「人生の機微を感じ、味わうことができる人間になりたい そう思える映画だと思います」阪急電車 片道15分の奇跡 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
人生の機微を感じ、味わうことができる人間になりたい そう思える映画だと思います
年の瀬のお休みモードに相応しい、心が休まる映画でした
阪急電車は関西の大手私鉄
関東の私鉄と比較するなら東急電鉄のイメージです
かって両方の沿線に住んだことがあります
特に大阪梅田から神戸三宮を結ぶ神戸線は、東急東横線と沿線や車中の雰囲気がとても似ています
ちょっと山の手の感じ
実際のところ庶民的なんですが、あまり下品な下世話な土地のイメージはないのです
すこし奥にはお屋敷までいかなくても、良い感じの住宅が並んでいます
本作の舞台となる今津線というのは、その神戸線の大阪と神戸のちょうど真ん中辺りの西宮北口駅に接続する支線です
東急で例えるなら、東急大井町線の二子玉川駅と大岡山駅の間の区間のようなところです
所要時間もどちらもだいたい15分ほどで、沿線の雰囲気がとても似ています
終点の西宮北口は、大きなショッピングセンターもあり二子玉川と似ています
沿線の雰囲気も九品仏駅の駅前なんて、まるで阪急今津線の駅前と同じ空気感があります
梅田や渋谷のようなターミナルに直接でる本線ではないので、空気がのんびりしています
人々の暮らしや生活感がそのまま車内にあるのです
阪神今津線ってそんなところです
因みに海の見えるシーンは、神戸のハーバーランドです
横浜でいえば、みなとみらい辺りのイメージのところです
阪神間のデートスポットのメッカです
本作は、いくつかのエピソードが独立しているオムニバス形式の映画ではありません
いくつかのエピソードが互いに入り混じりながら、同時に進行したり、先に終わるお話や、途中から始まるお話が、電車の進行と合わせて展開され、別々のエピソードの登場人物が絡みあい始めます
電車が宝塚駅から西宮北口駅に向けて各駅停車しながら物語が進行していく趣向です
前半が往路で、それぞれのエピソードの発端と登場人物の紹介になります
後半は復路として、今度は西宮北口駅から宝塚駅に向けて各駅停車で進行しながら、各エピソードが完結していくのです
みんなそれぞれの暮らしがあって、悩み事を抱えていて、同じ電車に揺られています
ローカルな支線ですから、同じ時間、同じ車両なら、車内の見かける顔もだいたいいつも同じです
でも、その人々の顔を見知っているからといっても、その人の人生や悩みなんて伺い知ることなんてありません
なんてことのない、普通の人の普通の暮らし
それでも本人に取っては、とっても苦しい悩みをかかえて同じ電車に揺られているかもしれないのです
人生の機微
それはいろいろな経験が積み重なって始めて、分かることなのだと思います
人との出会い、別れ、衝突、失敗
いろんなことがあるものです
実際には、こんな物語なんか起こるわけ有りません
それでも袖触れ合うも何かの縁です
何かのきっかけで、この物語のようなことも起こるのかも知れません
人生の機微を感じ、味わうことができる人間になりたい
そう思える映画だと思います
物語は晩秋から年末にかけて始まり、ラストシーンは明るく暖かい陽光が降り注ぐ春で締めくくられます
観終えた時、私達の心にもまた暖かい春が訪れているのです
良い映画に出逢えた幸せを感じました