イヴの時間 劇場版のレビュー・感想・評価
全30件中、21~30件目を表示
来たるロボット社会に問いかける
先日見た「サカサマのパテマ」の吉浦康裕監督の名を知らしめた作品。
元はインターネット配信の6話のアニメシリーズで、それを編集した劇場版。
知人が本作を大絶賛しており、気になってなってはいたけどなかなか見る機会がなかったが、「サカサマのパテマ」と一緒にレンタルし、ようやく鑑賞。
アンドロイドが実用化された近未来。高校生のリクオは、家に仕える女性型アンドロイド“サミィ”に不可解な行動データがある事に気付き、調べると、“イヴの時間”という喫茶店に辿り着く。そこには、人間とロボットを区別しないルールがあった…。
率直な感想は…
良かった!見て良かった!
“アンドロイドが実用化された近未来”“人間とロボットが共存する世界”と言うと、「攻殻機動隊」などが思い浮かび、ちょっと小難しそうかな?とも思う。
が、あくまで個人個人に焦点を当てた作りなので、取っ付き易い。
コメディ要素も多く(結構笑える)、ハートフルな作風で後味も良い。
画の素晴らしさは言うまでもなく、独特のカメラワークも印象的。
吉浦監督の才能をまじまじと感じる。
“ロボット三原則”をベースにしつつ、アンドロイドの普及に反対する委員会、作中では“ドリ系”と呼ばれるアンドロイドに依存する人間など、リアリティある社会描写も見事。
映画の核心はズバリ、人間とロボットの関係。
22世紀のネコ型ロボットならまだしも、ロボットに感情なんてある訳ない。でも密かに悲喜こもごもを抱いていたら…? その思いを、“イヴの時間”で吐露する。
サミィは何より主人のリクオを思う。その思いを知って、リクオもロボットに対する考えが変わる。(サミィは外見が美人なので健気な思いに萌えてしまう(笑))
ある事がきっかけでロボットに対して冷めた見方のリクオの同級生マサキと、その原因であるハウスロイド“テックス”のエピソードは一番の泣かせ所。
突然の珍客の完全なロボット“カトラン”や、その他“イヴの時間”に集うロボットたち…ウェイトレスのナギが、明るく温かく見守る。(彼女にも、ロボットとのある過去が…)
このままロボットが普及し続けたら、必ずぶち当たる課題。
ロボットはただの人間の為の道具?
友達? パートナー?
映画の中で描かれている事は、そう遠い未来の事でもないかもしれない。
人間とロボットの境界
この世にロボットの概念が誕生してから一世紀近く、ロボットと人間の関係性に焦点を当てた作品はその媒体を問わず、無数に作成されてきた。
人間とロボットの関係性における問題点としてよく示されるのが、ロボットの高性能化によって人間とロボットとの境界が曖昧になる点だ。おなじアニメーション作品であれば、攻殻機動隊などは一貫してそうしたテーマを描き続けている。
しかし重要なのは、人間とロボットの境界がどれだけ曖昧になれど、同一にならない、越えられない壁が存在する。それは視覚的な要素であったり、行動的な要素であったり、能力的な要素など、作品内でまちまちだが、いずれにせよ人間とロボットとを分ける決定的な何かが存在する。両者の距離が近づくほどに、その何かは実体を持って感じられ、もどかしさや葛藤の要因となり、作品のテーマとなるのである。例えば攻殻機動隊であれば、それはゴーストの存在であり、言い換えるなら精神的な要素となるだろう。
しかし、この作品で描かれる人間とロボット(作品内ではアンドロイド)の境界はどうだろうか。イヴの時間の中では、旧型のロボットを除けば、人間とロボットの境界を私は感じる事が出来なかった。姿形も、動きも、性能も、精神的な面でも、体内こそ機械であれど、通常の関係においてはアンドロイドは人間と同じように見えた。人間と変わりのない恋愛感情までも持ち合わせているのである。それは明確な個性が無ければ不可能な事だ。
