「のぼう様が見せてくれた、リーダーシップの本質」のぼうの城 鈴木達哉さんの映画レビュー(感想・評価)
のぼう様が見せてくれた、リーダーシップの本質
映画『のぼうの城』は、戦国時代を舞台にしながらも、常識を覆す“異端のリーダー像”を描いた作品です。特に主人公・成田長親(通称:のぼう様)の存在が印象的でした。武芸も戦略も不得手なはずの男が、民から圧倒的な信頼を集め、自らの「弱さ」を武器にして時代に抗っていく姿に強く心を打たれました。
一見するとリーダーらしからぬのぼう様ですが、彼の持つ“人を惹きつける力”は、現代のリーダーにも通じる要素があります。私自身、起業という道を選びましたが、強さや完璧さだけでは人は動かないということを、現場で痛感しています。リーダーとは、知識やスキルの高さだけでなく、「人と向き合う誠実さ」や「自然体で人の心をつかむ力」が何より大切なのだと、この映画を通して改めて実感しました。
物語では、石田三成率いる2万の大軍を、たった500人の兵で迎え撃つという信じがたい戦いが描かれます。戦力差は歴然。しかし、のぼう様と家臣たち、そして農民までもが一丸となって戦う姿は、まさに「不可能を可能に変える力」を象徴していました。そこには、戦略や武力ではなく、「信頼と結束」が持つ大きなエネルギーがありました。
これはまさに、ベンチャー企業として、ゼロから価値を生み出していく現場とも重なります。資本も人手も限られた中で、ビジョンを掲げ、仲間を信じ、泥臭く前に進むこと。そんな私自身の歩みと、のぼう様の姿がどこか重なり合いました。
『のぼうの城』は、型破りであるがゆえに時に笑いを誘いつつも、最終的には心を大きく揺さぶる傑作です。リーダーシップとは何か、人を動かす力とはどこから生まれるのか。その本質に優しく、しかし力強く問いかけてくれる作品でした。
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