ツーリスト : 映画評論・批評
2011年3月1日更新
2011年3月5日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
ジョリー&デップ初共演作品にしてはもったいないベネチア観光ツアー映画
ラブサスペンスのロマンティックな出会いは、パリ・リヨン駅発~べネチア・サンタルチア駅行のユーロスターの列車で起こる。アメリカからやって来たごく普通の観光客(ジョニー・デップ)が、ボディコンシャスな衣装を身にまとったミステリアスな美女(アンジェリーナ・ジョリー)に誘惑されてしまうのだ。その後、甘美なロマンスの舞台は往年の名作でおなじみの水の都ベネチアになる。そしてその「間違えられた男」はまったくワケもわからぬまま、警察からも追われ、マフィアからも襲われ、命からがら逃げ回るハメになる。
ジョリーとデップ──当代随一のセクシースターの初共演は、ベネチア観光ツアーのような活劇である。ジョリーのセクシーな魅力もあって最後まで見られるのだが、片方のデップが彼女に対して、またフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督に対してどこか遠慮がちで、ロマンスの街が舞台だというのに、2人の恋に陶酔感がないのだ。
たしかに心地よく笑っていたいハッピーエンドな映画ではある。しかし、もしもアルフレッド・ヒッチコック監督が手がけていたならば、もっと洗練されてひねりの効いた一級サスペンスに仕上がっていたのではないか!?
スタジオ撮影にしか見えないボートチェイスからちっとも驚きのない結末まで、「もったいない」という言葉しか思い浮かばない。
(サトウムツオ)