これは、これまで描かれてきた人間とロボットとの関係性の根底を覆してしまう乱暴な設定であると感じてしまう。境界があるからこそ、差があるからこそ、関係性の中でジレンマが生まれるはずなのに、それが全く無いのであれば、そこにジレンマや葛藤などは生まれなくなる。そもそもなぜロボットが人間に服従しているのかさえ疑問に思えてくる。ロボット三原則など、ロボットに明確な個性と意志が生まれればいかようにでも撤回できるはずだからだ。
こうした点において、私は終始疑問を感じずにはいられなかった。仮に頭上のリングと特徴的な会話があったとしても、ぞんざいに奴隷のように扱うことは難しい。ほとんどが人間と同じように見える以上、感情的な抑制がかかるからだ。さらにそこに精神的にも個性が存在するのであれば、ドリ系など生まれて当然である。
現実的にこのようなロボットを作るのは難しい。皮膚の状態・髪質・声・細かな動作、それら全てを個性を伴った状態で完全に違和感なく製造するのはどれほど科学が発達しようと困難なはずだ。そして仮にそうしたロボットが誕生した場合、それはもうロボットなどではなく、一つの生命体である。
このように、この映画はいくつかの点であまりに現実離れしすぎているし、加えて人間とロボットの関係性の描写もいささか乱暴なものである。終始感じられるこうした不自然さから、私はこの映画を楽しむことが出来なかった。
観て良かった^^
ネットで配信されていたとは全然知らず、TSUTAYAで見つけてなんとなーく借りたのですが大正解♪
テーマは「ロボットの心と人間」といたって普通。でも笑いあり涙ありのとても温かい映画でした。
そして映像がすごくきれいだった印象があります。「イヴの時間」の内装も写真みたい!
これぞ世界に誇る日本のアニメですね^^
アンドロイドと人間の温かな交流
アイザック・アシモフのロボット三原則をモチーフにしてアンドロイドと人間の感情の交流を描く。アンドロイドが感情をもってどうこうとなると、それこそハリウッドではド派手SFアクション映画になるものが、こういう人間ドラマとして作られる、しかも個人レベルから生まれる面白さ。
ちょっと独特なカメラワークが初見では気になるかもですが、絵のクオリティも高くて、温かい人物たちの静かだけど興味深い交流に惹きつけられる一作でした。
普段アニメを見ない人にこそ、こういうアニメもあるってのを見てほしい作品ですね。
池袋一館上映なのですが、小さな劇場とはいえ平日の朝から満席でした。
池袋一館上映なのですが、小さな劇場とはいえ平日の朝から満席でした。この作品を好きな人は多いようです。
細かい背景描写、キャラクターデザインなど最近の日本のアニメは絵のクオリティーが高いです。物語は人間とそっくりのロボット=アンドロイドが人間をサポートしてる近未来。(ロボットがすごい進歩を遂げているのに、学校や喫茶店などの街並みは今とほとんど同じ。アトムの生まれた空中都市はもっともっと先か)アトムの青騎士の巻と同様、人間とロボットの差別と共存が描かれます。人間とそっくりのロボットというと映画ターミネーターやブレードランナーのレプリカントが思い浮かびますが、それらで描かれたロボットの叛乱、人類との戦いとは異なり、イヴの時間では人間とアンドロイドたちが密かに交流する日常が展開します。主人への感情を持ちはじめたアンドロイドと、それに戸惑いながらも一緒の一時を過ごすやさしい人たち。一つ一つのエピソードも地味だけど、絵がキレイだし楽しく見られます。話は途中で終わりますが、道具として使役されるべきアンドロイドと人間が共存することを絶対許せないものたちが暗躍しはじめて…、この続きでは、前述の映画のような過酷な世界がはじまるのか?イヴの時間では派手なアクションシーンではなくて、登場人物たちの葛藤が描かれるだけだと思いますが。自分としては、人間とアンドロイドたちの日常的な交流が続くだけの物語でもありです。
テンポ
ロボット三原則を軸に話が進む点強烈な斬新さはないものの、登場人物の心情描写がとても気持ちよく描かれています。
複数の短編話をひとつにまとめた映画ということで、細かく盛り上がりがあり、集中力の低い僕でも退屈せずに観られました。
かけあいの独特のテンポも僕の好みだったので好評価をつけます。
あまりの興奮にパンフ売場へ直行!
