劇場公開日 2010年8月14日

キャタピラーのレビュー・感想・評価

全23件中、1~20件目を表示

4.0国を挙げての 「軍神ご っこ」を痛烈に描ききった究極の反戦映画

2024年5月4日
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鑑賞方法:VOD

戦争中に大陸(満州あたり)で女性に乱暴し殺した若い日本兵の久蔵には、帰りを待つ妻のシゲ子がいた。
狂った戦場の実態。
戦争することが立派という価値観と同調圧力、命令した者も従った者達も狂っていた。
久蔵は四肢と声帯と聴力を失って帰還する。
藁葺き屋根の家に住む夫婦(久蔵とシゲ子)にとっては、長く苦しい試練の日々が始まるのであった。
終戦(昭和20年8月)までの夫婦の性事情に焦点が絞られている。

シゲ子に扮する寺島さんはノーメイクで出演、ヌードも披露する。
エンディングテーマ『死んだ女の子』(元ちとせ)が戦争を歌なのでマッチする。
低予算で僅か12日間で撮影した伝説の若松孝二監督オリジナル作品。

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Don-chan(Daisuke.Y)

3.0この作品、気持ち悪いとかあまり良い噂は聞いてなかったが個人的には大...

2024年1月24日
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この作品、気持ち悪いとかあまり良い噂は聞いてなかったが個人的には大丈夫でした。もちろん終始暗く重い雰囲気でしたが伝わるものもしっかりありました。
寺島しのぶさんの体当たりの演技と彼女にしか持ってないあの独特のオーラ、寂しげな表情の中にある艶さがこの役にとても合っていて素晴らしいと思いました。
大西信満さんも負けてなかったですよ!
喋る事が出来ない役でしたが目力と顔ほぼ半分の表情だけでも凄い迫力でした。

作品全体の評価はとても難しいですが(捉え方が難しいと言いましょうか)
このお二人の演技には満点を差し上げたいです。

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コチョ

3.0名作だけど二度と見たくない…

2024年1月18日
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送り出した夫がとんでもない状態になって返ってきた話し。
名作ではあるのですが、生々しすぎて二度と見たくありません。
名作ではあるのですが…

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みる

2.5軍神さま

2022年11月27日
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雑に思う。ラストの戦争を集めてなんでもかんでも乗っけて、元ちとせの歌に投げてしまって始末に負えない。作りのチープさは我慢できるが、原爆の話に着地するような話か?
やたらと濡れ場シーンが多いが、悪趣味に思えるほどの数である。ここまで描くのならば、もう少し変化があっても良さそうだし、性欲、特に女性を描けているように思えなかった。

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Kj

4.0【第二次世界大戦中に多大なる過ちを犯した国と、その国の命により戦地に赴いたある男への強烈すぎる因果応報を描いた映画。】

2021年9月13日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

難しい

ー 故、若松監督は今作を製作するにあたり、どの様なメッセージを伝えようと思ったのだろうか。反戦映画のようにも見えるし、その要素もあったかはと思うが、私は人間の根源的な欲求の奥深さと愚かさを描いた作品ではないかと思った。ー

◆感想
 <今作の着想の一つに、江戸川乱歩の”芋虫”がある事を知っている上で記す。>

 ・村の期待を担って戦地に赴いた黒川久蔵(大西信満:若松組の常連とは言え、良くこの役を受けたものだと思う。)は、中国に赴き、彼の地の女性に非道なる行為をするシーンが冒頭に描かれる。
 そして、その因果応報により、四肢と言葉を失い、顔にはケロイドを負った人間とは思えない姿で久蔵は村に戻る。”軍神様”という称号と、”3つの勲章”を持って・・。
ー 妻のシゲ子(寺島しのぶ)の最初の驚愕の反応。
  だが、徐々に何もできない久蔵に対し、サディスティックと言っても良い接し方に移行して行く姿を演じる、寺島しのぶさんの冷徹な目と振る舞いが怖すぎる。
  且つては、自分を虐げていた夫に対して、ジワリジワリと主導権を握って行く姿。ー

