「白状します・・・ひやかしのつもり、でした」神様のカルテ ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
白状します・・・ひやかしのつもり、でした
「白夜行」などの作品で知られる深川栄洋監督が、人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔、宮崎あおいを主演に迎えて描く、群像劇。
今だから、白状させていただきます。私、前世は確実に犬だったであろうと推測される顔の人気アイドル、櫻井翔を実のところ、ひやかそうという気持ちがありました。「ハチミツとクローバー」での某シーンの泣き顔が、近所の犬の空腹時の顔に酷似していた為に笑ってしまった事もあり、今回も泣いてしまうらしい櫻井氏の泣き顔・・・見たかったんです。
加えて、某カメラメーカーのCMキャラクターを任されている宮崎あおいが写真家・・やっぱり、カメラはオリ〇パスなのか?と、若干興味を惹かれて見に行きました。今だから、言いますが。
で、本作である。地域医療の抱える壁、葛藤を、強く深く紡がれる人間の絆を軸に描き出す人気ベストセラー待望の映画化。全編に渡って画面一杯に溢れ出す柔らかな空気、色合いの中で、若い医師の成長という図太い幹を彩るようなエピソードが無駄なく、絶妙なタイミングで織り交ぜられており、説教臭くなりがちな医療ドラマを無駄を削ぎ落としたユーモアで優しく包みこむ。
物語には二つのクライマックスが用意されているが、理想と現実、夢と壁、現代医学のあるべき姿と、一人の人間に開かれた未来。閉塞感のある現代にこそ輝く、人間の強い信頼と希望が満ち満ちる。描くエピソードは多岐に渡るが、それらを貫くのは「生きる」ことへの意志、勇気、喜び。
ベストセラーという大きな鳴り物をもって制作された作品だが、今を強く踏みしめて生きる私たちへの力強い応援歌として説得力ある演出をみせる作り手の技術、センスが最大限に発揮された意欲作、佳作といえるだろう。
さて・・櫻井さんに宮崎さんですが。夜のニュースキャスターを勤め、板についてきたアイドルは、難解な医療用語を前にしても胸を張って演じぬく力強さを身に付けていた。なで肩に白衣がぴったりである。柔らかさと、理性を兼ね備えた異色のアイドルの魅力を活かすという点では、本作の主人公は正にもってこいだろう。ただの犬ではなかった。泣きの演技は・・・観客の意見に委ねます。
遠くからみても分かるオリ〇パスのロゴが心憎いカメラマン、宮崎の可愛らしさ、凛々しさもさすがの貫禄。実力と味わいを兼ね備えたキャスト、スタッフの連携が見事に合致した娯楽の力。是非とも、秋の物寂しい一時にゆっくり、たっぷり味わって欲しい一本だ。