「ありふれた教室」日本版予告編&本ビジュアル&場面写真、一挙披露 白石和彌、瀬々敬久ら絶賛コメントも

2024年4月2日 17:00


学校の“不都合な真実”を抉り出す
学校の“不都合な真実”を抉り出す

第96回アカデミー国際長編映画賞にノミネートされた「ありふれた教室」の日本版予告編、本ビジュアル、場面写真が一挙披露された。あわせて、白石和彌監督、瀬々敬久監督ら著名人から絶賛コメントが寄せられた。

本作は、ドイツの新鋭イルケル・チャタク監督の長編4作目。現代の中学校を舞台に、ある新任女性教師の視点で物語が進行し、校内で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと激しくうねり、わずか数日間で学校の秩序が崩壊する異常な事態へと突き進んでいく。

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若手教師カーラは、新たに赴任した中学校で1年生のクラスを受け持つ。ある日、校内で相次ぐ盗難事件の犯人として教え子が疑われる。校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自で犯人探しを開始。カーラが職員室に仕掛けた隠し撮りカメラの動画には、ある人物が盗みを働く瞬間が記録されていた。やがて盗難事件をめぐるカーラや学校側の対応が噂となり、保護者の猛烈な批判、生徒の反乱、同僚教師との対立を招く。

チャタク監督は、教育分野で働くさまざまな人々へリサーチを行い、自らの子ども時代の実体験も織り交ぜ、オリジナル脚本を執筆。学校という場所を“現代社会の縮図”に見立て、正義や真実の曖昧さをサスペンスフルに描いた。

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主演のレオニー・ベネシュは、「白いリボン」(ミヒャエル・ハネケ監督)で注目され、「THE SWARM ザ・スウォーム」「80日間世界一周」などのテレビシリーズでも活躍。次々と重大な決断を迫られるカーラの葛藤を生々しく体現し、ドイツ映画賞主演女優賞を受賞し、ヨーロッパ映画賞女優賞にもノミネートされた。

予告編では、ただならぬ緊張感を漂わせながらカーラが窮地に追い込まれていく様子が描かれていく。生徒を守るために隠し撮り用のカメラを設置したカーラだが、それがきっかけで生徒の反乱や同僚教師との対立が起こり、保護者からも猛烈な批判を浴びることに。そして場面写真には、教室で叫ぶカーラの姿や中指を立てる生徒ら、張り詰めた空気の中、登場人物たちの様々な姿が切り取られている。

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本作を鑑賞した映画監督の白石和彌は「感じたことのない凄まじい余韻。今年の間違いなく必見の一作だ」と絶賛。ドイツ文学翻訳家の池田香代子氏も「とほうに暮れて見回すと、あの教室と相似の社会が私たちを取り巻いている。こんなミステリーがあったのか!」とコメントを寄せた。

ありふれた教室」は5月17日から、東京の新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開。著名人のコメント全文は以下の通り。


※順不同・敬称略

白石和彌(映画監督)】

恐ろしい。目まぐるしく起こる出来事の連鎖に翻弄され、見ているこちらもすり減っていく。教育現場での地獄めぐりを体感させられ、絶対に教師にはなりたくないと誓いたくなる。しかし、本当に恐ろしいのはラスト数分、いや数秒で全てがひっくり返る瞬間だ。感じたことのない凄まじい余韻。今年の間違いなく必見の一作だ。


小島秀夫(ゲームクリエイター)】

こんなにも息苦しくなる映画はない。最後の最後まで、これでもかと胸や胃を締めつけられ、ラストでは絶望の淵に落とされる。些細な事から、ありふれた学校が憎しみの場所へ、制御の効かない無法地帯へと変貌する。この何処にでもある“教室の崩壊”の経緯を目撃してしまうと、「現実世界からもはや紛争や争いは未来永劫になくならないのでは?」と結論づけざるをえない。鑑賞後の後味の悪さは、“ありふれた映画”のものではない。ご注意を。


森達也(映画監督/作家)】

あまりにも凝縮された99分。最後まで目を離せない。音楽の使いかた、言葉の一つひとつ、教室と職員室を行き来するカメラワーク、子供たちのちょっとした仕草、映画を構成するすべての要素が、ありえないほどの完成度に達している。


池田香代子(ドイツ文学翻訳家)】

些細なミスの重なりが、収拾不能の事態を招く。いったいどうすればよかったのか。とほうに暮れて見回すと、あの教室と相似の社会が私たちを取り巻いている。こんなミステリーがあったのか!


瀬々敬久(映画監督)】

学校だけで民族差別や貧困格差と監視社会の危機を描き切っている。冷徹に見守りながら至るラストの衝撃。決して問題は解決してない。だが、少しだけ前へ進んだのだろうか。自分たち世界の向き合い方が示された気がした。

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