「「お国にご奉公出来ない」とは「生産性のない人間」のこと」キャタピラー La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
「お国にご奉公出来ない」とは「生産性のない人間」のこと
戦場で両手足を失くし、口もきけぬ体で帰って来た夫は、寝て食って妻と「やる」だけの生き物・イモムシ(catapillar) になってしまいました。しかし、戦時下では妻は「軍神の妻」として黙々と彼の世話をするしかありません。村人は無責任にそれを称賛します。
彼を戦争の被害者と呼ぶならば加害者は一体誰なのでしょう。敵兵なのか、自分の上官なのか、敵国なのか、日本国なのか。しかし本作は、彼こそが加害者でもあった事から目を背けようとしません。臓腑を抉られる強烈な主張と描写。これが戦争なのです。
作中の「お国にご奉公出来ない」は、そのまま現在の「生産性のない人間」に、「軍神の妻ですから」は「自助」・公助・共助に、時代におもねる村人の言葉はSNS世界にそのまま繋がっています。イモムシの時代は近未来にすぐ続いているのです。
両手足を失って戦場から送り返された男と言うと、『ジョニーは戦場へ行った』(1971)を思い出しますが、あの映画には多少なりともあった抒情性が本作には一切なく、戦争の愚劣さをグイグイ押し付けられるだけでした。キツい。
作品終盤の広島に湧き上がるキノコ雲のシーンを『オッペンハイマー』を観た日に目にするのはやっぱり辛かったなぁ。
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