「人間のさまよえる性(さが)」キャタピラー ヒトゲノムさんの映画レビュー(感想・評価)
人間のさまよえる性(さが)
ピンク映画でならした監督の作品だけあって、人間のいやらしさ汚らしさをグロテスクに描いていた。
しかし、寺島しのぶが主演していなければB級のまま終わった感は否めない。「軍神様」の頭部の造りがあまりにも雑すぎる。あれもグロテスクさを出すための、意図的な演出なのだろうか。
寺島と「軍神様」の寓話は戦時中だけのことではない。
軍神様→「天皇のため」というお題目がなくなれば、ただのいびつな見世物にすぎない。→身体障害者に対する人民の本質的な態度。(現代に持ち越されている。)
軍神様の死に方があまりにも陳腐。見世物には死に方さえ選べないというわけか。芋虫ごーろごろ♪
軍神様の妻→「力」をなくした夫をいたぶりながらも、軍神様の妻として周囲に勝ち誇る。やられたからやりかえす、どこまでも続く「許し」のない世界。暴力と暴力のせめぎあい、すなわち戦。
反戦映画らしいが、軍神様が戦争行為を行うことはない。あるのはただのレイプ殺人。
軍神様を登場させておいて、「問題」を戦時下特有のものと錯覚させておいて、言いたいことをドン!ドン!ドーン!と見せ付けた監督。
自分以外のものによって生み出された「テーゼ」を盲信し、よろこんで踊っている人間様。
太平洋戦争で行った行為は昭和天皇と帝国主義によるもので、私たちも被害者なんですとうそぶく人間様。
自身の罪を正当化したままで、アメリカの原子爆弾投下をどうして責められるのか。
太平洋戦争が終わったことを「終戦」という輩をわたしは信じない。
自分達が負けたという事実さえ受け入れられない人の、いったい何を信じろというのか。
最後の砦だったかもしれない「成長神話」が崩れ去った今、盲信したがる民族は何を信じて生きていくのだろう。