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基本的には実写ドキュメンタリーなのだが鏡の国のアリスのようなファンタジーぽくアニメーションで繋いでゆくユニークな趣向、内容はミリアム・トネロットさんの猫にまつわるエピソード、エッセーのようでもあり、痛烈な社会や文化に対するシニカルなメッセージが込められている点では人気の岩合さんの「世界ネコ歩き」とは趣を異にしたサビの効いたネコメンタリー映画でした。
鏡の中に迷い込んだ黒猫を飼い主の女性が灰色猫の案内で探す旅に出るというシチュエーション、先ずは19世紀フランスの文化サロンから始まり日本、英国、アメリカと訪ね歩く・・。
人間の役に立った猫という視点では鉄道の信号ケーブルをネズミから守るために英国の国鉄が猫を飼っていた話や日本の赤字路線の救世主となったタマ駅長、水俣病で犠牲になった何百匹もの猫たちの慰霊碑、ホームレスや老人病棟のセラピー猫などなど。
一方、容姿だけでなく飼い猫の外出、行動に興味を持ったドイツの技術者が首輪に付ける小型カメラを開発、ネット販売で大人気だそうだ、日本のトミーが作った翻訳機ミャウリンガルも引き合いに語られるが殺処分の猫たちが「助けて」と叫んでいるのは伝わらないと厳しい引用・・。
文化的には西洋で猫が本格的に絵画の主役になったのは日本の浮世絵の猫の仕草の活写がきっかけとか、猫と泊まれるホテルやお馴染みの猫カフェ人気、猫の迷惑など省みず陳腐な服やアクセサリーに凝るインスタ文化、猫に針治療などなど実によく猫ネタを拾っています。
劇中でもアニメの夏目漱石が出てきますが「吾輩は猫である」にインスパイアされたのでしょう、猫を借りて人間の身勝手さや行き過ぎたペット商売などの問題を子供たちに分かり易く伝えたかったのでしょう。
ただ、話の三分の一くらいは日本が舞台、実態ではあるが日本ではペット市場一兆円ビジネスとか、反面、2年で飼育放棄する人が多いとか、水俣病の話も併せて観ると同じ日本人として辛いものがありますね。