「【”来世。”心に傷を負った霊能力者、臨死体験をした女性ジャーナリスト、双子の兄を亡くした少年の不思議なる邂逅を描いた作品。難しいテーマを、ヒューマンドラマにしたイーストウッド監督の手腕が冴える作品。】」ヒア アフター NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”来世。”心に傷を負った霊能力者、臨死体験をした女性ジャーナリスト、双子の兄を亡くした少年の不思議なる邂逅を描いた作品。難しいテーマを、ヒューマンドラマにしたイーストウッド監督の手腕が冴える作品。】
ー 私は、マット・デイモンが好きである。彼の出演映画はほぼ鑑賞している。だが、この映画は公開中に、”あの出来事”があり公開中止になり私も特に観ようとは思わなかった。
だが、近年、”あの出来事”を題材にした映画が少しづつ公開されてきて、私も耐性が付いたので(とはいえ、冒頭のシーンは怖かった。)鑑賞した。-
■東南アジアのバカンス先で津波に襲われ、臨死体験をした仏人ジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、その時海中で見た不思議な光景が忘れられずにいた。
米に住む霊能力者のジョージ(マット・デイモン)は、死者と対話ができる自身の能力を、余り使わないようにしていた。彼は相手の手を握るとその人が関わる死者の事が分かってしまうのである。又、双子の兄ジェイソンを交通事故で失ったマーカスは、アルコール中毒の母から離され、里子として生活していた。
だが、3人は不思議な縁で、ロンドンで邂逅する。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作の様なテーマの映画を、どこかファンタジックで、メランコリックで、猥雑感のない作品に仕上げたクリント・イーストウッド監督の手腕は、流石である。
・マリーも、ジョージも、マーカスも皆善人で、彼らを取り巻く人たちも、一癖ある人は居るが(マーカスの兄など)、皆善人である。
・今作はそんな中、マリー、ジョージ、マーカスの物語が、キチンと描かれており,それが最後にキチンと収束する作品構成が巧いと思う。
<主要登場人物>
1.マリー:恋人の同僚と東南アジアのバカンス先(多分、バリ島で有ろう。)で津波に呑み込まれたマリー。フランスに戻るも、その時の不思議な経験が忘れられず、”あの世”を信じ始めるが、周りはそんな彼女の事を心配し、休養を勧める。が、それが逆に彼女の心を傷つける。だが、彼女は約束していたド・ゴールの本ではなく、「ヒア アフター」を書き上げ、上梓するのである。
2.マーカス:アルコール中毒の母と双子の兄ジェイソンと暮らしていたが、兄を交通事故で失い、里子として生活を送る。だが、兄ともう一度話したいと思っている。
3.ジョージ:幼い時の大病が原因で、臨死体験をし、その後霊能力を得る。だが、そのために傷つき、能力を封印する孤独な男。だが、料理教室に通うようになり、ペアになったメラニー(ブライス・ダラス・ハワード)と、良い仲になるが彼女の手を握ったために、彼女の哀しい過去を知り、別れる。
<今作では、この、住む国も、言葉も性も違う三人が、不思議なカルマにより、邂逅し、お互いに再生していくのである。
テーマが、”来世”でありながら、ヒューマンストーリーとして仕上げた、クリント・イーストウッド監督の手腕に唸らされる作品である。>