劇場公開日 2010年12月18日

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モンガに散る : インタビュー

2010年12月6日更新

1980年代の台北西部の歓楽街・モンガを舞台に、裏社会へと足を踏み入れた若者たちの運命を描いた青春群像劇「モンガに散る」。台湾では本年度最高の観客動員を記録した大ヒット作のプロモーションのため、主人公のひとり、モンクを演じたイーサン・ルアンが来日。人気テレビドラマ「ハートに命中!100%」と本作でブレイクし、一躍台湾映画界の未来を担う若手スターとなったルアンが、本作完成までの道のりを振り返った。(取材・文:編集部)

イーサン・ルアン インタビュー
「この映画では、拳に感情が込もっていることがよく分かると思います」

映画のプロモーションでは初来日を果たしたイーサン・ルアン
映画のプロモーションでは初来日を果たしたイーサン・ルアン

もともとは、台湾のスーパースター、ジェイ・チョウニウ・チェンザー監督とともに自らの製作・主演作として企画していた本作。だが当時(2004年)の台湾は不景気のさなかで、途中まで製作が進んだが結果的には流れてしまった。そのときに、「どんな役でもいいから」とわらにもすがる思いで、ニウ監督が開いたオーディションを受けていたのがルアンだった。

「当時、僕はまだ本当に駆け出しの俳優でしたが、ニウ監督のファンだったので、自分から売り込みに行きました。でも、オーディションには落ちて、映画も製作中止になった。その後2~3年の間にニウ監督とはドラマで一緒に仕事をするようになっていたんですが、ある日突然、『あのときの映画覚えてるか?』と言われたんです。僕はもちろん覚えていたので、『絶対出ます!』って即答しましたよ(笑)」

仲間内では一番の切れ者、モンク
仲間内では一番の切れ者、モンク

ルアンが本作で演じたのは、転校生のモスキートを不良仲間に招き入れるミステリアスな青年モンク。暗い過去を持ちながらも、不良グループのボス・ドラゴンを支える右腕として働く影のリーダー的存在だ。物語は、不良高校生から極道になる義兄弟のモスキート、モンク、ドラゴンを中心に展開し、当初ジェイ・チョウのために書かれたひとりの男の挫折を描いた物語とは全く異なる群像ドラマとして生まれ変わった。

「実は最初に僕が演じる予定だったのはドラゴン役でした。それはメインキャラクターのなかでドラゴンが一番演じやすいのではないかというニウ監督の配慮だったのですが、少し経つと、僕が笑わないときは少し怖い雰囲気があるということで、モンクの役を振ってきたんです。正直、自分としては3人のなかでは一番複雑で難しい役だと思っていたんですが、『お前ならできる』と監督から励まされて、モンク役を演じることになりました」

高校時代は、役どころのモンクに遠からず近からずで、それなりにケンカの場数も踏んでいたというが、映画のアクションとなると話は別。これまでの台湾映画にはないアクション映画にするという信念からニウ監督は、韓国から「オールド・ボーイ」などで知られるアクション演出家ヤン・キルヨンを招聘(しょうへい)。ルアンは、ヤンから徹底的にアクション映画用の身のこなし方をたたき込まれた。

義兄弟たちの絆も、やがては……
義兄弟たちの絆も、やがては……

ニウ監督からは『お前、昔、ケンカばっかりやってたって言っていたくせに、全然動きができていないじゃないか!』って怒られましたよ(笑)。やっぱり、自分が思いつきででたらめに殴っているのと、ヤン先生に教わって殴るのとでは見た目が全然違うんですよね。それに自己流のでたらめな殴り方だと自分も相手も怪我してしまう。パンチの出し方、蹴り方、手足の動きを教わった通りにやってみると、見た目もいいし、怪我もしない。あと、今までの台湾映画のアクションは、動きを見せることばかりに注意がいっていて、気持ちが入ってなかったけど、この映画では、拳に感情が込もっていることがよく分かると思います」

出演した映画の数は本作で6本目。今でこそ仕事を楽しむ余裕が出てきたが、モデルから俳優に転向した当初はかなり辛かったそうだ。

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「俳優として働き始めたころは、毎日寝られなかったですね。撮影現場にいると何もしていないのに疲れてしまって、1日がとても長く感じるという時期もありました。でも今では完全に慣れて、調子のいいときになると、空気の中のホコリまでスローモーションで見えるときもあります(笑)。そういうときは気分爽快です」

子供のころから映画を見るのは大好きだったと語るルアン。だが、80年代に名匠ホウ・シャオシェンの映画に子役として出演し、今では映画作家となったニウのように俳優兼監督になることはまったく考えていないという。

ニウ監督とは性格が似ていて、追求する部分に関しても共通するところはあるんですけど、僕は彼みたいな出たがりでもない(笑)。それに僕は俳優業以外にもいろいろなことに興味があって、ニウさんみたく映画がすべてというわけではないんです。だいたい、僕には成功するかどうかも分からない映画に全財産をつぎ込むなんていう度胸はないですから(笑)。今回はヒットしたから良かったけど、もし興行的に失敗していたら、監督はいまごろどこにいるか分かりませんよね。監督業なんて、僕には絶対無理。そういった意味で、ニウさんのことはとても尊敬していますよ」

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