「ブラックユーモアたっぷりに包み、人の可笑しさと哀しさを浮き彫りにさせる」乱暴と待機 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ブラックユーモアたっぷりに包み、人の可笑しさと哀しさを浮き彫りにさせる
小池栄子演じるあずさと山田孝之演じる番上の若夫婦が平屋の集合住宅に越して来る。
そこには美波演じる奈々瀬が居て、あずさとは高校時代からの因縁が。
また、奈々瀬は浅野忠信演じる山根と兄妹でもないのに兄妹として暮らしていた。
この4人の奇妙な関係を、予想不能な展開でブラックユーモアたっぷりに綴る。
登場人物4人が一癖も二癖もあり、キャスト4人が絶妙に演じる。
山根は奈々瀬に復讐する為軟禁生活を続け、奈々瀬と他の男との情事を覗く、自称“マトモ”な変態男。浅野忠信が常に低い声で大真面目に演じれば演じるほど滑稽さを誘う。
奈々瀬は挙動不審で相手の顔色を窺い、不思議キャラでか弱い女性ながら、周囲の男を魅了する。美人の美波が眼鏡&スウェット姿で不思議キャラが妙にハマっている。
あずさは昔の因縁から奈々瀬に苛々、夫の番上が奈々瀬に鼻の下を伸ばしてさらに苛々、嫉妬と怒りに狂う。小池栄子が姉御肌の役をぴったりに演じ、もはや演技派の名に恥じない。
番上は無職であずさのヒモ、奈々瀬に下心見え見えで関係を持つだらしない男。山田孝之がダメ男をリアルに演じる。
本来ならドロドロとした愛憎関係を、ブラックユーモアで包んだ事によって、登場人物の可笑しさと哀しさをより一層浮き彫りにしている。
それは、同じ本谷有希子原作の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」やコーエン兄弟の傑作「ファーゴ」もそう。
“君の為なら死ねるけど、君のせいで死にたくない”
“男の理想の女は、女にとってはクズ”
…など、辛辣ながらズバッと的を射た台詞は逆に爽快。
風変わりな作品を見たい人にオススメ。
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