 ・シゲ子が、夫の根源的な欲求に、積極的に”ご褒美”と言いながら応える姿と、四肢を失った夫に軍服を着せ、見世物のようにリヤカーに乗せて村内を連れまわす姿。
ー 強烈すぎる、シゲ子の夫に対する復讐である。
  ”3つの勲章”を、割烹着につけて。
  そして、昭和天皇、皇后の写真と軍神の記事と、勲章のアップが度々映し出される。ー

 ・敗戦を迎え、喜ぶ知能の足りないクマ(篠原勝之)と、シゲ子たち。
 一方、久蔵は芋虫の様に這いながら、池に向かい水面に映ったケロイド状の自分の顔を見て・・。

<ラスト、敗戦一直線の旧日本帝國が壊滅していくシーンと、玉音放送。
 戦犯たちが処刑されるシーン。
 そして、流れる元ちとせの『死んだ女の子』
 この曲は、広島の原爆で亡くなった子供達に捧げた坂本龍一プロデュースの苛烈な曲である。
 この映画は反戦映画なのであろうか・・。
 嫌、違うな。
 この作品は愚かしき国と、その命に盲目的に従い、敵地の女性達に非道なる行為を行った男達に対しての、強烈すぎる因果応報を描いた映画である。
 そして、その報いを受けてしまった無辜なる女性や子供達への鎮魂歌なのである。>

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NOBU

3.0軍神という歪さ

2020年10月17日
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個人評価:3.0
とても乱暴で差別的なタイトルと感じ、若松作品としては、それを上回るメッセージ性を感じられなかった。軍神とあの姿と実際の過去との対比。人間が神として扱われる戦時下の状況。軍神という歪なモノを描いていると感じる。

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カメ

3.0無力感と絶望がすごい。未来が見えない感じが良い。

2020年8月27日
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無力感と絶望がすごい。未来が見えない感じが良い。

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卵

5.0忘れられなくなる内容の反戦映画。強烈だった。

2020年5月30日
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忘れられなくなる内容の反戦映画。強烈だった。

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collectible

5.0芋虫ごろごろ~軍神さまごろごろ~♪

2019年8月17日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 新聞の一面にもでかでかと“生ける軍神”として掲載され、村人からも軍神として崇められ、軍神の妻としてお国に奉公するのだという義務感。食べて寝て、そして性欲処理のためにシゲ子は身を削る。田んぼを耕し、織物をし、食事、下のの世話の辛い日々が続くのだ。時には大八車に軍神さまを乗せて村を歩く。召集令状がきても狂喜する人々。死んで灰になって戻ってきた家はまだまし。生きた屍を戻された人はどうすればいいんだ?

 口も聞けない、耳も聞こえない芋虫。最初は殺して自分も後を追って死のうと考えたシゲ子だったが、色んな思いがあったのだろう。せっせと世話をして、世話をすることで自分を見出そうとしたのだろうか。村人は軍神さまのためにと米や食料を分けてくれるし、外に出たら皆合掌し拝んでくれるのだ。

 若松孝二ならではの反戦映画。しかも障害を受けたことへの悲しみだけではないのだ。久蔵(大西)は中国の戦地で女性をレイプしたことへの罪悪感が次第に膨らみ、毎日のようにシゲ子の体を求めていたのに勃起しなくなってゆく。冒頭でのそのレイプシーンが強烈な芋虫映像のために忘れてしまいそうだったが、フラッシュバック効果によって、その彼の罪も思い出させる趣向だったのだ。軍神?敵国の女をレイプすることが崇められるのか?夫婦生活の性欲を表現するとともに、そんな戦争の非情さをも描くのだ。

 物語途中、戦争のドキュメントフィルムとともに皇軍が連勝し続けているというニューステロップが流れるのだが、映像は真逆の東京大空襲や米軍が沖縄上陸するというものを流す。当時の大本営による情報操作、マインドコントロールがいかにいい加減なものだったかと強烈な皮肉をもって表現しているのだ。

