「小説だから許せる道徳面と、映像化すると浮かび上がる面。」告白(2010) 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
小説だから許せる道徳面と、映像化すると浮かび上がる面。
湊かなえ著《告白》
昨年度本屋大賞受賞作。※1
子供の肉体には母親と同じ血液が流れている。
これは禁断の木の実だ!
構成面は巧みだし、読ませる筆力も高い。更には驚くべきクライマックスへ…確かに大賞受賞も解らないでは無い。
以前読者感想にはっきりと記したが。※2 これは小説だからこそ道徳的等の面で許せる部分が在るが、映像化すると作品本来の薄っぺらさが浮き上がる気がする…と書いた。
母親に対するマザコン的な愛情と、世間から認めて貰いたい願望。
子供の為ならどんな事でもやってしまう歪んだ愛情。
子供は全て正しいと思い込む馬鹿な母親。
これを極上のエンターテインメントに昇華した、中島哲也の演出力は並みの物では無い。
多分他の監督だったならば、観客の興味を1時間も引っ張れなかったんではないだろうか。
若者が使う“切れる”を、この作品では“パチンと弾ける”と表現している。
映画の冒頭から、この“パチン”とゆう音が、今か今かと言う位に、いつ弾け飛んでもおかしく無い位の緊張感が画面から漲っていた。
それを確認出来ただけでも、やはりこの監督はただ者では無いのは証明した。
だけど、やっぱりこの物語は底が浅い。
第一章の告白を、クラスの生徒全員が。甘んじて共有したまま時が過ぎて行くのを、前提として物語が進んで行く事自体が、やはり薄っぺらいと思う。
別に映画(そうゆう話)なんだから…と言う意見も在るでしょうが!
でも常識的に見て物語自体は、この第一章で既に破綻を起こしていると思うのだが…。
※1 鑑賞直後に書き込んだレビューなので。
※2 以前に利用していたレビューサイトに日記機能が有り、そこに読書感想等を書き込めた。
(2010年6月6日TOHOシネマズ錦糸町No.1スクリーン)