「イイ“雰囲気”の映画」神様のカルテ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
イイ“雰囲気”の映画
地方病院の青年医師イチが、写真家の妻ハルや同僚や患者に支えられ、成長していく姿を描いた、ベストセラー小説の映画化。
主演に“嵐”の櫻井翔と宮崎あおい、共演者にも個性的で実力のある面々。
患者との向き合い方、避けては通れない患者の生と死、医師としての成長…。
登場人物も皆善意に溢れ、テーマも内容も温かく、涙を誘い、見た後は優しく幸せな気持ちに浸れる。
でもでもでも、何なんだろう、この終始地に足が着いていない感じは?
どのエピソードも魅力的ではあるが、美しく語られているに過ぎず、善意溢れる登場人物もファンタジーの世界の住人のよう。好感度の高い役者の顔触れがさらに拍車をかける。
ボーッとして文学的な台詞を喋る主人公イチがどうも空っぽに見えて、感情移入しづらい。夏目漱石好きの愛読家で古風な性格という人物設定なのだけれど。
24時間365日対応の現状とか地方の医療現場の実態とか重みが足りず、見る者の心にズシンとくるものが無い。
この映画は現実を描いているのではない、理想を描いているのである。医療の世界という現実味たっぷりの“リアル”を描いている以上、致命的。
“イイ雰囲気の映画”であって、“イイ映画”とは特別思わなかった。
宮崎あおいは相変わらず可愛い。
でも最近、似たような役柄が続く。櫻井翔の奥さん、堺雅人の奥さん、岡田准一の奥さん、向井理の奥さん…。「わが母の記」での自立した女性は良かったのだが。
好きな女優なので、このままタイプキャストになってほしくない。
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