「プロモーションのミスリードなどで正当な評価がされていない作品を全力で擁護させていただきます!」デイブレイカー さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
プロモーションのミスリードなどで正当な評価がされていない作品を全力で擁護させていただきます!
生き物はそれぞれの繋がりの中でいわば助け合いながら存在している。
一つの種だけが単独で生存してくのは不可能なんです。by IUCN
蝙蝠から広まった伝染病で不死が手に入ると分かった人間は、自ら進んでヴァンパイアとなる。人類の95%がヴァンパイアとなり、支配者になっている世界です。
しかし食料となる人間が絶滅に瀕しており、深刻な血液不足になっています。
人工血液の研究を行っている『Bromley Marks Pharmaceuticals(以下BMP)』はその一方で、少なくなった人間をこっそり捕獲しては昏睡状態にし、血液を絞り取り、富裕層だけに販売している。密猟ですよ。
ヴァンパイアは不死だけれど人間並の力しか持っておらず、太陽が沈むと普通に理性的に生活しています。
人間はヴァンパイアを恐れ、ヴァンパイアはサブサイダーを恐れている。
サブサイダーは血液を長く摂取できず、また余りにお腹が空いて自分の血を飲んだりするとなる怪物らしい。
ヴァンパイアを襲う凶暴なサブサイダーの大量発生も、深刻な社会問題となっています。
冒頭「血液求む」と札を下げたホームレスが出てきますが、貧困(格差社会)もサブサイダーの増加原因の一つのようです。
BMPの社員でヴァンパイアであるエドワード(イーサン・ホーク)は、人間のレジスタンス:オードリー(クローディア・カーヴァン)や、元ヴァンパイアのコーマック(ウィレム・デフォー)と出会い、血液不足のヴァンパイアを救う名案を思いつく。
ヴァンパイアは、昼間は自由に行動できず、夜間はサブサイダーの襲撃に怯え、また、もし人間が絶滅したら、自分達も同じ運命を辿るという不安を抱えている。絶滅危惧種で逃げ回ってる人間以上に、自分達の未来を憂いでいます。
手に入れた不死が、自分達の破滅を招くとは。なんという皮肉。
ヴァンパイアが世界を征服したら、まさかの食糧難!という、今までになかった設定が面白いです。人間に戻る方法も(戻れるんだ!)、ちょっとご都合主義のようだけど斬新。
それだけではなく、人工血液の実験でヴァンパイアの頭が破裂したり、首切断、大勢のヴァンパイアに人間が噛まれる等々、ホラー映画ファンのテンションが上がるシーンも用意されている。
何より素晴らしいのは、「人間が駄目なら動物がいるじゃん?」という、この手の映画好きファンの意地悪なデジャブ感に先回りして、森に動物を探しに行くも、朝が来てヴァンパイア爆発!みたいな。
その先回り感が、分かってるなー!と嬉しくなったり、感動したり。
ヴァンパイアになりたくない娘とBMP会社社長、嫌な奴かと思いきや、実は兄のエドワードをむっちゃ思ってる弟との確執とか、人間ドラマもあり。
それだけじゃないですよ!
本作は単なるヴァンパイア映画ではありません。
冒頭に「一つの種だけが単独で生存してくのは不可能」と書きました。生き物はそれぞれの繋がりの中でいわば助け合いながら存在しているのに、人間だけが全ての動物に訪れる死を拒否して起こる、生態系の崩壊。結果的に訪れるだろう、人類滅亡。
様々な人間活動によって多数の生物が絶滅し、生態系破壊が急速に深刻化している、現代の地球のメタファーでもあるのです。
こんな側面まで見せてくれるんですよ!
ホラー好き&ホラーにうるさいホラー好き&映画に心の糧を見出したい映画好き&映画に小難しいテーマを見出したい映画好きを網羅する!色んな方向から観られる、凄く良くできたメタホラーです。
「プリデスティネーション」ではSF映画の体で絶対孤独やナルシシズムを描き、本作ではホラー映画の体で社会問題まで抉る!
スピエリッグ兄弟は映画界の村上春樹です!ってこの比喩が分かる方とは、親友になれそうです。
宜しくお願いいたします(笑)
ラスト、太陽が昇る。
ヴァンパイアから人間に戻った彼等が乗った車が、日の出に向かって走るシーンで終わります。
原題は「Daybreakers」Daybreak=日の出という意味です。
「真実は太陽と同じ
遮ることはできても
消え去ることはできない」
エルビス・プレスリーの名言が出てきたり、ラストの台詞「治療法がある。まだ人間に戻れるんだ。まだ遅くない」などを総合的に判断した結果、Daybreakersというのは、明治維新的な?「変革者達」と汲み取りました。
あと、どうしても気になったので書くんですけど、胸キュンが止まらない映画「トワイライト」の美少年ヴァンパイアも"エドワード"という名前でした。
何かしらの意図を感じますが、これ以上長くなってもアレなのでこの辺で終了します。