劇場公開日 2016年10月28日

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インフェルノ : 映画評論・批評

2016年10月25日更新

2016年10月28日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

原作とは異なる展開で、映画としての価値を示すシリーズ第3弾!

古典芸術に隠された暗号を読み解き、背後にうごめく巨大な陰謀に挑む「知のインディ・ジョーンズ」ことロバート・ラングドン。人気作家ダン・ブラウンが生んだこの現代的なヒーローが、トム・ハンクスという名優の身を借りて実像となり、映画に根づいて早10年。本作はその三弾目となる期待の一本だ。

原作に敬意を払い、謎解きに重点を置いた「ダ・ヴィンチ・コード」(06)を受け、次作「天使と悪魔」(09)では一転してアクションを主体とし、緩急の調べなく物語をヒートアップさせていった同シリーズだが、今回はそんなスノッブな知性主義にも、またイッキ駆けなハリウッドアクションの様式にも片寄ることなく、芸術トリビアと身の緊まるような興奮を分量よく配合。原作とは舌触りを異にした、ロン・ハワード監督の「ラングドン教授もの」として完成を得ている。

人類の半分を一掃する死のウィルスを解き放ち、人口過剰の問題を解決しようとする生化学者ゾブリスト(ベン・フォスター)。自らの死をもって終末のカウントダウンを始めたこの人物は、ダンテの叙事詩「神曲」に描かれた地獄篇(インフェルノ)にその手口を封入する。そんなバイオテロリストの策略を防ぐため、ラングドンに人類の未来が委ねられる。地獄篇を図像化したボッティチェッリの「地獄の見取り図」や、ダンテのデスマスクの裏に記された暗号を手がかりに、フィレンツェ、ヴェネツィア、イスタンブールと舞台は世界各地へと移行していく。

デヴィッド・コープの脚本は長大にして情報量の多い原作を合理的に調理しているが、後半の展開を独自にアレンジし、映画はベストセラーとして既知されたストーリーの裏をかく。特にラングドンと行動を共にする医師シエナ(フェリシティ・ジョーンズ)の扱いは、原作を読んだ者もそうでない者も驚きをもって迎えるだろう。劇中ではダンテとベアトリーチェの悲恋をさらりと持ち出し、こうした独自展開への布石を敷いているところがなんとも憎い。

またゾブリストのキャラクターも、死人が全てを意のままに操る「犬神家の一族」(76)や「機動警察パトレイバー the Movie」(89)あたりを彷彿とさせる「実体のない敵対者」としてジワジワとラングドンを追い込む。こうした不気味さを肥大化させているあたりは、小説よりも映画版のアドバンテージが高い。

個人的に予習は奨励しない主義だが、本作に関しては原作にあたったうえで劇場へ足を運ぶと、味わいも大きく異なってくる。ぜひ試してほしい。

尾崎一男

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