「狐か狸か、鷹か萬斉か。」のぼうの城 りりーさんの映画レビュー(感想・評価)
狐か狸か、鷹か萬斉か。
映画館へ足を運ぶか、否か、迷っていたのだけれど、結局見に行った。
作品の雰囲気がとても良かった。
まず、野村萬斉さん、この人以外にうってつけの人はいないんじゃないかと思うくらい、「のぼう様」にぴったりだった。
今までに培ってこられた狂言が、とても活きていたと思う。
姿勢が良い。
滑稽さをわかっておられる。
ご自分で考えられたという「田楽踊り」も最高。
飄々とした風情もたっぷりに、領民に溶け込み、仲良く話しているうちに、いつの間にか領民の心を掴んでいたのだ。
「のぼう様じゃ、しょうがないか」と思わせる巧みさ、というか、優しさ。
それが良い。
負けるとわかっているのに、とんでもないことを言い放つ長親に、うろたえる正木丹波守たち。
「そんなこと言うて、どうするねん!!」
「何か、策はあるんか??」
のぼう様のムチャぶりに、右往左往する家来たち。
この構図が、とてもおもしろい。
もちろん、のぼう様は、城代としての教育を、幼い頃から受けてきたことでしょう。
だからといって、いざ!となった時に、それを発揮できるかといえば、確かではない。
きっと、のぼう様自身も周りの者たちも、のぼう様が持つ器量を知らなかったのだ。
でも、のぼう様を周りが引き立てて、盛り上げていくうちに、また、家来たちが獅子奮迅の戦いをしている様子を聞くにつけ、眠れる獅子が目を覚ました。
萬斉さんの言葉をお借りすれば、カスのジョーカーではなく、最強のジョーカーだったのだ。
周りの者を惹きつける魅力を持つ人柄だったのでしょう。
いざとなりゃ、責任は自分が取る。
そんな気概を持ったのぼう様は、理想の上司かもしれない。
佐藤浩一さんの正木丹波守も、良かった。
お子様のごときお方のお守役のはずが、いつの間にか、尊敬できる城代に成長するのぼう様を見る目が良い。
石田三成役の、上地雄輔さん。
私には、上地さんは小早川のイメージがあったので、最初はしっくりこなかったけれど、見ているうちに、意外と(失礼)しっかり役をこなされているのに驚いた。
時折挟まる現代語的セリフも功を奏していた。
軽妙で場を和ませるのに、ぴったり。