プリースト : 映画評論・批評
2011年9月13日更新
2011年9月23日より新宿バルト9ほかにてロードショー
方向性が真逆のデザインを掛け合わせ、独自の世界を構築
とことん、VFX系ビジュアルの人なのだ、このスコット・スチュワートという監督は。さりげなさとは無縁。派手で強烈がよし。ILMとオーファネージのVFXマンを経て、SF映画2作「レギオン」「プリースト」を撮る。この経歴だけでもビジュアル志向と分かるが、今回は方向性が真逆のデザインを掛け合わせのがミソ。修道士と香港アクション、吸血鬼と西部劇、全体主義近未来と西部開拓時代、高層都市の青と砂漠の黄。かけ離れた要素を強引に隣り合わせに置いて、独自の世界を構築してみせる。
この監督は、キャスティングすらビジュアル至上主義。監督作2作とも主演はポール・ベタニーだが、その理由を問われた監督の答は「彼はSF世界に似合うんだ、純粋にビジュアル的に」。なるほど、彼の撮るベタニーは、全身のシルエットをもっとも端整に見せる衣装で、仁王立ちポーズをキメる。そう思って見ると、今回の共演者2人、カール・アーバンとマギー・Qもプロポーションがモデル並み。画面に全身が映るアクションの構図が決まりまくる。
一方、ジャンル・ファンへの目配せも怠りなく、「チャイルド・プレイ」のブラッド・ドゥーリフ、「ツイン・ピークス」のメッチェン・エイミックが久々の登場。「トゥルー・ブラッド」の吸血鬼スティーブン・モイヤーと「トワイライト 初恋」の吸血鬼カム・ジガンデイが、どちらも吸血鬼嫌いの役なのも笑える。
この監督は自分が好きなものをよく分かっている。それがストレートに伝わってくる。
(平沢薫)