「武士ですから。。。」最後の忠臣蔵 ちゅうみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
武士ですから。。。
どこまでも「武士ですから」という作品ではあるのですが、刀を抜いて敵を倒すために戦うという武士の生き方とは違う、罵られ足蹴にされてもただただ無言で「守り抜く」という一途な武士でした。
武士として最も恥ずべき汚名を着せられることを承知の上で、使命を全うするためだけに生き続けるストイックな彼なりの武士道は、例え不器用であっても潔く、心打たれるものがあります。
要所要所に登場し映画を暗示する人形浄瑠璃の曽根崎心中とともに、茅葺の民家の佇まい&そこへ続く竹林の道&京都の美しい情景描写etc.豊かな文化が堪能できる格調高い雰囲気も、丁寧に美しく撮られており、まるで別世界のようです。
また安田成美さんの最後の手段、最終兵器にはまさかと思いつつ、全てを悟っている彼女の想いの深さ&潔さを垣間見たようで、いきなりの異和感はあったものの、あとからグッとくるものがありました。
ラストは想像通り赤穂浪士としての誇りをもって『忠臣蔵』を踏襲するのですが、たぶん頭では解っていても心がついていきませんが、『忠臣蔵』である以上これで良かったのだというよりも、どんな時も武士であった彼に、そうさせてあげてほしかったという想いです。
役所さんが武士の顔に戻る場面&回想シーンにはたまらないものがありました。
お伽話のような魅力もあり、竹林の間から日が差し込むこの世のものとは思えない幻想的な光景とともに、
思わず背筋を伸ばしてしまう古典的美しさにも彩られた世界は、静かに心に響いてくる日本人だからこそ描ける世界なのでしょう。
『忠臣蔵』が武士として尊ばれる“死に様”を描いているとしたら、この作品では逆に“生き様”&16年の時を経て甦る忠義の絆を根底に、未来に繋がる前向きな要素が取り入れられているのが新鮮です。