 もうひとつ、暗いままの映像にするのではなく、赤い着物を着た知恵遅れのおっさん(篠原勝之)を入れることで色彩面で退屈しないようにしている。これがまた面白い。

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kossy

2.5いもむしご~ろごろ

2019年8月12日
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鑑賞方法:DVD/BD

監督の若松孝二と若松プロを知っていれば、この映画が反戦映画と同時にエクスプロイテーション作品であることがわかる。どちらも本気。反戦と同時に観客の興味関心を引くように作っているという問題作。若松孝二はそういう映画ばかり撮ってきた人なのだ。グロテスクな性もまた人の営みであり、観客はそれを見たくなるのものなのだ、と突きつけてくる。

自主制作に近い予算と想像できるのでクオリティはそれなり。ただ、この企画に体当たりで臨んだ寺島しのぶの本気度が高く、鬼気迫るものとなった。
映画自体の質よりも、その製作姿勢に共感するタイプの作品でした。

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散歩男

3.5一にも二にも寺島しのぶ。

2019年6月8日
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一にも二にも寺島しのぶ。

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もーさん

3.0戦争により四肢を失い帰還した夫、周囲からは軍神様と崇められる。 し...

2018年7月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

戦争により四肢を失い帰還した夫、周囲からは軍神様と崇められる。
しかしこの夫、とんだ軍神様だ!食欲と性欲は人並み以上。まあそれしか楽しみがないのかもしれないが。
献身的に支えた妻が途中から逆にイニシアチブを取る壊れっぷりが良かった。
反戦をテーマとした映画らしいが、何か、どこか違うと思う。

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はむひろみ

3.0戦争から戻ってきた後の話。 手足無くなり、耳も聞こえず、しゃべるこ...

2017年6月30日
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鑑賞方法:映画館

戦争から戻ってきた後の話。

手足無くなり、耳も聞こえず、しゃべることもできず、三重苦とも四重苦ともなった夫が戦地から英雄となって戻って来る。戦争体験を語る方をTVで見るが、そのような五体満足な状態で戻ってこれるのはごくごく少数でしかないのだろうな。

英雄とは名ばかりで、何もできないので食事・トイレ・セックスすべてにおいて介助してあげないといけない。

お互いの葛藤が痛いほど伝わってくる。英雄とは呼ばれているものの、外に出て大衆の目にさらされるのは自分のプライドがどうしても許さないあたりと、こんな姿になった夫を見て面倒みながらもストレスや惨めさから夫本人に辛くあたってしまうあたり。そのせめぎ合いは見ているこちらが圧倒される。

キャタピラー(芋虫)のようにしか前に進めない夫。戦争でトラウマになったことから、最後は自分を責めるあまり、自死という選択肢を選ぶ。

人間の欲望は睡眠欲・食欲・性欲というが、その欲望のはけ口になってしまう妻。世間では神の域まで持ち上げられ、英雄という闇を支える辛さ。その諸悪の根源は戦争である。お国のためは、人を破滅させることでしかない。

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キッスィ

4.0エンディングの元ちとせ

2014年11月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

原作の江戸川乱歩の「芋虫」よりも
原作を丸尾末広が漫画にした「芋虫」の方に
似てるなって思いました。
エンディングの元ちとせの歌がとても怖かった。人間はやっぱり何を言っても死に方な気がしました。

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タテスジコ

3.0うーん……

2014年5月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

難しい

この映画単品でという話だと、反戦映画ですね、という感想になるだけなのだけれど、乱歩の「芋虫」がベースとなると、ちょっと辛い。原作には反戦色が無く、乱歩自身がそういう目で見られることを嫌っていたといういきさつがあります。

金銭的な問題でクレジットから「芋虫」を外したということですが、設定だけを借りて物語の本質を変えてしまうのは、もう別物だと思うので、外されていてよかったと感じてしまいます。

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ひろ

4.0怒れる夫婦

2013年10月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

沢山の想いが込み上げました。戦争はただ悲しい出来事ではなかった。そこから生まれる憎悪ははかり知れません。
静かな怒りが画面から訴えられてくるようでした。大事な作品だと思います。

