国家代表!? : インタビュー
“K点越え”で国をも動かした「国家代表!?」の先輩・後輩コンビ
人生の負け組たちがスキー・ジャンプで世界を目指す姿を描き、韓国で観客動員860万人を記録した青春エンタテインメント「国家代表!?」。大ヒットがきっかけで支援金が集まり、念願の実業団チームまで結成されるなど、1本の映画が国まで変えてしまう“ウルトラC”をキメた同作への思いを、主演のハ・ジョンウとキム・ヨンファ監督が語った。
ハ・ジョンウと言えば、「チェイサー」(2008)では背筋も凍る猟奇殺人鬼、妻夫木聡と共演した「ノーボーイズ,ノークライ」(09)では一転して人間くさいチンピラと、作品ごとに異なる表情を見せてきた“憑依(ひょうい)型”俳優。今回は、コーチの口車に乗せられ、チーム主将に仕立て上げられたボブをコミカルに演じ、新たな一面を見せている。
役づくりにも相当時間をかけたようで、「ボブは自分をアメリカへ里子に出した母への思いや、アメリカ人にも韓国人にもなれないアイデンティティに葛藤(かっとう)している男。二面性をもったキャラクターでもあるので、映画の中では描かれない彼の過去や成長過程をどう見せるかも大切にしたくて、似たようなドキュメンタリーの資料も参考にしました」。
一方、キム・ヨンファ監督は「オー!ブラザーズ」(03)や「カンナさん大成功です!」(06)を手掛け、本作発表後、韓国2大映画賞となる大鐘賞と青龍賞で、ポン・ジュノ監督やパク・チャヌク監督をおさえて監督賞を受賞した。
まさに韓国映画界を代表する顔となったが、自身3作目の主演にハ・ジョンウを起用した理由について「彼は大学の後輩にあたるんですが、これまであまり面倒を見てあげられなかった。でもジョンウの出演作を見て、自分の力で立派に俳優として成長していたのでうれしかったですね。『国家代表!?』は若くて勢いのある作品にしたかったので、ぜひ彼に出てもらおうと思いました」。ちなみに、ヨンファ監督がジョンウを起用した理由のひとつに「ギャラが安いからかな(笑)」と冗談を言うと、すかさずジョンウが「確かにそうかもしれませんね」とおどけるなど2人の息もぴったりだ。
ボブをはじめ、落ちこぼれジャンパーたちは、さまざまな個人的事情を背負いながら、オリンピックを目指す。そこには、金メダルをとれば兵役免除といった韓国の“お国柄”も反映されている。「確かに韓国の国家代表の話なので、外国の観客が見たときに違和感を覚えるかもしれないという不安はありましたね。でもそれはあくまで表向きの話。この映画には“人間”、そして“人生”が描かれています。喜びや苦しみ……どんな国の人でも共感できる要素がたくさん詰まっている」と胸を張る。
ハ・ジョンウもこう付け加える。「この物語はスキー・ジャンプをしたことがない人たちが集まって、国家代表にまでのぼりつめる話。そういった意味では、誰もが国家代表になれるということ。きっと日本のみなさんにも楽しんでもらえるはずです」