悪人のレビュー・感想・評価
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必見の作品。
初めてレビューします。
今年観た邦画の中では、「告白」「孤高のメス」と並ぶ秀作。
映画は、祐一と光代の愛の逃避行が軸となっているが、その他のエピソードあってこそ。被害者側、加害者側、それぞれのドラマが胸を打つ。孤独、哀しみ、もどかしさ等は誰もが心に抱え、誰かにすがりたい空虚な愛、希薄な人間関係、衝動的な殺人はまさに「今」を反映している。簡単に割り切れない人間の善悪についても考えさせられる。
それらを体現したキャスト全員のアンサンブル演技は素晴らしく、李相日も「フラガール」とは全く違う演出を見せてくれる。久石譲の音楽も余韻が残る。
モントリオールでの受賞も納得の、必見の作品。
濃密な世界
皆さん、こんにちは(いま9月13日11:55頃です)
祐一は、無口で、ほとんど表情に出さない。でも、いったん、その感情があふれ出すと、とてつもない行動を引き起こしてしまう。
一方、光代は無口な彼にコミュニケーションしようと、いつになくしゃべる。
そして、祐一が人を殺した男と知ったとき、どうすればいいのか。離れるべきかとも一瞬迷うが、自分をこんなに求めていたひとはいなかった。
そんなふたりの逃避行。
これから先に幸せが待っているはずもない。そう、普通の人がみれば、破滅だけが口をあけて待っている、そんな状況である。
可能性が広がっていればいるほど、ひとの意識は拡散されていくけれど、時間的にも空間的にも、あとがなく、狭ければ狭いほどその世界は濃密になる。
そして、相手のことを、相手以上に愛してしまう。ラストに近くなって、祐一が捕まりそうになったとき、光代を絞め殺しそうとする。それが、唯一してあげられることだから。光代の恍惚とした表情が印象的だ。
かりそめの安息の場所が、灯台である。そこは、冷たくて強い風が吹いていて、とても寒いけれど、ぬくもりを求め合うには最高の場所だ。
夕焼けが美しい。冷たいが風が気持ちいい。どこかで見た映画のように両手を広げる。ほんの少しだけ祐一に笑みが浮かぶ。祐一が着ていた赤いフリースを、光代が着ている。言葉にはしないけれど、そんな何気ない場面が素敵だ。
この映画は、このふたりだけが主人公ではない。
殺された女子社員の父親(柄本明)や祐一の祖母(樹木希林)が、この事件とともに、どんな生き方をするのかが並行的に描かれている。
また、殺された女子社員を満島ひかりが演じているのだが、そういったサブ・ストーリーもなかなか味わい深いものがある。
ただ、そこまで想いを届かせるには、ちょっとしんどいなと思うのも事実だ。
でも、こんなこってりとした濃密な映画もめずらしいのではないか。
その李相日監督の前作は「フラガール」。3年前、日本の映画賞を総なめにした監督である。彼は同じ場面を何度も何度も撮りなおすという。OKが出て、何日か過ぎると「あのシーンが気になっているんです」と再度、撮り直すこともあったという。
ハリウッドでいうとマーティン・スコセッシのようにしつこく粘り強く、妥協がない。
(といっても完璧はありえないのだが・・・)
ひりひりするような撮影現場が、想像されるけど、だからこそモントリオール映画祭で主演女優賞を受賞したときの深津絵里のことばが納得できた。
「監督の最後まで妥協を許さない演出と、その思いに応え続けたスタッフの皆さん共演者の妻夫木さんや皆さんで戦った証。みんなで勝ち取った賞だと思ってます」
出会いそれは人生の 少しだけ残酷な賭け事
殺人者と、その家族と、彼を愛した女と、遺族の話。
殺した動機は確かにわからなくもない。
遺族の怒り、哀しみもわかる。
だけど、「出会い系の恋」に賛同できない、共感できない。
だからずっと違和感が残り続けた。
サイトで知り合って、はじめて逢う2人がなぜ惹かれ合い、愛し合ってしまうのかが理解できない、共感しにくい。
殺人者を愛してしまう女の心もテーマとしては、アリだと思うけれど、
なぜそんなに深く愛してしまうのかが全くわからない、描き切れてない、というか「出会い系の恋愛」が僕には理解できなくて、最後まで違和感が残り続けた。
「いわゆるメディアが描く典型的な」大学生役に、岡田将生を持ってきたのは良い。
上手い演技。
満島ひかりは、最近よく出てるけど、なんだか「消費」されてる感がある。こういう役が多い気がしなくもない。
妻夫木聡、深津絵里は、ブレない演技力。
だけど、なんか納得出来なかった、共感出来なかった。
世間が見る殺人者、
それをそばにいた女から見た殺人者、
出会い系での恋愛でここまで繋がるのか、
そこに納得出来ないから、違和感だった。
僕には合わなかった…
「出会いそれは人生の 少しだけ残酷な賭け事」というある唄のフレーズが頭に響いた作品だった…。
日本得意の分野かも。
人間ドラマが秀逸!
ちょっと冗長。もう少し、短く出来たはず。
2010年のモントリオール世界映画祭で、深津絵里が最優秀女優賞を授賞した作品。監督は、『フラガール』の李相日。また、美術監督を種田陽平、音楽は久石譲と錚々たるメンバーがスタッフに名を連ねています。
実は正直、見る行く予定は予定は無い作品でした。ですが、深津絵里がモントリオール国際映画祭で最優秀女優賞を授賞したということで、一転して見ることにしました。
観客の年齢層は高め。妻夫木聡が出ていると言っても、カッコ悪い妻夫木聡ですからねぇ。だから、若い観客が少ないのかと勝手に想像です。はっきり言って、パッと見た感じ妻夫木聡とは認識できなかったし。
元々、深津絵里は演技派なので、いい演技するのは当然という感じもします。今回も、自然な演技で、普通にどこにでもいそうなOLを演じていました。モントリオール世界映画祭最優秀女優賞授賞のポイントは、どこだったんでしょうね? でも、この作品の見所は、深津絵里だけではありません。やっぱり、樹木希林と柄本明と言う両ベテランの演技は必見。この二人がいることで、話がグッと引き締まります。深津絵里よりむしろ、その二人の方が凄いと思いました。
話的には、『さまよう刃』や『誰も守ってくれない』に見られるように、この所の日本映画に多い、犯罪を犯した犯人そのものというより、犯人を取り巻く人間模様や環境、犯行後の犯人家族・被害者家族を描いた作品です。『悪人』と言うタイトルですが、かなり、考えさせられるタイトルでもあります。たぶん、本当の悪人は誰?と言う意味なんでしょうね?
139分という、比較的長めの作品。途中、ちょっと冗長だと思いました。前後にあまり繋がりがなく「えっ? このシーン必要なの?」と思ってしまうシーンもありました。結果として、もう少し、絞った内容に出来たのではないかと思います。
祐一と光代の最後のシーンは、祐一が光代の事を思ってわざと・・・ですよね?
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