なんだこれ?
なにこのわかりやすさ?
クライマックスなによ、これ!
速攻でパンフ売場に直行しちゃったよ!!
~~~
エンディング曲を歌っていたのが
『空の境界』のKalafinaで
テンションが更に上がったのはあったとしても
全く未見の一観客の心をここまで動かしてしまう
アニメ作品に出会ったのは初めてだと思います。
一部、
ロボット倫理委員会のやり取りの部分に
未見者にとって、わかりにくいところは
ありましたが、そんなの小さなもので、
大勢には全く、影響はありませんでした。
◇ ◇
《 家族・気持ち・感情・アンドロイド 》
舞台は未来の日本。
人間らしく振舞うアンドロイドを
自分の召使として扱う、そんな時代のお話。
話が急展開し始めるのは
主人公リクオのアンドロイド
サミィの行動ログに不審な文字列が
含まれているのを、リクオが見つけたあと。
物語の本番は、ここから始まります。
◇ ◇
以下、なるべくネタバレにならないように
関心及び感動したことを綴っていくと、、、
①アニメなのにシチュエーションムービーっぽい
作品タイトル“イヴの時間”
これはある地下にある喫茶店の名前。
この喫茶店にはルールがある。
「人間とロボットの区別をしない」
現世界では、アンドロイドは人間そっくりのため
人間との違いをわかりやすくするために、アンドロイドの
頭上にリングが見えるようになっています。人間たちは、
それをみて人間かアンドロイドなのかを見分けます。
ところがこの喫茶店。
区別をしない=アンドロイドであっても頭上にリングがありません。
そして、普段は自分の意志を口にはしない
アンドロイドたちも、いつも思っていること
悩んでいることを、ここでは素直に口に出してしまうのです。
②地上と地下のギャップ
主人の意のままに動くアンドロイド
主人などに対し感情を抱いてしまったアンドロイド
地上(現世)では無機質。
ところが裏道沿いにある、
古びたビルの扉をあけ、
階段を地下に降りていくと
地上(現世)では見られない
感情にあふれたアンドロイドがいる。
階段、そして地上と地下の差を使った
ギャップの出し方に上手いなと、唸らされました。
③感動してしまったこと
結局、このギャップが起因します。
アンドロイドには様々なタイプがいます。
例えばリクオが使うアンドロイドはハウスロイド、家事全般。
他にも、保護者のアンドロイドであったり、育児のアンドロイドもいます。
感情を持っているはずのないアンドロイドが
主人である人間に対して、感情を持っていることを知る
あるアンドロイドは主人に元気がないからと
心配をし新しい味のコーヒー豆をもらいにくる
あるアンドロイドは好奇心旺盛でどんなことでも知りたがる
理由を尋ねられると
「だってそうすれば家族のことをもっとわかると思うから」と。
人間が“イヴの時間”という不思議な喫茶店に足を踏み入れたことにより
単にロボットだとしか思っていなかったアンドロイドに感情が芽生え、しかも
それはアンドロイド自身のことではなく、お仕えする主人に対し、人間以上、
いや血の繋がっている家族以上の愛情や、優しさ、慈しみにあふれた思いに満たされているのを知る。
主人の笑顔を見たい
主人に元気になってもらいたい
あるものはヘアースタイルをチェンジし
あるものはロボット法を犯す危険を承知で
声を出してはいけないと命じられていたのに
声を出し、自分の積年の思いを人間に伝えようとする
◇ ◇
すごく単純なことなんですけど、
奇想天外さが薄くて、普通の出来事に見えちゃうんです。
普通の日常の中に起きる
ほんの少しだけレールから外れた心温まる奇蹟
それが、この作品の中には、存在したのです。
☆彡 ☆彡
終わり方を見るかぎり、
続編がありそうですね。
続編も、
是非この世界観をキープしたままでお願いします。
楽しみに期待して待っています(笑顔)
とてもとても暖かい映画。観れば観るほど発見がある!
