劇場公開日 2011年12月10日

源氏物語 千年の謎 : インタビュー

2011年12月9日更新
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さらに、源氏への思いを抑えきれなくなる過程での、メイクの多様さも強く印象に残る。鏡で見た自分の顔が、思いつめたあまり悲壮感さえ漂わせる壮絶ものになっていくシーンなどは、愛の怖さを痛感させられる。

「本当ですよね。鏡を見て『あ、怖いな』と自分でも思いました(笑)。でも、メイクや衣装が全然違うので、入りやすかったところはあります。メイクの方が最初に合わせるときにデザインを描かれていて、資料もたくさん持っていて、こういう感じでいきたいという明確なイメージをお持ちだったんです。だから私は何もせず、変身させてもらった気がします」

そして生霊となった御息所は、正妻の葵の上が源氏の子を出産するときに現れのろい殺そうとする。最大の見せ場でもあり、グリーンバックでワイヤを使った撮影だったため、さぞや大変だったのではと思ったが、「私、割とつられる仕事は多いんですよ」と余裕の笑顔で答える。確かに、2006年に主演した日本・中国・台湾合作の「幻遊伝」では“本場”のワイヤ・アクションに挑戦し、日本でも「NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE」など経験豊富だ。

「ワイヤの技術がどんどん上がっていることを、毎回実感します。最初のころは痛かったんですけれど、今回は痛みもなく着物も全然負担にならず、つらいという印象はなかったですね」

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源氏への愛がかなわないと悟り、御息所は伊勢に下る決断をする(後に出家)。自ら身を引く形になるが、田中は「よく決断されたと思います」と肯定的にとらえる。では、御息所の源氏に対する愛はどのようなものであったと感じているのか?

「愛というものを超えてしまった気がします。源氏に執着するあまり自分自身の生活が変わってしまい、心が彼に埋め尽くされてしまったことが許せず自分の人生までも恨んでしまう。そういう人間の業の深さやマイナスの感情がどんどん膨れ上がってしまい、コントロールが利かなくなってしまう怖さ。感情って生き物なんだと、あらためて思いました」

「幻遊伝」をはじめ、2000年代の中ごろは中国を中心とした仕事が続いた時期もあった。海外で仕事をする大変さを体験したことで、今は日本に腰を据えていこうと感じている。これも成長の一端だろう。

「枠をつくらず、いろいろな所にいってお仕事をするのが本望だったんですけれど、まずは成長して技術も上げて自分自身に価値を持てるようになるために努力をしなければ何も始まらないと思いまして、今は自分のスキルアップに時間を注いでいます。海外への興味や意欲はありますが、まずは自分に与えられている、置かれている環境を生かしていこうと思っています」

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その前向きな姿勢が、ここ数年の舞台「思い出トランプ」(08)への出演やNHK「派遣のオスカル 『少女漫画』に愛をこめて」での連続ドラマ初主演といった、新たな可能性を見いだすための活動につながっているようだ。そして、「源氏物語」では製作総指揮を務めた角川歴彦氏が、ある俳優に言った「1800円の仕事をしろよ」という言葉が強く頭に残っており、映画に出演することの意義をあらためて考えている。

「確かに1人1人がお金を払って見ていただくからには、自分の与えられた役割や務めを果たさなければいけない。お客さんを楽しませることが絶対条件なんです。すごく重みのある言葉で、だからそれに見合う自分になろうと思っています」

「源氏物語 千年の謎」を皮切りに、「聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実」「麒麟の翼」と年末年始は出演作が相次いで公開され、キーとなる役どころでしっかりと自らの務めを果たしている。そして、2012年は「平清盛」で源頼朝の母・由良御前役で大河ドラマに初挑戦する。「がんばっていきまっしょい」の悦ネエも気がつけば30代と、大人の色香をまとう。隔世の感はあるが、さらなる飛躍を見守っていきたい。

インタビュー3 ~多部未華子、初の時代劇で得たかけがえのない財産(1/2)
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