「完成度の高い職人芸。」最後の忠臣蔵 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
完成度の高い職人芸。
今作の後にも年内は何本か観てるんだけど^^;
年の締めくくりに相応しく素晴らしい作品だった。
(例のサムライシネマキャンペーンもこれが最後)
…なんだろうか、この完成度の高さは。。
主役の二人+娘の見せ場はもとより、
とにかくその場面毎の風情がタダモノではない。
雪(は監督的に萌えるんでしょうが^^;)以外でも、
竹林・紅葉に彩られた四季の美しさ、
古民家の細部まで丹念に作られたセットの凄さ、
所々に挿入される人形浄瑠璃の様式と格式美、
照光の使い方(特にロウソクの灯)の的確な暗さ、
それぞれの衣装の色との相性もバッチリ決まり、
もうまるで、職人芸の世界。
この、要所要所での職人の的確な仕事ぶりが、
俳優陣にも伝わったんじゃないだろうか。更に
的確な演技の役所広司には非の打ちようがない。
彼に主演男優賞をあげたいくらいだ。
なぜこの物語がこういうタイトルなのか、は
彼の名演技で明らかになるが、それにしても…
劇場を出るまで涙がボロボロ流れて止まらない、
私も桜庭ななみ同様、孫左~孫左~(T_T)だった。
討ち入り直前に、大石内蔵助からの密命を受け
「死ぬことが許されなかった」赤穂浪士のふたり。
16年という歳月がどれほど長かったか(あるいは)
愛しかったか、辛かったか…まるで計り知れない。
しかし主君に忠義を尽す、という武士道の魂は
彼らの胸奥にしっかり根付き全く揺らがなかった。
それが故の悲しい結末が「忠臣蔵」となるのだが、
果たして本作の結末は…。
サラリと大石内蔵助を演じた片岡仁左衛門、
重要なお役目を演じた「北の国から」のあのヒト^^;、
美しすぎる安田成美、と豪華な顔ぶれに劣らない、
しっかりと筋の通ったテーマが最後まで続く。
私的に娘・可音とのケンカのやりとりなどが長いと
感じるシーンもあったが、その娘とのいきさつが
走馬燈の如く回想されるシーンでは、涙・涙・涙。。
娘を嫁がせる迄の父の気合と、
忠誠を誓い使命を全うする男。
頑固なまでに筋を通そうとする男を不器用と見るか、
潔いと見るか、扱い難いと感じるか、美しく思うか。
その全てが武士道に通じるような気がしてならない。
(可音が嫁いだのは商家。親心としてはそうなるか…)