公開前の上映会と、劇場初日舞台挨拶にて観賞。
WEB配信された6話のシリーズアニメを、編集&シーン追加し、劇場版にしたSFアニメーション作品です。
WEB配信の頃から、この作品が大好きで大好きでしょうがなく、DVDも全話揃え、2009年にオールナイトで行われた上映イベントにも行きました。
ストーリーは、ロボット三原則を基盤に置き、アンドロイドと人間の関係性を描きながら、人間社会を非常に繊細に鋭く、そして、何よりもそれらを「あたたかく」描いています。「あたたかい」という部分が肝です。未来に向かって、絶望も悲観もない。真っ直ぐで前向きな力強いメッセージが感じられる素敵な作品です。
しっかりした設定と脚本、作り込まれた映像、声優さんたちの説得力のある演技、魅力溢れるキャラクターは十人十色で、観た人は誰でもお気に入りを見つけられるんじゃないかなと思います。わたしは、そうですね〜、みんな大好きだけど、カトランが好き★
戸惑い、好奇心、羨望、友情、葛藤、、、笑いあり、涙あり、感動ありの良作です。
ここまでベタ褒めしておきながら最高点をつけることが出来ない理由が幾つかあるので、簡単にまとめておきます。
1.元がオムニバス形式全6話のシリーズアニメのため、2時間近い劇場映画でありながら、ひと続きの物語というよりは、やはり6つのエピソードものの要素が強い。特に、シリーズアニメ6話も、物語が完結したというより、ファーストシーズン終了という形になっており、劇場版追加映像により補完される部分も多分にあるものの、本来の主人公であるリクオとサミィよりも、6話目のエピソードのメインキャラであるマサキにスポットが当たりすぎてしまっており、アンバランスに感じられる
2.シリーズアニメが各話15分(最終回は20分超)の短編構成のため、極力ダイエットされた脚本になっている。その分、練り込みはスゴイので、注意して観賞しているとハッキリ説明されていない部分の設定も見えてくるのだけれど、2時間という長時間、ずっと集中して映画を見続けるのは、かなり難しい
3.1と重複するけれど、ある意味完結していない。わたしとしては、劇場版追加シーンにより、かなりの伏線が回収され、描かれなかった部分について観客が想像を膨らますことが容易なほどまでには説明がなされたと思っているので、セカンドシーズン(監督が最初に切ったコンテは12〜13話あったということです)がこの先発表されなかったとしても、『イヴの時間』はこの劇場版だけで作品として完成していると思います。でも、確かに作品として完成はしていても、物語としては終わってないのかも・・・?とも思うので、観て「え?これで終わりなの?」という感想を持つ人も少なくないかと
初日舞台挨拶の司会をされたニッポン放送の吉田アナは、この作品を「第二の"時かけ"にしよう」って言ってました。そもそもロボット三原則スタートのSF作品ですし、そこまで一般性があるとは自分は感じないのですけれど、SF大好き、ロボット三原則大好き人間としても、この『イヴの時間』のファンとしても、この作品が沢山の人に観られて、そして愛されることを願ってやみません。
つまらないって思う人もいるかもしれないけど、、、
ハマる人は絶対ハマるから!
観てみて!
初日舞台挨拶、グッズ、「ドリ系」については、「しなもん日記」2010年3月6日(土)分記事にUPしています★
全30件中、21~30件目を表示