劇場公開日 2010年12月18日

  • 予告編を見る

モンガに散る : 特集

2010年12月6日更新

固い絆で結ばれながらも、やがて黒社会の抗争に飲み込まれていく5人の若者たち──男泣きする青春ストーリーを疾走感とみずみずしさいっぱいに描き、外国映画が席巻する台湾映画界にさっそうと現れて大ヒットを決めた「モンガに散る」。アジア映画の歴史を変える新たな傑作、アカデミー賞外国語映画賞・台湾代表にも選ばれた同作の魅力に迫る。

友情と暴力と青春と──エネルギーと甘酸っぱさが見逃せない
台湾発“アジア映画を変える”新たな傑作が登場!

アカデミー賞外国語映画賞・台湾代表にも選ばれた、アジア映画の新たな傑作
アカデミー賞外国語映画賞・台湾代表にも選ばれた、アジア映画の新たな傑作

■最もエネルギッシュな時代と場所で繰り広げられる青春群像

5人の若者たちの青春が、疾走感と みずみずしさいっぱいに描かれていく
5人の若者たちの青春が、疾走感と みずみずしさいっぱいに描かれていく

数年前の日本の状況と同じように、ハリウッドや香港=中国合作による娯楽超大作が興行ランキングで幅を利かせていた台湾に、2010年、まさに救世主のように1本の映画が登場した。その映画のタイトルは「モンガに散る」。80年代のモンガ=艋舺(萬華)──台北で最も古くから栄えていた下町であり、商業の中心地としても繁栄を極めていた歓楽街──を舞台に、黒社会に足を踏み入れながらも固い絆で結ばれていく5人の若者たちの姿をエネルギッシュに描いた同作は、躍動感あふれるアクションとみずみずしく感動的なドラマがすぐさま口コミで広がり、本年度ダントツの興行成績ナンバーワン作品となったのはもちろん、台湾映画史上第2位の興行収入を達成、そしてついには、アカデミー賞外国語映画賞の台湾代表にまで選出されたのだ。

物語は、1986年のモンガに高校生“モスキート”が転校してくるところからはじまる。校内でつけられた言いがかりをきっかけに、彼はモンガ一体を仕切る組織・廟口(ヨウカウ)組のひとり息子“ドラゴン”と、ドラゴンの幼なじみで切れ者の“モンク”に気に入られ、グループの5人目として迎えられる。極道の世界に戸惑いながらも、ケンカに明け暮れ、娼婦シャオニンと純粋な恋を育み、やがてドラゴンたちの義兄弟として固い絆で結ばれていくモスキート。駆け抜けるように青春を謳歌する彼らの前に、やがて、街の利権を狙う新たな勢力が台頭し、裏切りと欲望に満ちた大きな抗争が立ちはだかることになる……。

ホウ・シャオシェン監督作に出演し“台湾ニューウェイブの代名詞的子役”とも言われたニウ・チェンザーが、自らメガホンを手に、単なる娯楽作でも作家性あふれる芸術作品でもない、エンターテインメントとアートの絶妙なバランスで10代の若者たちの危うくも純粋な青春群像を描き出す。

いま最も勢いがあるといわれる台湾映画界から、最もエネルギーにあふれていた時代と場所を描いた作品が生まれた。「モンガに散る」、見逃せない1本だ。

■エンタメ性とドラマ性を見事に融合させたニウ・チェンザー監督とは?

ニウ・チェンザー監督が、 固い絆のドラマと熱いアクションを両立
ニウ・チェンザー監督が、 固い絆のドラマと熱いアクションを両立

本作でメガホンをとったニウ・チェンザー監督は、ホウ・シャオシェン監督の「風櫃(フンクイ)の少年」「ミレニアム・マンボ」ほかに出演した“台湾ニューウェイブ”の代名詞的存在だった子役出身。その後TV界に進み、監督、プロデューサーとして、F4の「部屋においでよ~Come to My Place~」や「花ざかりの君たちへ~花様少年少女~」等の大ヒットドラマを送り出し、華流ドラマブームの立役者ともなっている。ホウ・シャオシェンの下で学んだ、観る者の心を揺さぶる台湾ニューウェイブの映画術、そしてTVドラマ界で身に付けた大衆を魅了するエンタメ性が、チェンザー監督が誇る才能。「ビバ!監督人生!!」以来2本目となる「モンガに散る」で、それは見事な融合を果たしているといえるだろう。

主演のイーサン・ルアン(モンク役)、マーク・チャオ(モスキート役)も、そのドラマ人脈。映画界のネームバリューに頼らず、「ハートに命中100%」(イーサン主演)、「ブラック&ホワイト」(マーク主演)でブレイクを果たした最も旬な若手実力派2人、自らがTV界で育て上げた才能の起用にこだわったというのも成功している。

アクション監督には「オールド・ボーイ」のヤン・キルヨンを起用。従来の台湾映画とは異なったテイストのアクション(冒頭の大群衆シーンは圧巻!)も注目だ。

■台湾発“アジア映画を変える”新たな1本

エネルギーにあふれる「モンガに散る」も “アジア映画を変える”1本
エネルギーにあふれる「モンガに散る」も “アジア映画を変える”1本

香港、韓国、中国、インド、そして台湾。アジアを皮切りにハリウッドやヨーロッパに進出、映画シーンの最前線で活躍する才能は数多い。そんな彼らは、アジア時代に必ずエポック・メイキングとなる作品を生み出している。いわば、それまでの“アジア映画の歴史を変える”1本だ。下記では、ジョン・ウー、ウォン・カーウァイが若く熱かったころ、そしてパク・チャヌクが世界的な舞台で評価された、そんな“アジア映画を変えた”作品をまとめてみた。

熱く、みずみずしく、そしてエネルギーにあふれた「モンガに散る」もまた、これらに連なる作品となるに違いない。


画像5

インタビュー

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

「モンガに散る」の作品トップへ