「戦争から戻ってきた後の話。 手足無くなり、耳も聞こえず、しゃべるこ...」キャタピラー キッスィさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争から戻ってきた後の話。 手足無くなり、耳も聞こえず、しゃべるこ...
戦争から戻ってきた後の話。
手足無くなり、耳も聞こえず、しゃべることもできず、三重苦とも四重苦ともなった夫が戦地から英雄となって戻って来る。戦争体験を語る方をTVで見るが、そのような五体満足な状態で戻ってこれるのはごくごく少数でしかないのだろうな。
英雄とは名ばかりで、何もできないので食事・トイレ・セックスすべてにおいて介助してあげないといけない。
お互いの葛藤が痛いほど伝わってくる。英雄とは呼ばれているものの、外に出て大衆の目にさらされるのは自分のプライドがどうしても許さないあたりと、こんな姿になった夫を見て面倒みながらもストレスや惨めさから夫本人に辛くあたってしまうあたり。そのせめぎ合いは見ているこちらが圧倒される。
キャタピラー(芋虫)のようにしか前に進めない夫。戦争でトラウマになったことから、最後は自分を責めるあまり、自死という選択肢を選ぶ。
人間の欲望は睡眠欲・食欲・性欲というが、その欲望のはけ口になってしまう妻。世間では神の域まで持ち上げられ、英雄という闇を支える辛さ。その諸悪の根源は戦争である。お国のためは、人を破滅させることでしかない。
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