トランスフォーマー ダークサイド・ムーン : 映画評論・批評
2011年7月19日更新
2011年7月29日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
まさに戦場のカオスを体験できる驚異の3D映像
マイケル・ベイ監督が、実写3Dを徹底的に研究し、その凄さと可能性を示した快作だ。
シリーズ前2作は、正義のオートボットと悪のディセプティコンという機械生命体同士の対決が軸だった。だが、完結編の今回は、ディセプティコンが圧倒的な兵力で地球侵略を開始し、主人公サム(シャイア・ラブーフ)や特殊部隊のゲリラ戦が鍵となって多種多彩なバトルが連続する。
しかも、地上のサムの視線で迫るロボット軍団を見上げたり、高層ビルの谷間を滑空する兵士たちの目線で四方八方から襲い掛かる攻撃をとらえたり、奥行きのある3D効果が存分に活かされる構図の映像を巧みに挿入。ロボットの巨大さや、大都市が壊滅していく激戦の臨場感に息を呑む。また、途中から折れていく高層ビルからサムたちが脱出するシーンは顕著だが、映像の隅々まで何かが動いており、まさに戦場のカオスを体験できる。
それにもかかわらず、映像は3Dであることを忘れてしまうほど自然で、目は疲れない。
一方物語は、アポロ計画の陰謀説を絡めた展開がおもしろい。オートボットを理解しようとしない政治家、ディセプティコンに協力する富裕層、さらにはロボットたちの心の弱さも描かれ、地球を守ろうとするサムやオプティマスたちの思いに素直に感情移入できる。
また、後半はシリアスだが、前半ではサムの悩みや両親の余計な助け、シモンズ(ジョン・タトゥーロ)の活躍など、シリーズの約束事で気持ちよく笑わせてくれる。やや強引な展開で突っ込みどころも少なくないが、あまり気にせず、驚異の映像で描かれる地球を救う熱き戦いを楽しんで欲しい。
(山口直樹)