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TKN

4.0♪軍神様ご〜ろごろ

2012年7月6日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

知的

寺島しのぶ演じるシゲ子の夫・久蔵は、戦争で両腕両足を失い、顔面に火傷を負い、耳も口も不自由な体で還って来る。お国に奉仕し、村の者から“軍神様”と崇められる。
シゲ子は軍神様の妻の義務として、懸命に世話をする。

しかし、それは虚像。

不自由な体になりながらも、久蔵は食欲と性欲を貪り続ける。
やがてシゲ子は苛立ちを久蔵にぶつけ始める。
軍神様としての重圧、兵役中に犯した罪により、久蔵ももがき苦しむ。

時に生々しく、時に激しく、寺島しのぶと大西信満が体現。
戦争の残酷さと醜さを若松孝二が怖ろしく描く。

別の作品のレビューでも書いたが、今戦争映画を作る一番の意義は反戦映画である事。
リアルな戦場シーンや英雄譚など要らない。
苦しむ庶民の姿を通して、鮮烈に反戦を訴えた。

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近大

4.0まさに怪演!

2012年1月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

興奮

知的

江戸川乱歩の芋虫をベースに描かれた作品。軍神として讃えられる一方、親族から見放されてしまう。食欲、性欲、名誉欲しかない夫を支え尽くすシゲ子には脱帽の演技です。見終わった後からジワリと考えさせられる作品。

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のーまん

4.0衣食住足りて礼節を知る・貧すれば鈍す・

2011年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

怖い

衣食住足りて礼節を知る・貧すれば鈍す・戦死の恐怖に怯え続ける極限状態の戦場の兵士は戦地で何に救いを求めるのだろうか?
人間と動物は紙一重・・・
戦争映画の大半の作品は、戦争反対と言う願いから制作されていると、戦争犯罪をテーマにする事が多い。
或いは、過去の戦争は、歴史の流れの中では、止められなかった負の遺産で、否定するものではないと言う、美談を探してきて描いている作品もある。
しかし、どちらも、どちらって言う思いで、只、哀しくて、どの戦争映画も気が滅入るのだ。
この久蔵も田舎育ちで、きっと戦争さえ無ければ、農業を生業として生涯を閉じていただろうに・・・
戦地の現実を知らない、若い田舎の純情青年が、ポンと戦地に放り込まれると、常に何時
殺されるか分からない恐怖にさらされる。
そして戦地ではきっと、日々餓えと、厳しい規律でガンジガラメ!軍隊では、DVも日常茶飯事だろうし、家族から孤立している淋しさもある、第二次世界大戦の末期は、今で数えるなら16、17歳位の少年も、戦地に送り出される。
当時は、国民全員が、軍国教育を受け洗脳状態にあったとしても、17歳や20代で、御国の為に死ねと言われても、建前では納得していても、死を目の前にすると、動物的本能で死を回避したくもなるだろう・・・
決してレイプを肯定するのでは無いが、現実は残酷で有ると言うことか・・・
必ず戦争では、犯罪が付き物である、軍人ばかりでは無い。
一般の人々も、戦地には行かず、留守の家庭を護っていた人達の中でも、DVを行う人や食糧などの強奪もあっただろうし、久蔵の弟の様に弱体者に対しては、いじめや、差別も沢山あっただろう。
引き上げ者や、沖縄では、親が子供を殺すと言う集団自決と言う事件?犯罪もある。
それら、総ての犯罪の根底にあるのが、戦争と言う巨大な魔物だ。
人間には理性的で、精神力、自制心の強い人間もいれば、弱い人間もいる。様々である。
スティーブン・ダルドリー監督の『愛を読むひと』と言う素晴らしい作品があったが、この映画では、戦後ドイツの戦争裁判で、現在の倫理観だけで戦争当時の犯罪の批判をしてはいけないと言う下りが有ったと記憶する。
その時にその人がどう言う動機で犯罪を行ったのか、その理由を明確にする事、犯罪者の意思がどのように働いていたかを検証するものだった。
例えば、ある兵士が戦地で敵兵を殺す。その行為は正当防衛か、上官命令か、それとも仲間の兵士が殺された事への復讐をしただけなのか?同じ殺人行為でも、その加害者となった兵士が戦後その自分の犯した行為について、一生涯、人生を閉じるまで忘れずに抱え込む負の遺産だから、その動機は本当に大切であるし、例え裁判や、廻りには誤魔化す事が可能であったとしても、自分自身には嘘をつく事は出来ない。だから、戦後に帰国してから、家族の元に帰還しても、苦しみ続けて、元の生活が出来なくなり、麻薬に溺れたり、ホームレスへと転落してしまうケースが多い。
私が3歳頃、御寺の縁日などお祭りの日には、手足を失った兵士が物乞いをしているのを見た記憶がある。
戦争の時代を生きた人々にとっては、その生涯を終わらせる日が来るまでは、終戦出来ないのかも知れない、いや、被爆2世3世と子孫の人々も未だ未だ戦争が終わった平和な生活とは言えないだろう。
本当に、争いの無い、平和な社会を願って止まない!
今日の日本もその犠牲の上にあるのだ。一人一人が人生を大切にして暮して行きたいものだ。
寺島しのぶの体当たり演技も必見の価値有りですね。ベルリン映画祭主演女優賞獲得の貫録が映画で味わえます。彼女の、国防婦人に成りきった、あの表情は凄かった。

