「【”人間とは、欲望を抑圧する程、秘めたる悪性が顔を出す生き者なのである。”今作は、ミヒャエル・ハネケ節全開の、悪意と嫉妬、無関心と暴力をモノクロームの映像で静なトーンで描いた恐ろしき作品である。】」白いリボン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人間とは、欲望を抑圧する程、秘めたる悪性が顔を出す生き者なのである。”今作は、ミヒャエル・ハネケ節全開の、悪意と嫉妬、無関心と暴力をモノクロームの映像で静なトーンで描いた恐ろしき作品である。】
ー ミヒャエル・ハネケ監督作品は数作観ているが、人間の暗部を抉り取った作品が多く、観ている時には不穏感と不愉快な気持ちになるが、何故か見続けてしまう。
それは、人間が持っている悪意を、”貴方にもあるでしょう?”とでも言いたげなミヒャエル・ハネケ節が実に巧妙だからである。
唯一、安らかな気持ちで観れるのは「愛、アムール」であるが、あの作品も深読みすると、怖い作品なのかもしれない。ー
■第1次世界大戦前夜、北ドイツのある小さな村。
ある日、帰宅途中のドクターが誰かが仕掛けた針金のために落馬し大けがを負う。その後も奇妙な事故が次々と起き、村には不穏な空気が満ちていった。誰の仕業なのかと不信感を募らせるうち、村人たちは、村の中に蔓延していく悪意と嫉妬、無関心と暴力を観る事になる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・この作品のタイトルである「白いリボン」は、村の牧師が息子マルティンが年頃になった時に、その顔つきの変化を見て、夜に自慰を行わない様に寝る時に彼の手足を縛るモノとして登場する。
更に、牧師は娘クララのポニーテールの髪にも同様の「白いリボン」を結び付けている。
・だが、子供達は男爵が支配する小さな村の中で暮らす大人たちの欺瞞に満ちた姿を見ているのである。
表面的には、男爵に媚びへつらいながらも陰では、憎悪している実態を。
・故に、クララは父である牧師に教室での振る舞いを激しく罵倒された時に、昏倒しながらも、その後父が大切にしているインコを鋏で殺害し、十字にした死骸を父の机の上に置くのである。
・村では地位の或る医師が、家政婦に密かに行っていた事も子供達は全て知っていたのである。表面的には地位が有りながら、一皮むけば愚かしき性向を持つ男であったことを。
<村の大人たちは、次々に起こる不可思議な出来事に、猜疑心と悪意と嫉妬、無関心と暴力を示し、無垢であるはずの子供達も大人たちの真の姿を見て、隠された人間としての悪意を示して行くのである。
この作品は、無垢なる子供が、大人になるにつれ猜疑心と悪意と嫉妬、無関心と暴力を振るう生き物に変貌していくというメッセージを、ラストで”第一次世界大戦”に突入していく時代だった事を示したる見事なる作品なのである。>