17歳の肖像 : 映画評論・批評
2010年4月6日更新
2010年4月17日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー
イギリス階級社会の厳しさを感じさせる、やるせないラブストーリー
女子高生のジェニーが年上の男性デビッドと知り合って恋の苦さを知るストーリー。青春ドラマのジャンルではあるけれど、甘い香りはほとんどない。むしろ、1961年当時、戦争の後遺症をひきずって質素な生活に甘んじていたイギリスの社会状況がよく見える人間ドラマになっている。キャラクター描写のキーワードがEducation、つまり、どんな教育環境で育ったかにおかれていて、それが物語に奥行きを与えているのだ。
学歴がないために苦労してきた父親の期待を担ってオックスフォードに進学しようとしている早熟で知性豊かなジェニー。だがデビッド自身は、ジェニーが思ったようなステータスの持ち主ではないことが次第に分かってくる。上流階級の金持ちダニーと友だちづき合いしているが、デビッドには何のバックボーンもないし、大学も出ていないはずだ。特に説明はしないのだが、ダニーとの間にある微妙な空気でそれとなく彼らの身分差を感じさせる、実に成熟した演出だ。ここがこのラブストーリーのポイントでもある。
2人の交際は性急な婚約に進むのだが、それはジェニーを失うのではとデビッドが恐れたからだ。彼女があまりに美しく変身した結果、学歴もステータスもない自分を通過して、やがて他の男のものになるのでは。そんな不安が彼に無鉄砲なプロポーズをさせるのがやるせない。新人キャリー・マリガンが文句なしに魅力的で、彼女に目を奪われてしまいがちだが、イギリス階級社会の厳しさが、このラブストーリーの背景にはあるのだ。
(森山京子)