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ryuu topiann

4.0ぶんどられたあたし、汚された貴方

2011年5月13日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

難しい

「実録・連合赤軍」などの作品で知られる若松孝二監督が、寺島しのぶを主演に迎えて描く、人間ドラマ。

「戦争は、いけません」教科書やら説教で口を酸っぱくして連呼されても、実感として湧いてこない言葉である。しかし、この映画一本に向き合うだけで、観客は心底、その意味を知ることが出来るかもしれない。

戦争は、ぶんどる。そして、汚すものなのだ。

戦地から四肢を根こそぎ失って帰ってきた一人の男性。彼は日本国忠誠の象徴「軍神」として持ち上げられ、崇められるようになる。男性の妻は、変わり果てた夫の姿に困惑しつつ、その世話に日常を奪い去られていく。

その戦争は、何をぶんどっていったのか。物語は雄弁に語る。妻の、戦時中にあっても日々をやりくりしていく知恵と工夫、その活力をぶんどっていった。「軍神の妻」という厄介な地位に雁字搦めになり、「シゲ子」という女性のアイデンティティをぶんどっていった。それはそのまま、「シゲ子」という人間の変わり続ける未来を根こそぎぶんどったのだ。

その戦争は、何を汚したのか。物語は雄弁に語る。男性の、食欲と性欲という本能の持つ快楽と満足感を根底から汚していった。過去に、「シゲ子という女性」を愛し、一緒になったというささやかな幸せの記憶を、汚していった。そして、戦地で女性にした過ちが、自らの生きる意味をどす黒く汚してしまったのだ。

寺島、大西両者が演じ切った二人の人間はそのまま、日本が戦争でぶんどられ、汚された本質を生々しく、明確に提示する。理屈では分かっている戦いの悲劇。だが、ここまで分かりやすい例示を持って突きつけられると、もう「分かりません、そんな昔のこと」と目を背けることが出来ない。いや、許されない。

安易な好奇心で観賞すると、その力強くも観客に歴史に向き合う勇気を強制する姿勢に、強烈な力を持って心が張り倒される危険性を孕む。

それでも、この作品が世界で高い評価を得たことは素直に賞賛したい。これまで日本が巧妙に隠し、心の奥底に溜め込んできた戦争への率直な警告と視線が、日の目を見る第一歩となったはずだから。

痛々しい、胸が詰まる、忘れてしまいたい映画である。でも、いつかはもう一度この作品と向き合いたい。戦争が日本をどう、変えたのか。踏みにじったのか。日本に生きる人間として、真っ直ぐ、考える道標となる一本だ。

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ダックス奮闘{ふんとう}