「あなたは大勢の人前でスピーチした経験はあるだろうか?」英国王のスピーチ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
あなたは大勢の人前でスピーチした経験はあるだろうか?
あなたは人前でスピーチをした経験はあるだろうか?
数百人のお歴々を大広間に集めスポットライトを浴びて壇上に立つとき、どれだけ足が震えるものか、緊張で手が震えるものか
最初の第一声を放つときの不安
たかが数百人のことでこれだ
英連邦数億の国民全てに生放送でスピーチをする
しかもその話す内容は国家国民の運命、文字通りの生死を左右するものだ
想像を絶する
考えるだけでも空恐ろしいことだ
これをただその王族に生まれたからという理由でこなさなければならないのだ
本人が望んでいなく、その立場になることはないと思っていたにも関わらず容赦なく強制させられるのだ
しかもそのスピーチの結果に無限の責任を持たされるのだ
並みの人間にできることでは到底ない
あなたにそれができるだろうか?
人の上に立つ者は優れたコミュニケーターでなければならない
集団を一つにまとめ、前を向かせ、一つの方向に向かわせる
人を納得させる理屈や理論も必要だ
原稿の構成、言葉づかい、単語の選び方も大事だ
しかしもっと大事なのはそれを伝える話し方、声のトーン、そういったところに話者の人格が声に乗るということなのだ
その声が聴衆の耳ではなく、頭でもなく、胸と腹に響いているかなのだ
決して流暢である必要はないのだ
吃りを克服する物語というのはテーマではない
本作の本当に伝えたいテーマはそこなのだ
国王がマイクに向かって、ゆっくりと緊張しながら話始める
原稿をたどたどしく読み進む内に、その原稿に書かれてある文言の言葉が自己の意思と共振し始め、力を持ち始め、人格をまといだす
そして滑らかに走り出す
その声は自信に満ちた英連邦数億の民を率いる国王の声そのものだ
このシーンの演技は見事なものだ
アカデミー賞の作品賞や各部門賞を獲得したのも当然だ
21世紀は国民が分断された時代となった
今こそ言葉の持つ力が求められている
人の上に立つ人間には優れたコミュニケーターでなければならないのだ