作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞にノミネイトされている。
監督:トム ホッカー 37歳の新鋭の監督
キャスト
アルバート ジョージ6世:コリン ファース
言語療法士:ジェフリー ラッシュ
エドワード8世:ガイ ピアース(アルバートの兄)
アルバートの妻:ヘレナ ボナム カーター
シンプソン夫人:エバ ベスト
ストーリーは
1936年、英国王ジョージ5世がに亡くなった。次期国王は当然長男の プリンス エドワード8世(ガイ ピアース)が 継承するはずだった。王政学を学び ジョージ5世を支え、次期家長として活躍し 陸軍に従事し 国民から慕われていた。にも関わらず 彼は離婚暦のあるアメリカ女性 シンプソン夫人に夢中だった。英国議会も大英教会も 国王が離婚暦のある平民の女性と結婚することは 英国憲法違反であることを指摘する。国王の座をとるか、平民となって離婚した女性と一緒になるか 選択を迫られて、プリンス エドワードは シンプソン夫人を取る。「シンプソン夫人の支えなしには 国民のための いかなる執務も行うことは出来ない」という歴史的で感動的なスピーチを残して 彼は去る。
にわかに脚光をあびることになったのは 次男のプリンス アルバート(コリン ファース)だった。彼は 海軍出身。華やかで社交的で国民に人気があったエドワードに比べて 正反対の性格。シャイで吃音障害を持っていた。吃音を治すべく 今までに何人もの専門医師や言語療法士の治療を受けていたが 効果がない。生まれもっての短気で激しやすい性格もあって、正常な会話ができないことに困りきっていたところだった。
心配した妻 エリザベスは ドクターライオネル ロークという新しい言語療法士に会いに行く。オーストラリア パース出身の変わり者。彼は プリンスの妻に向かって 治療してもらいたかったら 自分の家の診療室に来るように、と言って、プリンスを呼びつける。古いロークの家には 極寒のロンドンにもかかわらず充分な暖房さえない。そんな彼の自宅で治療が始まった。発声練習から歌ったり踊ったり ワルツを踊りながらシェイクスピアを読む。意表をつく独特の治療法に、幾度も幾度も アルバートは 怒りを爆発させ 治療を中止させる。
しかし、そんなことを繰り返すうち、アルバートは次第に 今まで誰にも打ち明けられなかった胸のうちを ロークに聞いてもらうことができるようになる。序序に、二人の間に友情が芽生えてくる。
時に、ナチスドイツがポーランドを始めとするヨーロッパで侵略を進める。フランスに次いで 英国も参戦せざるを得ない。英国の誇りをもって開戦するに当たって、国王は国民に向かって スピーチをする。歴史に残る名スピーチだ。アルバートは ロークを伴って放送室に入って マイクロフォンに向かう。何度も 詰まりそうになりながら オークの励ましのもとに スピーチを最後まで 声高らかに威厳をもって読み上げる。
というお話。
とても良い映画だ。
どんなに吃音障害をもつことが苦しいか よくわかった。映画を観ている人は アルバートと一緒になって 理路整然としている自分の考えを 伝えることができない苦しみを味わう。言葉が出てこない。うやうやしく待ち構える人々や、議会や教会の官僚達の前に立って 口を開く瞬間の緊張感。失敗に失敗を繰り返し 自己嫌悪に身をこがし、こみ上げる怒りをぶつける相手もいない。立場が立場なだけに どもって言葉が出てこなくても 笑う人はいない。人々はただ かしこまって次の言葉を待っているだけだ。それが本人には 余計なプレッシャーになってますます言葉が出てこない。家に帰れば 二人の幼い娘達が待っている。愉快なお話を作って話して聞かせる ふつうの父親だ。父親が言葉につまれば 娘達は幼いながらも 根気よく次の言葉を待っていてくれる。それが またつらい。
コリン ファースの いかにも外見からして誠実でまじめな姿が 吃音障害に苦しむ国王の役に適役だ。今年のアカデミー主演男優賞を獲るだろう。とても良い役者だ。
対する 人を食ったようなジェフリー ラッシュの名演技、、こればかりは他の役者にまねができない。この映画で ロークがシェイクスピアの「ヘンリー4世」を 舞台のオーデイションで演じてみせるシーンがある。さすがにうまい。ゾクゾクするほどだ。何年か前、彼は 映画「シャイン」で精神分裂症のピアニストを演じてアカデミー主演男優賞を獲った。
英国教会が どこの馬の骨かわからないロークを退けて 権威ある専門の言語療法士をつけるように圧力をかけたとき、アルバートは ロークは自分にとって個人的に特別必要な人なので やめさせるわけにはいかない と擁護する。そのとき初めて ロークは自分が 医者でも専門の言語療法士でもない。パースからきた役者にすぎないと言う。かれは 役者として発声訓練をしているうちに 戦争から帰ってきて 体や心に傷を受けた兵士達が 言葉を失っているのを見て それらの人々を治療してきた。経験の多様さでは専門の言語療法士よりも自信を持っている。そんなロークの告白を 驚きもせず聴くアルバート。二人は すでに分かちがたい固い友情で結びついていたのだ。名優どうしの名場面だ。
アルバートが兄エドワードのむかって どうして王位を捨てるのか 問い詰めた時 残酷にもエドワードがアルバートの口調を真似して からかって 立ち去る場面がある。温厚で人格者だという評判のエドワードだが、兄は いつも強い立場だから、からかわれて こき下ろされてつらい思いをする弟のつらい立場には理解が及ばない。強いものは常に弱いものに対して 無自覚だ。
アルバートの吃音障害は 左利きを 教育係に厳しく更正させられたことが契機だが、年上の兄に 大事な玩具をとりあげられたりしたトラウマも要因になっている。何気ない兄弟間のやりとりで内気な年少者の方が傷を負う。年下にしか わからないつらさだ。
妻エリザベスのヘレナ ボナム カーターも良い役者だ。「アリスのワンダーランド」でスペードの女王をやったり「スウィートチャーリー」で 人肉パイを作る悪魔のような女を演じた。今回は 出過ぎず、語り過ぎず ただ夫を支える妻の役が良かった。夫とともに傷つき 共に不安に慄き、歓びを共にする、ひかえめだが なくてはならない役を よく演じていた。役作りのために 歴史学者に会ったり 古い英国のしきたりなど、すごく勉強したそうだ。
それと、子役のふたりの娘達。長女のエリザベス(いまのクイーン エリザベス)役の子供の利発そうな姿が ひときわ目立っていた。
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