劇場公開日 2010年12月4日

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白いリボン : 映画評論・批評

2010年11月22日更新

2010年12月4日より銀座テアトルシネマほかにてロードショー

戦争と国益に猛進する現実と、不透明な地球の未来像を映し出した野心作

のどかな農村で不思議な事件が相次ぐ。それらは推理をうながすといった類いのものではない。何しろ、目的が不明なのだ。例えば、村人の診療を一手に引き受けるドクターが、木と木の間に張られた針金に引っかかって落馬したり、大地主である男爵家の納屋の床が抜けて小作人の妻が亡くなったり、牧師の机の上で小鳥が磔にされていたり。しかし、物事は反復されると何らかの意味を持ち始めるもの。時間の経緯と共に、映画はやがて明確なメッセージを観客に突きつけて来る。

舞台が第1次大戦前夜の北ドイツの村であることは言うまでもない。権力を持ったコミュニティのドンたちが露骨な悪意の標的にされる。彼らが表向きは秩序や倫理を説きながら、その実、利己的で排他的な己自身の醜い有り様に気づきもしない愚かさと、そんな大人たちを冷酷に見つめる子供たちとの因果関係に思い当たった時、これがヨーロッパ映画としては画期的な“ナチス台頭前夜”にフォーカスした野心作であることが解る。権力者の精神的崩壊と宗教の不寛容は、次世代の行く末にいかに深刻な影を落とすか? 歴史が打ち鳴らすその薄ら寒い警鐘は、戦争と国益に猛進するたった今の現実と、不透明な地球の未来像をも映し出して異様な説得力がある。

ピアニスト」「隠された記憶」と同じく、この最新作でもミヒャエル・ハネケは美しくあるべき者(=女性)、また、無垢であるはずの者(=子供)という解釈に異論を唱えている。それが正解であることは、彼の映画が我々にもたらす密やかな快感が何より物語っていると思う。

清藤秀人

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